激戦の果てに……
何とかしてこの窮地を脱すべく、必死に考えを巡らす。
と、その時、ジャンヌダルクの姿が目に移った。彼女は白い馬に乗っている。
「ジャンヌダルク! こっちへ来い!」
「かしこまりました」
言うが早いかジャンヌダルクは俺の目の前までやってきた。
俺はその馬に乗った。これならば俺は高速で逃げ回ることができるので、竜の攻撃の的にはなりにくい。
そうなればディアナは俺を庇う必要がなくなるので、自分やユキの守りに専念することができる。
「ジャンヌダルク。この馬を走らせ続けるんだ!」
「かしこまりました」
白い馬はジャンヌダルクと俺を乗せて猛スピードで駆け出した。俺は振り落とされないように気を付けながら弓矢を構える。それはここまでの探索で手に入ったシルバーブレッド。無数に集めたそれを、竜の目へと狙いを定めて放つ。
「グアアア!」
けたたましい叫び声と共に、竜は暴れ出した。システムメッセージにはクリティカルと表示され、先程までとは桁違いのダメージを表示している。
これならば勝てる。そう確信したその時。
「キリノ様! イシスさんが!」
ユキが叫んだ。
見るとイシスが炎に焼かれ、膝から崩れ落ちていた。システムメッセージにはイシスがスカイエンプレス・ティアマトに倒されたとの情報が流れる。
「……ティアマトっていうんだな?」
「グルルルル……!」
俺の問いかけに答えたのかはわからないが、ティアマトは低い唸り声を上げた。
「よくも俺の大事な仲間を倒してくれたな!? 許さない!」
俺は再びティアマトの目へと狙いを定め、シルバーブレッドを放つ。
「グアアア!」
それが命中し、けたたましい叫び声が上がる。そして、またしてもティアマトは暴れ出した。
「気を付けろ! ディアナ!」
そう言った矢先、ディアナは剣を構えてティアマトの頭上へと瞬間移動した。そして、落下しながらその目へと剣を突き刺す。
「ギャアアアア!」
ティアマトは悲鳴を上げながら炎を吐いた。それはディアナに直撃し、さらに鋭い爪が彼女を襲う。
地へと落下したディアナはそのまま消え去り、ディアナが倒されたというシステムメッセージが流れた。
「そんな……ディアナさんまで!」
「ユキ! 気を付けろ!」
そう叫ぶのと同時に、ユキへと振りかざされたティアマトの大きな爪が視界に映る。
「ユキー!」
俺が叫んだ瞬間、視界が猛スピードで流れた。そして、次の瞬間、目の前でジャンヌダルクが爪の一撃を受けた。
ユキを守るため、その身を犠牲にして駆け寄ったのか。
「……主たちを守れとのご命令、確かに守りきりました」
「……そんな!」
ジャンヌダルクはそう言い残し、霧のように消え去った。
「ジャンヌダルクー!」
俺はたまらず彼女の名を叫んだが、当然何も起ころうはずがない。
「よくも俺の仲間たちを!」
込み上げる怒りをシルバーブレッドに宿し、その目に放った。再びティアマトは悲鳴を上げて苦しみ、暴れ出す。
「ユキ、お前だけは絶対に守り抜く!」
「いいえ、キリノ様。勝つことを一番にお考えください!」
「ダメだ! 俺はユキが倒れるところだけは見たくないんだ!」
「キリノ様……」
「ユキは使い捨ての道具なんかじゃない! 俺の大事なパートナーだ! だから、絶対に死なせない!」
全神経がこの一戦へと集中するのを感じつつ、俺は必死に弓矢の照準を合わせ続けた。
そして、ティアマトが攻撃してきた時はイージスでユキを守る。その隙を突いてユキはナイフでティアマトの手を突き刺す。
そうした攻防を何度か繰り広げたその時。
「キリノ様、ありがとうございます。私のことをそこまで思ってくれて……」
「当たり前だ! ユキは絶対に守る!」
「キリノ様、一緒に……」
そう言ってユキは俺の構える弓矢へと手を差し伸べた。
「ユキ……」
「一緒なら、勝てます。キリノ様と私なら……」
不思議な程に底力が湧いてくる。今ならどんな困難でも打ち破れそうな、そんな気がしてくる。
「……ああ、そうだな」
俺はユキと心を一つにし、シルバーブレッドを放った。それはティアマトの目を射抜き、爆発を起こした。
「ギャアアアア!」
けたたましい悲鳴と共にティアマトは地へと落ち、大きな揺れが生じた。そして、その姿は霧のように消え去り、スカイエンプレス・ティアマトを倒したというシステムメッセージが流れる。
「ユキ……俺たちの勝ちだ!」
「お見事です、キリノ様!」
俺はユキと抱き合い、喜びを分かち合った。
そして、先程ティアマトがいた位置へと白いクイーンの駒が浮かび上がったので、それを手に取る。
「クイーンの駒。チェスにおける最強の駒だ」
早速それを使用し、ティアマトを召喚した。
あれ程暴れ回っていたのがうそのように大人しくなっている。
「これでキリノ様も完全に追い付きましたね!」
「そうだといいんだが……」
「ひとまずこのダンジョンは制覇です。戻りましょう」
「ああ」
魔法陣へと戻ろうとしたその時、空からゆっくりと淡い光を帯びた剣が降ってきた。
それを手に取り詳細を開くと、覇王の剣と表示された。
効果を確認すると、振るだけで炎や氷、それに雷を飛ばすことができるようだ。その上通常攻撃の範囲が前方の一歩先プラス周囲と恐ろしく広い。なお、攻撃は全てクリティカルとなるようだ。
「最強の剣か……。当然カミヤも手にしていることだろうな」
最終決戦への不安も残る中、俺は帰還用の魔法陣へと乗った。




