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忠実という名の弊害

 次へ移ろうと通路を進んでいると、その先の部屋の様子がおかしいことに気付いた。やたらと騒がしいので顔だけを出して覗いてみると、そこにあったのは大勢のモンスターに追われるイシスの姿。


「何やってる!? 早くスリープを使え!」


 イシスは俺の指示へと即座に反応し、目を閉じて呟きだす。途端に部屋中のモンスターが一斉に動きを止め、何とか事なきを得た。


「わらわが神よ、ご命令を」


 こちらへやってきたイシスは無表情でそう告げる。俺は頭が痛くなりそうなのをこらえ、イシスはデータとしての存在なのだから仕方ないと割り切った。

 カミヤのような有能なプレイヤーにとっては、命令されたこと以外行わない味方の方が助かるのかもしれない。彼にとっては計算通りに進めてゆくことの方が重要なのかもしれない。

 だが、それはこうした不測の事態まで全て予め見通せる者にとってだけだ。

 少なくとも俺はそうじゃない。だからこそ、臨機応変に立ち回ってもらわないと困るわけだが、イシスとディアナはそれが不可能らしい。

 そう考えると、ユキの存在がどれ程ありがたいのかを改めて痛感する。


「ご命令を」

「イシスにはこの部屋に残ってもらう。モンスターが起きたら再び動きを封じといてくれ」

「承った」


 この部屋の探索は後回しにしよう。万が一スリープが間に合わなかった時に、弓矢などによって一撃で倒されてしまう恐れがあるからだ。

 今来た道を引き返し、別なルートを探索しに向かう。すると、着いた先で今度はディアナが戦っていた。

 俺が言い渡してある作戦がイシスに対するそれよりも単純な作業であるおかげか、順調に成果を上げているようだ。


「ディアナ、俺の近くにいる敵から順番に倒してくれ」

「承知!」


 ディアナにボディーガードを任せ、俺はアイテムを回収すべく部屋へと入る。

 急いでそれを拾ってゆくと、なかなかに有用なアイテムが揃っていた。そのフロアにいる間は罠を見破ることのできる目薬や、いざとなった時に部屋にいる味方全員を回復できるヒールの魔法書。他にもスリープやサンダー、それからワープ薬とこのダンジョンを戦い抜くためのアイテムが潤沢じゅんたくに集まった。

 この部屋のアイテムを全て回収する頃にはディアナも敵を倒しきっており、俺たちのレベルは12に到達していた。

 そのままディアナを連れてイシスのいた場所まで戻り、モンスターの大群も殲滅せんめつし終える。

 その結果、瞬く間にレベルは上がってゆき、20まで届いた。


「ユキ、そっちは大丈夫か?」

「はい。こちらにはモンスターが全く現れません」


 これ程までにモンスターが多いのでユキの部屋にも向かうのではないかと心配したが、どうやら敵が密集していたのはこちらだけのようだ。

 その理由は、おそらく……。


「イシス。お前が通った部屋はどんな状況だった?」

「最初の部屋からこの部屋まで一本道しかなかったので、ご命令通り合流しにここまで参じた。途中の部屋で敵の大群と会い、ご命令通り一番遠くの敵と位置を入れ替えたのだ」


 やはり思った通り。イシスが通ったその途中の部屋とは、チェス盤の部屋のことだ。敵の巣窟そうくつと化しているその部屋に一歩踏み入れた途端、一斉に襲われることとなる。

 だが、チェンジを使うだけの空間の余白がその部屋にあったのだろう。それだけが救いか。


「ディアナ、イシス。これからユキのいるところまで向かおうと思う。お前たちは俺をサポートしてくれ」


 そう言うと、二人は首を傾げた。おそらく、サポートという曖昧あいまいな表現を理解することができないのだろう。

 思わず溜め息が出てしまった。


「ディアナは率先して敵を倒すこと。イシスは敵の動きを封じてくれ」

「承知」

「承った」


 指示を出し終え、俺はユキを探しにフロア中を見て回った。ここまでに集めたアイテムと上がったレベルを頼りに駆け回っていると、ようやく目的の部屋へと辿り着いた。そこは一番奥の部屋だった。


「ユキ、お待たせ」

「キリノ様、ご無事で何よりです」


 一人で心細かったのはユキの方であろうはずなのに、第一に俺の心配をしてくれた。


「それじゃ、次のフロアに向かおうと思う。けど、その前に……」


 俺はユキへとチェンジの魔法書を渡した。

 ダンジョンに入る前に渡しておいたスリープの魔法書とワープ薬を合わせると、三つのアイテムを持たせたことになる。


「次のフロアに移動した時もはぐれてしまうかもしれない。いざとなったらこれでしのいでくれ」

「いいのですか? 勝手に使用しても……」

「ああ、構わない。それと、落ちているアイテムも好きに使っていいから。今はとりあえず持ちきれないだろうからその三つだけ渡しておくけれど、なくなったらまた渡す」

「ありがとうございます。でも、なるべく大事に使わせていただきますね」


 そう言ってユキは俺からもらったアイテムをうれしそうに見つめた。


「階段はすでに見つけてある。こっちだ」


 俺はユキたちを連れて来た道を引き返す。そして、途中に戦闘を挟みながらも階段へと辿り着き、次のフロアへと向かった。

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