優しさ
俺はその試合内容に戦慄を覚えた。たった数発の弓矢でパーティを壊滅に追い込み、強力なパートナーモンスターノワールさえも一撃で葬り去るアズールを従えている。
「……キリノ様」
「ごめん、やっぱり怖くないと言ったらうそになる」
「当然です。あんな試合見せられたら、怖くない人なんていません。だからこそ、私がその恐怖を分かち合うべきだと思いますし、私の前では正直に弱さを見せてください」
「ユキ……」
俺はユキを強く抱き締めた。
「怖いさ。怖いに決まっている! ケントだって弱いモンスターを連れてったわけじゃない。あのヒュドラというモンスターだって、ティアマトと同等かそれ以上の強さがあるはずだ。それなのに……あいつはものの数秒でそれを倒しきった。あんなの異常だ!」
「キリノ様。私はキリノ様を守れるような強いパートナーになりたかったです。キリノ様が不安な顔を見せる度にそう思ってきました。私が弱いから、キリノ様は安心して戦えないんだって……」
「そんなことない! ユキは弱くなんかないし、おかげでここまで来られたんだ!」
「ありがとうございます。ですが、無理なさらないでください。大丈夫です。必ず私がキリノ様を勝利へ導きます。ですから、ご安心ください」
「ユキ……」
「約束します。キリノ様のご期待に最後は応えてみせますから……」
怖じ気付いた俺を責めるでもなく、それを受け止めて包み込んでくれるユキの優しさに俺は涙が出た。そして、戦う勇気が湧いてくる。
「ユキ……ありがとう。ようやく決心できたよ」
「よかったです。キリノ様の恐怖心を和らげることができて」
「ああ。もう大丈夫だ。行こう……」
俺は階段を一段ずつゆっくりと踏み締め、受け付けへと向かった。




