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チームワーク

 遠のく感覚の中、ただただユキを信じ続けた。ユキならこの状況も打開してくれるかもしれない。俺が窮地に立たされた時は、いつもそうしてくれたように……。


「……様! キリノ様!」


 ユキの声が聞こえる……。


「きゃあ!」

「ゆ、ユキ!」


 その悲鳴に慌てて飛び起きると、東の通路のそばでユキが兵士に襲われていた。


「ユキに手を出すな!」


 瞬時に弓矢を構え、兵士に向かって撃つ。焦っていたため狙いを定められず、その結果かわされてしまった。

 だが、ユキへの攻撃を抑制するのには成功したようだ。


「キリノ様! 今お助けします!」


 ユキが魔法書を開いた。それにより、部屋中を激しい雷が駆け巡り、光の鞭のようにしなりながら敵を叩く。

 しかし、その一撃では倒しきれず、兵士はユキへとつかみかかろうとしている。力ずくで次の魔法書の使用を止めるつもりだろう。

 だが、そうはさせない。俺も今度はしっかりと狙いを定めて矢を放った。兵士は鎧を着ていなかったため、突き刺さった矢に苦しんでいる。


「お前の相手はこっちだ!」


 もう一度弓矢で攻撃しようと狙いを定めたが、こちらが撃つより先に水魔法が飛んできた。咄嗟のことだったので上手く避けられず、再び俺は地面へと叩きつけられる。

 弓矢による一撃を加えたばかりだというのに、平然と反撃してくるなんて……。


「キリノ様、攻撃が!」


 声ではなくメッセージで脳内に流れ込んだ。急いで起き上がり前方を確認すると、水魔法が目前まで迫っていた。

 避けられないと思い目を閉じてしまったが、数秒経ってもその攻撃が届く気配がない。不思議に思い目を開けてみると、俺の前にディアナが立っていた。

 システムメッセージを確認すると、ディアナがバジリスクを倒したという情報がすでに流れていた。戦いの激しさから見落としてしまっていたようだ。


「……守ってくれたのか?」

「そのように、予め指示をうけたまわっていた」


 そう言ってディアナはこちらへと振り向く。その凛とした顔がとても頼もしい。俺を守ってくれるその温かみが、何だかお姉さん的存在を連想させる。俺は一人っ子だからそうした人はいないけれど、なぜだかそのように思えてきた。


「さあ主よ、次の命令を」

「……そうだな。好き勝手してもらったお礼をたっぷりしてやらないと」


 敵が陣形を整え直そうとしている間に、俺は回復薬を使用し自らの傷を癒した。これで活力も戻ったことだし、俺も思う存分戦える。

 さて、まずはあのハープを止めてやろう。兵士がそのモンスターを守るように立ちはだかっているが、こちらにも策はある。


「ディアナ! あいつをどかせ!」

「承知した」


 ディアナは一瞬で兵士の目の前まで移動し、青白い槌で突き飛ばした。それはあっという間の出来事で、俺へと返答したのとどちらが先だったのかわからない程だ。

 そして、その隙を突いて俺は敵モンスターへと矢を放った。その一撃でモンスターは倒れ、ヒュプノスを倒したというメッセージが脳内に流れる。

 敵の兵士が最後の抵抗をしようと水魔法を放っているが、ディアナはそれを光の盾で防いだ。


「よくやったディアナ。そのまま兵士を倒せ! チェックメイトだ!」

「勝利は我が軍勢に、栄光は我が主にあり」


 そう告げるとディアナは思いっきり剣を振りかぶった。そして、勢いよくそれを叩きつける。その斬撃を受けて兵士は倒れ込んだ。

 それから間もなくして、エキスパートクラスクリアという情報が脳内に流れ込んだ。

 光に包まれて受け付けへ戻ると、ユキとディアナがそばにいた。


「エキスパートクラスクリア、おめでとうございます。お預かりしていたリュックをご返却いたします。コロシアムでご使用いただいた回復薬とサンダーの魔法書も補填ほてんしました。なお、こちらは賞品の貫通の首飾りです」


 俺はそのアイテムを受け取った。


「ありがとうございます」

「それでは、またの挑戦をお待ちしております」


 手渡されたそのアイテムの詳細を見ると、どうやら装備中に放った矢と投げたものが後方の敵にも当たるらしい。


「キリノ様、今回もお見事でした!」


 ユキが俺を祝ってくれている。その表情からも、心からのものだと思えてならない。


「ありがとう。ユキがいなかったら負けていたよ」

「そんな……私は……」

「ディアナも率先してバジリスクの相手を引き受けてくれた。そのおかげでいち早く状況を把握できたし、すごく助かったよ」

「命令に従ったまで」


 ディアナは無表情のままそう述べた。


「今回も手強かったですね」

「ああ……」


 先程の戦いで相手にしたモンスター……ヒュプノスもバジリスクも神話に出てくる生物だ。前者は眠りを司る神で、後者はその瞳に石化の魔力が宿るという魔物だ。

 わざわざ神話から名前を付けたことからも、相当強いモンスターなのだと容易に想像がつく。今後のダンジョンで出てくるかもしれないから、充分に対策を練っておかないといけない。

 そのためにもまずは情報収集だ。


「さてと、とりあえずバザーの様子でも見に行こう」

「はい。他のプレイヤーの観察も大事ですよね」

「カミヤのことも気になるしな」


 俺はユキとディアナを連れ、コロシアムを後にした。

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