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勝利へのカギ

 闇に閉ざされた視界の中、俺は脳内に流れるメッセージへと全神経を注いだ。イシスの麻痺が解けた瞬間、再びこのパラリシスを使用しなければならない。さもなければ、先手を得たイシスが俺の行動を縛るだろう。

 そうなってしまっては活路が閉ざされてしまう。


「……ぐ!」


 その呻きと同時にイシスの麻痺が解けたというメッセージが流れ、俺は即座に三冊目のパラリシスを開いた。何としてでもこのタイミングを逸するわけにはいかない。


「ぐああ!」


 イシスの悲鳴が上がった。最後の麻痺魔法も無事に効いたようだ。

 だが、ものの数秒後にはそれは解けてしまうことだろう。それまでにこの暗闇魔法が解けるのを祈り、俺はディアナがいるであろう方向へとこの隙に距離を縮める。

 そして、不意に俺の視界が明るくなり、俺にかかった暗闇魔法が解けたというメッセージと、イシスにかかった麻痺魔法が解けたというメッセージが流れた。

 しくも全ては同時に起こった。

 ディアナへの距離はまだ遠い。万事休すと思ったその時、視界を光が横切った。


「ぐああ!」


 それがイシスに刺さったところで俺は理解した。ユキの投げたナイフだ。


「キリノ様の邪魔はさせません!」

「小娘が……!」


 ユキは弓矢で追撃するも、それは全てかわされてしまっている。

 だが、それでいい。ユキが時間を稼いでくれたおかげで、俺はディアナへの距離を縮めることができた。


「これで終わりだ! イシス!」


 俺は首飾りを手にディアナへと駆け寄った。


「血迷ったか」


 俺はその声に振り向かず、真っ直ぐディアナへと向かって走る。おそらくは、今この瞬間にイシスは再びその目を閉じ、俺の行動を封じる魔法をかけようとしていることだろう。

 だが、脇目も振らず走った甲斐かいがあり、俺の手はその首へと届いた。

 直後、俺は体を動かせなくなり、その場へと盛大に転んだ。


「無様よのう。そのように醜い姿をさらして」

「余裕でいられるのはここまでだ! ディアナ! イシスを倒してくれ!」


 仰向あおむけでディアナの顔を見ながら俺は叫んだ。


「……承知!」

「ぐああ!」


 返事と共にその姿は目の前から消え、同時にイシスの悲鳴が上がった。


「なぜ……なぜわらわの魔法が効かぬ!?」

「それは、俺が厄除けの首飾りを装備させたからだ!」

「小賢しいことを……!」


 装備すれば眠りや麻痺などへの耐性を得ることができるアイテム、厄除けの首飾り。俺がこのダンジョンの探索中に手に入れたものだ。

 その効果の大きさは眠り除けの首飾りより劣るため、俺はそちらを装備し続けていた。だが、複雑に妨害魔法を織り交ぜるイシスに対しては、このカバーする範囲が広い厄除けの首飾りの方が効果的だ。

 しかし、それを俺が装備したところでイシスを追い詰めることができるかどうかはわからない。

 それならばディアナに装備させることにより、再び魔法を使用する余裕を奪う方が確実だ。


「く……おのれ!」


 イシスが苦戦する様子が聞こえてきたのと同時に、俺にかかった麻痺魔法が解けた。起き上がる間も惜しみ、俺は弓矢を構えてイシスへと放った。


「ぐあああ!」


 けたたましい悲鳴を上げ、イシスはその場へと倒れ込んだ。それと同時に、イシスを倒したというメッセージが流れる。


「……勝った。勝ったぞ!」


 ユキへと振り返り歓声を上げると、いつもの微笑みが返ってきた。


「おめでとうございます。キリノ様」

「ユキとディアナのおかげだ。ありがとう」

「いえ……私はただ、自分にできることを……」


 ユキは頬を赤く染めた。


「あ、キリノ様。あれを……」


 ユキの指し示す方向を見ると、真っ白いビショップの駒が宙に浮いている。俺はゆっくりと歩み寄り、それを手にした。


「これでイシスも仲間になった」

「三人目の仲間ですね」

「ああ。イシスがいれば強力なモンスターの足止めになるだろう」


 早速それを使用し、イシスを召喚した。


「おお、わらわが神よ。ご命令を」


 そう言ってイシスはひざまずいた。


「特に用はない。呼んだだけだ」


 イシスはその言葉に特には反応を示さなかった。

 彼女もまた、データとしての存在なのだろう。特に命令がなければすることがない。忠実な駒としての役割しかないのかと思うと、悲しくなる。

 だが、そんなイシスへとユキは微笑みながら手を差し伸べている。ユキだけでも血の通った反応があることで俺はどれだけ救われていることか……。

 そんな思いを知ってか否か、ユキは俺へと向き直り笑顔を見せた。


「お友達ができたみたいでうれしいです」

「そうか。仲良くしてくれよ」


 そう言って頭を撫でると、ユキはまた頬を赤く染めた。


「……さて、それじゃ帰るとするか」

「はい」


 ユキだけでも微笑み返してくれたことに満足し、俺は魔法陣に乗って帰還した。

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