神話のダンジョン
階段を上り、バザーへと戻ったところでアナウンスが鳴り響いた。昼休憩の時間らしい。
俺は先日同様、コンビニで昼食を済ませ後半戦へ臨んだ。
再びゲーム内へと戻った俺は、預かり所へと向かい最終ダンジョンへ持ってゆくアイテムを選ぶ。
いざという時のためのスリープとワープ薬、それからレベル上げをじっくり行うために食べ物も確保した。
現実世界では昼食を食べたばかりだが、このゲーム内では満腹度というものが存在しているということを忘れてはならない。ワイルドベアーからドロップしたこの串焼きと、シャーマンからドロップした木の実を持ってゆくことにしよう。
「これで準備は整った。これから最後のダンジョンに向かうけれど、準備はいいか?」
「はい、キリノ様!」
ユキが元気よく返事をしてくれた。ディアナとイシスは無反応だが仕方ない。
「それじゃ、行こう」
俺は魔法陣の部屋へと向かい、一番奥の魔法陣へと乗った。
移動中のこの眩い光にももう慣れたものだ。
だが、視界が広がって辺りを確かめると、今までとは大きく違う点が一つあった。そこにいるはずのユキたちの姿がない。
「ユキ!?」
「キリノ様!? これは一体!?」
どうやらコロシアムと同じ仕様のようだ。入ると味方の位置がばらばらになり、合流しなければならなくなる。
システムメッセージには『神話のダンジョン』と表示されており、俺たちは全員レベル1だ。
「ユキ! 何かあったらアイテムは惜しまず使え!」
「はい、わかりました!」
スリープとワープ薬を持たせておいてよかった。
次のフロア以降も入る度にはぐれるとすれば、相当厄介なダンジョンだ。常にユキにはアイテムを渡しておかないと。
不安が募る中マップを頼りに進んでゆくと、部屋に鎧を着たモンスターが現れた。
「く……! こんな時に!」
俺は弓矢を放った。だが、確かに命中したはずなのにモンスターは平然としている。
「うそだろ……!?」
まさかあれは、ピラミッドのダンジョン下層で見たエルダーアーマーなのか!? 見た目はレッサーアーマーと区別がつかないが、この防御力はそうとしか思えない。
「ふざけたダンジョンだ……」
迫り来る強敵へと対抗すべく、近くに落ちていた二つのアイテムを即座に回収した。両方とも爆薬だ。
俺は慎重に狙いを定め、それらを投げつけた。だが、二つでは足りなかったようで敵はふらつきながらもこちらへ向かってくる。
何とか距離を保ちながらこの部屋に落ちているもう一つのアイテムのもとへ到着し、それを拾った。今度は毒薬だ。
「頼む! これで沈んでくれ!」
祈りを込めてそれを投げつけると、途端にモンスターは苦しみだし、膝から崩れ落ちた。それと同時にエルダーアーマーを倒したことと、レベルが一気に5まで上がったことがシステムメッセージで告げられる。
「ユキ、気を付けろ。このダンジョン、一階からエルダーアーマーが出現する」
「ええ!? えっと、わかりました!」
ユキが驚くのもわかる。いや、俺も正直驚いた。
確かに俺が以前プレイしたゲームでも、最難関のダンジョンはこうした仕様のものがあった。しかし、それは強力な武器防具がしっかり用意できるからであって、今のところ俺の妖刀ムサシ以外は標準の威力しか持ち合わせていない。
いや、このムサシだってどこまで信頼していいのか……。
第一、もし仮にこの武器が高性能だとしても、一撃で倒し切らなければこのレベルでエルダーアーマーの攻撃は受け止めることができない。
何としてでも早くみんなと合流し、レベルを上げなければ。
そう思い急いで次の部屋へと向かうと、敵が五体も待ち構えていた。エルダーアーマーと、おそらくはエルダーナイトが一体ずつ。そして、巨大な鳥が二羽と赤いコウモリが一匹だ。
まともに戦っていては一撃で倒されてしまう。
俺はすぐさま持ち込んだスリープの魔法書を使い、近くに落ちている二冊の魔法書へと向かって走った。そしてそれらを拾い上げる。両方ともサンダーの魔法書だ。
と、そこでモンスターたちは目を覚まし、一斉に俺へ向かってきた。
「く……! 頼むからこれで倒れてくれよ?」
俺は再び祈りながら二冊のサンダーを使用した。荒れ狂う雷に打たれ、敵はよろめいた。
「しぶとい奴め!」
俺は弓矢を構え、一体ずつトドメを刺してゆく。レベルは恐ろしい勢いで上がり、10にまで達した。
「ユキ! そっちは大丈夫か!?」
「はい。今のところ敵は来ていません。それに、レベルが上がりましたので何とか戦えます」
「そうか。無茶はするなよ?」
「了解です」
一刻も早く助けに向かいたいが、コロシアムの時とは違って敵の数が多すぎる。慎重に進まないと簡単にやられてしまいそうだし、ワープ薬に賭けるなどもっての外だ。
焦る気持ちを必死に落ち着けつつ、俺はこの部屋に落ちているアイテムをしっかりと回収しきった。




