凶悪なモンスター
それから俺は地下三階の探索を終え、次のフロアへと向かった。
再びユキたちは別々の場所へと移動させられたらしく、俺の周囲には誰の姿も見えない。
と、その時。不意に俺の視界が霞んだ。何事かともう一度周囲を確認していると、突然モンスターの群れが現れた。
予め手に持って準備していたスリープの魔法書を開き、応戦する。幸いにもモンスターの群れは全員眠ってくれた。
どうにか対応することができたが、何か腑に落ちない。なぜいきなりモンスターが複数現れたのか? 能力でワープして来たにしては種類もバラバラだ。それに、同時に出現したという点も気になる。
何やら考えれば考える程ドツボにはまってゆく感覚があるので、俺は意識して固定観念を捨て去り、現象面に着目した。
何か、先程の出来事には見覚えがある気がする。複数のモンスターが現れる光景……。
思い出した! このゲームではサマナー戦で体験していたあの能力。つまり、これは何者かが召喚した結果だ。
となれば答えは一つ……。
目薬をリュックから取り出し使用した途端、白みを帯びた半透明のモンスターの姿が浮かび上がった。
「ユキ、気を付けろ。このフロアには見えない敵がいる」
「ええ!? りょ、了解です!」
眠っているモンスターを起こさないようなるべく小声で伝えつつ、弓矢を構えた。そして、その半透明の幽霊へと放つ。
その一撃で幽霊は倒れ、レイスを倒したというメッセージが頭に流れた。おそらくピラミッドのダンジョンで戦ったゴーストの上位種だろう。先程不意に目が霞んだのも、きっとあいつがスリープをかけたせいだ。
「ユキ。いざという時のためにいつでもワープ薬を使えるように準備しておくんだ」
「はい、わかりました」
いきなりスリープや召喚を使われても対応できるようユキへと注意を促し、俺はレイスが呼び寄せたモンスターたちを一体ずつ弓矢で処理していった。
他のモンスターは、緑色のヘビの姿をしたニーズホッグや赤い鳥の姿をしたフレスベルグ、それから真っ黒なコウモリの姿のヴァンパイアの三種だ。
いずれも一撃で仕留めることが不可能だったため、手痛い反撃を受けた。
まず、フレスベルグから戦ったのだが、矢が当たるなり飛び起き炎を吐いてきた。慌てて矢を連射し先に倒すことができたが、三回程炎を浴びせられたせいで大ダメージを受けてしまった。
回復薬を使用し、今度はヴァンパイアへと狙いを定めたのだが、今度は飛び起きるなり猛スピードでこちらへと迫ってきた。俺は必死に妖刀ムサシで対抗したのだが、素早く動き回る上にせっかく与えたダメージも俺から体力を吸い取ることで回復されてしまう。そのせいで倒すまでに時間がかかってしまった。
そして最後にニーズホッグへと矢を放つと、そいつは俺の方を向き目を赤く光らせた。途端に俺は体が動かせなくなり、ニーズホッグは恐ろしいスピードでこちらまできた。幸い、他にモンスターはいなかったため、石化が解けてすぐに応戦することによって被害を抑えられた。
そうしてモンスターを倒しきると、レベルが上がった。もらえる経験値といいこの苦戦っぷりといい、どう考えても今の俺たちは適正レベルじゃない。
一刻も早く合流すべく、俺は弓矢を構えつつフロア中を駆け抜けた。
レイスを見かけたら即座に仕留め、複数いたら魔法書や薬瓶も惜しみなく使ってゆく。
フレスベルグはどうにか直線上に立たないようにしながら誘導し、集団になったところでまとめてサンダーの魔法書で倒した。
ニーズホッグは探索中に手に入れた封印の薬を使用し、能力を封じ込めることにより対抗した。もっとも、それでも素の戦闘力が高いため苦戦は強いられたが……。
そして、ヴァンパイアには仕方なくそのまま応戦した。
サンダーで一括して倒すにはおびき寄せる必要があるが、動きが速いのでまず無理だ。
スリープで眠らせながら集団になったところでサンダーを使用することも考えたが、やはり動きが速いため一匹一匹に対してスリープを使用しないと逃げ切れない。
それでは本末転倒だ。まとめて倒す目的はアイテムを節約するためなのに、スリープを浪費して作戦を無理やり完成させても意味がない。
そうした事情で仕方なく接近戦を挑むこととなり、徐々に追い込まれてきた。
何とかならないかと考えている時、ふとあるパラメータが目に入った。満腹度だ。
そういえば食べ物は満腹度を満たすだけでなく、様々な効果があったはずだ。
早速俺は串焼きを手に取る。これを食べれば一定時間攻撃力が上がるようだ。
丁度前方にヴァンパイアの姿が見えたので、俺はそれを頬張った。途端に力が湧いてきて、目の前に飛んできたそいつを切り払ったところ、なんと一撃で倒すことができた。
今がチャンスと見た俺は全力でフロアを駆け抜けた。目薬も使用済みなので罠にかかる心配もない。
そうして、ついに俺はこのフロアでも全員と合流することができた。




