特殊能力の応酬
時々満腹度を回復させつつしばらく戦い続け、レベルが二つ程上がったのでそのフロアを後にした。
次の階も、そのまた次の階も同じ敵が待っているだけ。アイテムも目新しいものはない。
そうして順調に階層を進み、十五階に達した時にその状況は変わった。
階段を下りた先で待ち構えていたのは、馬に乗った人型のモンスターだった。その手には鋭い槍を持っており、とても強そうに見える。その敵は俺たちのことを確認するや否や猛烈な勢いで突進してきた。
俺はそれに応じ、すでに構えていた弓矢で迎え撃つ。その放ったブロンズ製の矢は馬へと突き刺さり、それにより敵は馬の制御を失った。
そのまま落馬し、体勢を立て直そうとしている内に俺は追撃を仕掛ける。動きも速く、攻守共に強力そうなモンスターだったが、こうして戦闘能力を奪ってしまえばどうということはない。
そうして倒しきった時、レッサーナイトを倒したという情報が脳内に流れ込んだ。
「さすがです。突然の襲撃でしたのに、冷静に対応していてかっこよかったです」
「ユキを守るために常に注意を払っているからな」
そろそろ新しい敵が出てきそうだとは思っていた。この階からは対策も新たに立てる必要があるかもしれない。
探索はおいといて、ひとまずこの部屋の様子を確認する。モンスターは他にいないようで、アイテムも落ちていない。そして特徴的なのが、南側へ広がる水面だ。今までは石でできた壁に四方を囲まれていたのだが、どうやらこうしたフロアも存在するらしい。
他にも強力なモンスターがいるかもしれないし、しばらくは敵の種類を探りたい。
「ユキ、今までと同じ作戦で様子を見ようと思う。ここを拠点に敵がどんな能力を持っているのかをまずは見極める」
「了解です」
いち早く敵に応じるために、通路の先を確認する。丁度赤いローブを纏ったモンスターが向かってくるところだ。おそらく、以前見かけたサマナーの上位種だろう。
仲間を呼ばれる前に倒そうと弓矢を構えたが、不意に前方から水でできた弾が飛んできた。咄嗟に通路から首を引っ込めてなんとか避けることに成功したが、これではこちらも攻撃のタイミングを伺うのが難しい。
だが、今の内に何としても倒しておかないと。部屋に入られる前の方が、敵にとって一方的に視界も逃げ場も狭い。そう、今の位置なら俺たちが有利なのは明白だ。
意を決して弓矢を構え、通路の前に立ち素早く放つ。どうやら上手くいったようで、敵はそのまま倒れ込む。俺が奇襲を仕掛けたことにより、魔法を使う余裕がなかったようだ。
そして、シャーマンを倒したという情報が脳内に流れ込んだ。
「ユキ、気をつけろ。この階のモンスターは強力な奴が……」
「きゃあ!」
不意に聞こえたユキの悲鳴に振り返る。ユキが倒れており、周辺の床が濡れている。その背後の水面にはカエル型のモンスターがいて、こちらを真っ直ぐ睨んでいた。
突然の出来事に焦りながらも、俺は弓矢でそのモンスターを撃ち抜いた。そして、フロッグを倒したという情報が流れ込んだのを確認し、ユキのそばへと走り寄る。
「大丈夫か!? ユキ!」
「は……はい。突然後ろから撃たれてしまい、驚きました……」
「水面を移動し、遠距離攻撃まで仕掛けてくるのか……。厄介な敵だな」
「キリノ様、どうしましょう? この部屋も安全ではないということですよね……」
「他の部屋も壁に囲まれていないかもしれない。下手に移動するよりはここで戦う方が安全なはずだ。俺は後ろを見張るから、ユキは通路を頼む」
「了解です」
咄嗟にユキを守れるように、俺は範囲の広い後方を担当することにした。通路の先から敵が近づいてきたらユキがそれを知らせてくれるだろう。そうしたら俺が迎撃するという作戦だ。
一応、もう一体仲間モンスターがいるにはいるが、部屋内をうろうろしているだけだし頼りにならなそうだ。こいつはほっといて、俺とユキで戦うしかない。
それから手はず通りにフロッグやシャーマンを倒していたが、しばらくして見慣れないモンスターが通路からやってきた。弓矢を持った小人のモンスターで、こちらへと照準を合わせている。
俺はそれを防ごうと盾を構えたのだが、矢が当たった途端にアイアンシールドに炎が乗り移った。咄嗟にそれを手放したのでダメージを受けることはなかったが、これまた面倒な能力だ。
こちらも素早く弓矢を放ち、その敵を倒した。どうやらスナイパーという名のモンスターらしい。
「キリノ様、大丈夫ですか!?」
「ああ、反応が間に合ったからな。盾も壊れていないようだ」
地面へと放り投げた盾を拾い上げ、再び装備する。
そうして苦戦しながらも撃退し続け、気付けばレベルが上がっていた。
それと同時に新しくシバルリーというスキルも習得し、このダンジョンの最下層を目指す準備がまた一つ整う。このスキルは、使用すると一時的に防御力が上がり、フロア中のモンスターの注意を自分へと引きつけることができるらしい。
目前からレッサーナイトが迫っていたので、早速それを使用してみた。体が勝手に動き、剣を高く掲げる動作をさせられた。その直後、俺を赤いオーラが包み込んでいるのを確認した。力がみなぎってくるような感覚があり、これなら強敵とも戦えるという自信が湧いてくる。
俺はその溢れるパワーを込め、剣を突き出す。すると、レッサーナイトは一撃で倒れ込み動かなくなった。
着々と戦力を増強していることを実感し、思い切って探索を開始する。
そうしてこのダンジョンの奥へと進み続け、気付けば最下層の目前まで来ていた。
「ユキ、もしかしたらこの下には危険が待っているかもしれない。これまでとは比べ物にならないようなモンスターが待ち構えている可能性がある。覚悟はできているか?」
「はい。キリノ様と一緒なら、私はどこへでも向かいます」
「ありがとう。それじゃ、行こう」
気を引き締め直し、俺はその最後の階段を下りた。




