カミヤの試合
城へと戻った俺はアイテムの整理をするためバザーへと向かった。
何やらモニター周辺が騒がしい。
「キリノ様、あれは一体……」
「おそらくカミヤだろう。俺たちも見に行こう」
人だかりの外からモニターを見上げると、丁度コロシアムが始まったところだった。それぞれの部屋が映し出され、カミヤのいる部屋には他に誰もいないようだ。
カミヤは慌てる様子もなく、ゆっくりと魔法書を開いた。途端にフロアを仕切っていた壁が消滅し、床はチェス盤に変わった。
そして、アズールが即座に弓矢を放ち、すぐさま剣に持ち替えてフロアを猛スピードで駆け抜けた。先に放った矢がゴーストに命中するのと同時にウィッチへと斬撃を浴びせ、二体の敵は同時に倒れた。
アズールはさらに次の標的へと攻撃を試みる。だが、弓矢の狙いをバジリスクへと定めたその時、カミヤの口が動いた。どうやら攻撃を中断させたようだ。
そのままカミヤはこちら側へと振り向き、何かを訴えかけているような素振りを見せる。
「……プレイヤーのカミヤ様よりお申し出がございました。この試合の音声をオンにさせていただきます」
そのアナウンスに人々はざわついた。
そして……。
「諸君、すまない」
カミヤが画面を見ている俺たちに向かって話し出した。
「敵兵がNPCだったのでさっさと終わらせようかとも思ったのだが、君たちの存在を思い出した。せっかくご覧いただいているのだから、有意義な情報をお見せしないと」
そう言ってる間も、当然敵は行動を続けている。バジリスクは刻一刻と迫ってきており、敵兵はカミヤへと電気を纏った矢を放った。
だが、カミヤは背を向けていたにもかかわらず、瞬時に振り返り盾で防いだ。矢が放っていた弾けんばかりの青白い稲光も途端に消えた。
再びカミヤはこちらを振り向く。
「敵兵はどうやら特殊な矢を使用するようだ」
そう言ってる間に敵兵は杖をかざした。だが、何事も起こらない。
「眠りや麻痺の魔法も使用してくるだろう。対策は怠らないように」
カミヤは装備している首飾りへと手を伸ばした。おそらくあれは厄除けの首飾りだ。カミヤのパーティモンスターも全員首飾りを装備している。
「それと、もう一つ。三蔵、やれ」
その指示を受け、白い袈裟を着た女僧の姿をした仲間が杖を地面へと突いた。一度では何が起きたのかわからなかったが、何回も繰り返す内に段々と敵の動きが鈍ってゆく。
「敵もその類の対策は万全のようだ。ご覧の通り、妨害魔法も一度では効果が薄い。スリープの魔法書を使えば勝てるなどと、ゆめゆめ楽観しないことだな」
そう述べて、カミヤは戦場へと振り返った。
「待たせたな、アズール。トドメを刺せ」
「了解、カミヤ」
そう返事するや否やアズールは瞬時に弓矢を二発放った。それらはバジリスクと敵兵を射抜き、その一撃でそれらは倒れて動かなくなった。
そこで映像は途切れ、人々はさらにざわついた。
「これがカミヤたちの実力……」
「圧倒的でしたね……」
あまりの強さに、何と言っていいのかすらわからなくなる。こんな化け物みたいな奴に、果たして俺は追い付くことができるのだろうか?
「キリノ様、私たちもコロシアムで勝てるように作戦を考えましょう」
ユキの言葉にハッとした。
「そうだな。俺たちには俺たちの戦い方がある。まずは目の前の相手に集中しないとだな」
カミヤのことは後だ。今は次のコロシアムで勝つことに全力を尽くそう。
幸いにも、今見た映像から充分過ぎる程の情報を得ることができた。
まず、敵は眠り魔法や麻痺魔法などが効きにくい。なので、イシスをどう戦わせるかが最初の課題となる。
「イシス。何か使うことができないアイテムはあるか?」
「わらわが神のご命令なら、何であろうとも使いこなしてみせましょう」
「そうか」
特に問題はないようだ。少なくともナイフで戦うことくらいはできそうだ。
だが、だからと言って武器や盾をただ持たせるだけではダメだ。戦ってみてわかったことだが、イシスは動きが遅い。なので接近戦には不向きだろう。
ダンジョンで戦った時にはチェンジの魔法を使用されて苦戦はしたが……。
ん? 待てよ?
「イシス。ピラミッドで使ってた魔法は全て使えるんだな?」
「当然。お望みのものがあればご命令を」
それならば、俺たちのサポートとして立ち回ってもらえる。チェンジは敵に使用するだけでなく、味方の位置を入れ替えるという使い方もある。
「イシスはまず俺たちに合流すること。そのための移動法だが、敵が見えたらチェンジを使用して効率よく進んでくれ」
「ご命令、確かに承った」
これで同時に敵を後方へと追いやることもできる。
フロアに集結してからは、俺が細かく指示を出そう。
「キリノ様、私たちは?」
「二人は今まで通りでいい。ディアナは主戦力だから積極的に立ち回った方が強いし、ユキは臨機応変に動いてくれるから助かる」
「わ、私そんなにキリノ様のお役には……」
頬を赤く染めるユキを見て和んでから、俺は使用するアイテムの選択へと思考を向けた。




