え、そうだったの?
人と人との巡り合わせ、繋がりって、時に凄い不思議ですね。
「ねえ、ここち。」 入間君達の待つ庫裏に戻る道すがらだ。まりねとくっちょは、3メートル程後を、私達同様横に並んで歩いていた。
「ごめんね、あんな当てつけみたいなこと云って。」って、まだ何も云ってないのに、やっぱりあれは、私だけがさえっちの傍にいたことに対するジェラシーだったんだ。ま、それはちょっとこっち置いといて、
「そんなことないよ。それより、ここちはさえっちの家に行ったことあったの?」 その問いに、にやりと笑って、
「あるよ、2年の時2回だけだけど・・・」 その表情は、本当にそれが最高の思い出だったんだなと思うくらい、在りし日を偲んでる様に見えた。
「なのに、どうして、引っ越したと思ったの?」
「篤志君に教えてもらって分かったんだけど、さえっちの部屋、2階になってたんだよ。」 そう、私がお邪魔したさえっちの部屋は3階だった。
「そうだったんだ。じゃあ、変装って?」
「篤志君のお母さんが、マンションに出入りするアフロの変な子を見かけて、もしかしてと思って町内会の資料調べたら、そうだったみたい。」 もう誰にも会いたくなかったって云ってたけど、東京ではそんなことしてたんだ。じゃあ、ここちは結局さえっちと会えず終いだったんだね。
「ごめんね、ここちの気持ち分かってなくって。」
「1度ね、思いっ切り泣いてみたかったんだ。私こそ、ごめん。まいっちだって、一杯辛かったのに、自分勝手に不幸少女して。」 ううん、私はもうとうに一杯泣いた後だからね。
「あ、それよりさ、あいつらに負けないくらい強くなったって云ってたけど、ここち空手とかやってるの?」
「合気道なんだ。生徒会の世話してくれてた先生が合気道の有段者でね、生徒会兼合気道同好会だったんだ。美菜ちゃんは初段で、あかねっちは2段だよ。」
「それって、生徒会と合気道の兼任してたってこと、それとも生徒会自体が・・・」
「生徒会の中で合気道やってたんだよ。丁度、柔道部が部員不足でほとんど練習してなかったから、畳の道場が空いてたのもラッキーだったし。生徒会の必修みたいに、みんな合気道にも取り組んでた。」 美菜ちゃんも生徒会だったのか?ところで、そう云う、
「ここちは何段なの?」
「2段。本当は生徒会長の面子で3段取りたかったけど、会長なって間もなく、さえっちが遠くに行ったと思ってテンション下がって、練習さぼったのがいけなかった。まあ、2段なのはあかねっちと2人だけだし、運動神経抜群のあかねっちと一緒なら上出来だと、ちょっと自分に甘い評価しちゃった。」って、どこが甘いんだ。生徒会長兼任で、めちゃ凄いよ。なんて感心してると、庫裏の前に入間君が待っていてくれた。
「お参り、お疲れ様。舞、久しぶり。」と微笑んでくれた後みんなの方に向き直して、「皆さんも、遠いところよくお参り下さり、ありがとうございます。」と、すっかり住職さん見習い。
「いえ、こちらこそお世話になってます。」 ここちの挨拶に合わせて、まりねとくっちょも会釈していた。
「どう?修行の方は?」
「おう、ばっちりだ。あ、よかったらお茶でもどうかな。皆さんも、帰り遅くなるといけないのであまり引き止められないけど、よかったら上がってお茶でも飲んでって下さい。」ということで、とりあえずみんな上がらせてもらった。
そこは、檀家さん用の客間ではなく、入間君と千里ちゃんに割り当てられた新生活の茶の間だった。
「狭くて、ごめんね。」と、界笑君を抱きながら応対する千里ちゃんの云う通り、長方形のこたつとテレビだけというシンプルな6畳の和室だ。
「入間君は?」
「今、お茶入れに行ってる。あ、どこでも好きなとこ適当に座って。」ということで、時計回りに千里ちゃん親子、私、ここちとまりね、くっちょと着席した。
「界笑君のベッドは、寝室なんだね。」
「この子、ベッドないんだわ。お寺の子らしく、畳の上に布団敷いて寝させてる。」
「実家でもそうだったの?」
「あったんだけどね、健が持ってくんなって、そしたらこの子、畳の上の方がよく寝るんだわ。」
「DNAって、凄いんですねえ。」 くっちょが感心すると、
「そう、坊主のDNAってやつ。」 爆笑とまではいかないが、みんなで笑った。すると、それを見て界笑ちゃんも笑ってる。流石、名前は伊達じゃないなあ。
「随分盛り上がってるんだな。」 丁度そこへ、入間君がお盆にお茶とお菓子を乗せて戻って来た。
「お墓、綺麗にして頂いて、ありがとうございます。」 ここちが丁寧に頭を下げていた。
「あれね、風香ちゃんがちょっと前に来て、あーして行ったんですよ。」 そうだったんだ。
「ほんと、優馬の妹とは思えない程しっかりしてるわ。」 みんながお茶をもらって会釈してる中、千里ちゃんが感心していたので、
「坂下君達もお参りしたんでしょ?」
「あいつらは、おととい来たよ。『明日出発する。』って云ってたから、今頃はもうとうに京都にいるはずだ。」 真奈ちゃんと京都で大学生活を始める直前に、2人揃って来たんだね。
「そうそう、月岡さんが舞によろしくって。素敵なピアニストになって下さいって。」 真奈ちゃんとは、何か気まずくってあまり話さなくなっていた。よく気さくに話しかけてくれたけど、やっぱり私の心の中にこだわりがあったんだ。結局私は、さえっちの恋を応援していたから。さえっちと坂下君は、あのクリスマスイブのカラオケ店で運命の出会いをしたんだ。そう云えば、
「中3のイブに、入間君と千里ちゃんも新宿のカラオケ店にいたんだってね。」
「うん、いたいた。」 千里ちゃんが云うと、
「新宿のって、さえっちが集合かけたあのカラオケ店ですか?」 ここちがまず反応した。
「そうだってね、同じ時に舞もいたんだよね。」
「え、そうなんですか?」 まりねも目を丸くしていた。
「イブは私達の記念日だから、新宿に用事があった楓とクリぼっちの優馬誘ったんだよ。
「楓ってのは、バンド組む前の絆のカエデな。」 入間君の注釈だ。
「ええ、それまじっすかあ?」 芸能通のくっちょらしい食いつきだ。
「と云うことは、この6人全員あの時同じ場所にいたんですね。」 ここちがみんなと顔を見合わせて感慨に耽っていた。そうなんだ。あの時に、みんないたんだよね。
「偶然って、凄いですね。」 まりねが云うと、
「導かれてたのかもしれないな。」 お坊さんらしい解釈。
「私もそれに同感です。」 ここちが又しみじみと云った。
「見えない糸でみんな繋がってるんですね。人の縁て何か不思議。」 まりねまで。
「じゃあ、黛雛子って知ってます?その子高校からの友達で、就職先も一緒だけど、中学まではさいたまだって云ってたから。」 くっちょが又変に食いついて来たが、
「聞いたことないなあ。」 千里ちゃんも、
「さいたまって、結構広いからな。」 入間君も、
「流石にそこまでは、繋がってなかったみたいだね。」と、私も心当たりなかった。少なくとも、その時点では知らない名前だった。まさか、やがて出会うことになるとは知らずに・・・
お付き合い下さって、誠にありがとうございます。<(_ _)> 後2話で締める予定です。最終話まで、出来れば宜しくお願い申し上げます。<(_ _)> 又、これと繋がる話しもよかったら、よろしくお願い致します。<(_ _)>




