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ピラミッドのダンジョン

 ダンジョンへと着き、いつも通り情報が流れ込む。どうやらここは『ピラミッドのダンジョン』と名付けられているらしい。壁は砂で造られており、昨日挑戦したエキスパートクラスのコロシアム用フロアに似ている。

 そして、ユキとディアナは俺のすぐ隣にいる。そこは通常のダンジョンとして今まで通りの仕様なのだろう。


 さて、まず最初にすべきことはマップの確認だ。このダンジョンは全部で三十階らしい。

 俺たちが今いるのは中央の部屋で、南北に大きく広がっている。通路もたくさん続いており、アイテムや敵も確認できる。少し離れたところにいるが、その正体を確認することは可能だ。レッサーイーグル三体とアーチャー二体、合計五体だ。


「ディアナ、先にアーチャーを倒してくれ。弓を持っている奴らだ」

「承知した」


 ディアナは命令を受け、瞬時に敵の方へと向かった。そして、アーチャーが矢の狙いを定めているであろう間に倒しきる。そしてそのまま、今度はレッサーイーグルを倒しに向かう。

 部屋中のモンスターを殲滅するのに、十秒程しかかかっていない。


「ディアナ。そのままアイテムも拾ってきてくれ」

「承知」


 返事とほぼ同時にディアナは部屋中を飛び回り、全てのアイテムを拾いきった。一瞬にして探索と安全確保が済んだ。

 それに、部屋を無警戒に歩き回る必要もないため、罠にかかる恐れも格段に減る。

 これは難易度が相当下がったかもしれない。


 いや、油断はすべきでないな。危険はいつ襲ってくるかわからない。しっかりと用心しておくに越したことはない。

 それに、俺はこのダンジョンには厄介なモンスターが多いと考えている。コロシアムで戦ったあの二体のモンスターは、おそらくその予告みたいなものなのだろう。


 しっかり準備をするべく、有用なアイテムを集めるためこのフロアの探索を開始した。毒や眠りなど、特殊能力を持った敵にも対抗できるように、俺はレベルを上げ続ける。

 まあ、戦っているのはほとんどディアナだけだが……。


 そんな調子で階層を進んでいき、気付けば十階を目の前にしていた。

 ここまで来る間に遭遇したのは今まで見た敵ばかりで、苦戦することはなかった。レッサーナイトもスナイパーも、ディアナの手にかかればいとも簡単に討伐してしまう。

 こんなに強くていいのかと、少し不安になる程だ。

 まあ、頼りっぱなしもここまでだろう。おそらく次の階くらいから、新しい敵が増えるはずだろうから……。


「さて、そろそろ下りよう」

「了解です、キリノ様」


 ここからがこのダンジョンにおける恐怖の始まりかもしれない。

 気を引き締め直し、十階に下りてすぐに辺りを確認する。狭い部屋に敵が一体のみだ。その敵はほうきを手にした黒服の女の子で、魔女という単語が頭に浮かんだ。

 これは何か仕掛けてくるかもしれないと思い、急いでディアナに指示を出そうと振り返った。だが、そこにいるはずのディアナとユキの姿はない。

 慌てて前へと振り向くと、敵もどこかへいなくなっている。それに、気のせいかさっきとは違う部屋にいるように思えてきた。

 マップで確認してみると、やはりここは別な部屋のようだった。


「キリノ様! 大丈夫ですか!?」


 ユキからのメッセージが脳内に流れ込む。

 それと、ディアナがウィッチを倒したという情報も。あのモンスターのことだな。


「大丈夫。別な部屋に飛ばされただけみたいだ。そっちは無事か?」

「はい。ディアナさんが敵を倒しました」

「そうか。すぐそっちに向かうから、それまで二人で耐えてくれ」

「はい」


 早く合流しないと……。まさかコロシアム以外でこんな目に遭うとは思っていなかった。

 幸い、ユキとディアナのいる部屋はどこだかわかる。二人がいるのは南東の部屋で、俺がいるのは真西の部屋だ。


 敵に見付からないように祈りながら通路を進むと、その先の部屋には六体ものモンスターが待ち構えていた。茶色いコブラ型のモンスターと、黒みがかった半透明の球体がそれぞれ三体ずつだ。

 一度に相手するのは無理なので、近づかれる前に対処しなければならない。俺は弓矢を構え、まずはコブラ型のモンスターへと狙いを定めた。放った矢は命中し、一撃で敵は倒れ込んだ。流れ込んだメッセージによると、キングコブラという名前らしい。


 倒すこと自体は簡単なようなのでまだいい方だ。俺は続けて残り二体のキングコブラも倒しきった。

 残るはあの黒い敵だ。以前見かけたスライムというモンスターの上位種だろうか? もうすでに近くまで迫っているので、急いでその内の一体を倒す。そうして得た敵モンスターの名前を見て、俺は愕然がくぜんとした。このモンスターには、石化スライムなどという不穏極まりない名前が付いていたのだ。

 俺は急いで残りの石化スライムにも弓矢を向けた。何とか二体目も倒すことができたが、目前に迫った残りの一体へ対処する猶予がない。それでも剣へ持ち替えようとしたのだが、それは到底間に合わなかった。

 敵が俺へと体当たりをした。全く痛みは感じなかったのだが、その直後俺の体は動かなくなった。体が石のように固まり、指一本すら動かすことができない。

 まさかずっとこのままというわけではないだろうけれど、その間にも新たな敵が集まり出すだろう。そうして石化が解ける頃には周囲をモンスターが埋め尽くし、俺はそれを打開することができなくなるという未来が容易に想像できる。

 このままではまずい。助けを呼ばなくては……。


「ユキ、聞こえるか?」

「キリノ様!? どうなさいました!?」

「俺は今中央の部屋にいる。石化してしまい、動くことができないから助けてくれ!」

「了解です! すぐに向かいます!」


 二人が辿り着く前に囲まれてしまうかもしれない。そもそも先程のウィッチがいるから、ここまで辿り着けるかどうかすら怪しい。

 本当にとんでもない敵を用意してくれたものだ。こんなにあっさりと劣勢に立たされるなんて……。

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