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訪れる危険!

 ようやく順調な流れになったと感じながら、俺は襲い来るモンスターたちを倒しつつ探索を続ける。

 そうしている内にアイテムも集まり始め、ユキの装備も整い出した。盾は元から持たせていたブロンズ製のものだが、メイン武器として鉄製のナイフを新たに渡した。そして、軽くて使いやすい木製の弓矢と、回避率が上がるという効果を持つ羽根の首飾りも装備させている。

 一方、俺の装備もしっかりと強化が進んでいる。武器はアイアンソードより強力なものはなかなか見付からなかったが、盾は丈夫なものが落ちていた。アイアンシールドという名前で、かなりの強度だがその反面とても重い。その影響なのか、満腹度の減りがさっきから激しいように感じるが、装備しておかないといざという時に咄嗟にリュックから出しているようでは間に合わない局面もあるだろう。徐々に減少していく数値が怖いが、装備せざるを得ない。

 どうしたものかと悩んでいたが、レベルが上がるのと同時にその悩みは解消できた。不意に手にしている武器防具が軽くなったように感じたのだ。

 そして、その直後にスキル習得のメッセージが脳内に流れ込む。


「ユキ、俺もスキルを使えるようになったようだ」

「スキル習得おめでとうございます! どのような効果ですか?」

「武器と防具の重さに耐えられるようになるらしい。タフネスという名前のスキルみたいだな」

「重そうな盾でしたので、丁度いいスキルですね」

「ああ」


 本当にタイムリーなものを習得できてよかった。

 都合よく装備とスキルが噛み合ったものだと思ったが、あるいは今後の戦いでは必須となるということだろうか。もしそうならば、この盾でも防ぎきれない程の強力なモンスターが出てくるということになる。

 こちらもしっかりと備えなければ……。


「さて、スキルによって満腹度に余裕ができたことだし、少し時間を使ってレベル上げしよう」

「了解しました」


 レベル上げに重点を置いた俺は、フロアを探索し尽くした後も階段を下りずに戦闘を続けた。先程は苦戦したサマナーが、今ではもうすっかりレベル上げの道具に成り下がっている。あえてモンスターを召喚させ、それを狩ることによって効率よくレベルを上げた。

 それを繰り返していると、ワイルドベアーを倒した時に奇妙なものをその場に残していった。それはまるでモンスターをそのまま小さな人形にしたようなアイテムで、手に取って効果を確認すると面白いことがわかった。どうやらこれを使えば仲間モンスターとして先程のワイルドベアーを召喚することができ、しかも万が一倒されても城に戻れば復活させられるようだ。


「ユキ、こいつ仲間になったみたいだ」

「先程の熊さんがですか? それは心強いです!」

「そうだな。よし!」


 早速試してみたくなり、それを使用してみた。目の前にワイルドベアーが現れ、大人しく座った。


「こうして見るとかわいいですね」

「襲ってこなければそんなもんか。お、丁度いい」


 目の前からアーチャーが迫ってきている。こいつの初陣としてやろう。


「よし、命令だワイルドベアー! あいつの狙いをかわしながら……って、おい」


 指示を聞かずにワイルドベアーは敵へ向かって突進し始めた。真っ直ぐと、矢を警戒もせずに……。

 そして案の定、放たれた矢がその体に突き刺さり、苦しそうな唸り声をあげた。

 このまま味方を失うのも惜しいので、俺はブロンズ製のナイフを取り出し敵へと投げつけた。結果、見事に命中し、アーチャーは倒れ込んで動かなくなった。


「全く……。扱いに困るなこれは」

「思った通りに動いてくれないようですね……」

「改めてユキの強さがよくわかるよ……。悪いが、そいつに回復魔法をかけてくれ」

「はい、了解しました」


 ユキの回復魔法の光に包まれたワイルドベアーは、ようやく苦しみから解放されたような表情を見せた。


「まあ、いないよりはいいけれど、コロシアムで勝つためには別なモンスターが必要だな」

「そうですね……。私も、勝つために外していただいても……」

「そんなこと言わないでくれ、ユキ。君がいないと俺は戦えない」

「キリノ様!? それはどういう……」

「なっ!? き、気にするな! 何でもない!」


 俺はそんなつもりで言ったんじゃない。そう、決してそんな意図があって言ったわけじゃない!

 そう言い聞かせるが、心音はどんどん高鳴ってゆく。


「そうだ! そろそろ次のフロアに進まないとだな! よし、行こう!」

「あ、えっと……はい」


 先程の発言を誤魔化すために勢いで下りてしまったが、すぐさま不安が脳裏をかすめる。

 よくよく考えると、心配なことはサマナーのような敵だけじゃない。プレイ済みのゲームに存在していたシステムが頭に浮かぶ。たまにそのフロア全体が大きな一つの部屋となっていて、そこに大量のモンスターがひしめくという階に遭遇するという恐ろしいシステムが……。


「き、キリノ様!」

「……これは!」


 次のフロアに着いてすぐさま、ユキの悲鳴にも似た声が耳に響いた。視界に映ったのはどこまでも広がる大きな部屋と、大量のモンスターたち。足元にはこの惨状を嘲笑あざわらうかのように白と黒のタイルが交互に並んでいた。

 それらを確認するのと同時に脳内に流れたメッセージ。ここは……チェス盤の上だ!

 恐れていた事態が現実となってしまった!

 急いでマップ全体を確認し、階段や敵の位置、そしてアイテムの位置も把握する。拾いきるつもりなんて全くないが、この状況を切り抜けるのに使えるものがあるかもしれないからだ。

 その結果、絶望的なことがわかった。俺たちが今いるのは南東の隅、そして階段があるのは北西の隅だ。敵は四十体程いるし、アイテムはそのほとんどが遠くに存在している。


「ど、どうしましょう!?」

「慌てるな、まずはこれを使おう」


 俺はリュックから取り出した薬瓶を取り出し、それを自らにかけた。これは探索中に手に入れたもので、目薬という名前のアイテムだ。その効果によって、使用したフロアにいる間は全ての罠を見破ることができる。

 この緊急事態にそんな悠長な、と言いたげな表情をユキは見せているが、俺はこれが唯一の手段だと確信して使用した。そして、俺の願いは届いたようだ。すぐ目の前に赤いタイルが見えている!


「ユキ、危ないから離れてろ!」

「は、はい!」


 俺はユキを背後のスペースに移動するように促した。味方のワイルドベアーも運よく後退してくれているようだ。

 後は、この罠が俺の読み通りならば何も問題ない。そう、こうしたゲームによくあるあの罠ならば……!


「さあ、かかってこい!」


 敵に向けてわざと挑発し、まとめてこちらへ誘導する。そして、丁度俺の周辺に来たその時、俺は足元の罠を踏んだ。


「ぐああ!」

「キリノ様ー!」


 あまりの熱さで思わず悲鳴を上げてしまった。それ程までに、耐え難い激痛が体を走ったのだ。

 だが、巻き起こった爆炎は敵も一撃で消滅させた。やはり、俺の思った通りの効果だったようだ。踏むとプレイヤーは体力が半減し、周囲のアイテムや敵を消滅させるという罠。この痛みに耐え続ければ、こいつらを一掃することができる!


「キリノ様……そんな……」

「ユキ、大丈夫だから」


 俺はそう言って無理に笑顔を作って見せた。あるいは、作りきれてなかったのかもしれないが……。

 そうして、足元にある爆発の罠を起動させた。


「キリノ様ー!」


 再び巻き起こる業火、猛烈な爆発音、凄まじい痛み……。次々に襲いかかる刺激の中、ユキの叫び声が聞こえた。

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