必殺技はロマンだろ
なんとかヒロインであるマリアを撃退した後、ようやく私は自分の周りをゆっくりと見渡す余裕が出来た。
そこは広い庭園である。
少し離れた場所にはガラス張りの建物が立っていて、恐らくは温室だろう。
その手前には幾つもの白やピンク色の花を咲かせる木が植えられていて、その手前にはまだ花を咲かせる時期ではないらしい緑の葉で作った塀がある。
その中には外で休んだりするような椅子やテーブルが置かれており、内側にある花壇には赤と白のグラデーションがかったチューリップの様な花が咲き乱れている。
そして私の立っている地味は何故か土がむき出しの場所で、周辺も踏み固められた学校のグラウンドの様な状態だ。
あたかもここで魔法の練習をするために作られたものであるかのように。
ふと私は先ほど破壊された家の壁を見やる。
気付けばそれは自動的に補修されていた。
正確には段々と元の形の戻ってきているのである。
便利な魔法だなとぼんやり思って見ていると、サポート役が、
「この世界の建物には大抵ああいった修復機能が付いているから巻き込まれないようにしろよ? 以前女の子が腰のあたりで埋まった状態になって大変だったんだ」
「? そうなんだ」
「ああ、引っ張れば抜けるかと思ったらしいが、腰を触れば恥ずかしがるから足首を掴んで引っ張ったけれど今度は胸がつかえて引っ張りだせなくて、最終的には一度壁ごと破壊する事になったんだ」
「……大変ね。私も気をつけないと」
「ただ、今は、人が挟まったらしばらく修復機能が停止するようにされている物がほとんどなんだけれどな。でも昔の建物はそういった処置がされていない事が多いから、気を付けた方が良いぞ」
「うん、そうする……」
まさにファンタジーな現象に遭遇した私は、なるほど、と思いつつそこで気付いた。
このサポート役には色々聞きたい事といいたい事がある。
まずは、先ほどの技だ。
「さっきはよくも恐ろしい必殺技を教えてくれたわね」
「あー、そんなに特攻するのが怖かったのか?」
「当り前でしょう! いきなり腕から炎が出たと思ったら飛び跳ねていくし、必殺とか意味が分からないよ!」
「必殺技はロマンだろ。それに直接自身が飛んで行くから、攻撃の方向の修正がしやすいし。何だかんだいって“杖の魔法(物理)”が人気なのもそうだし」
「……“杖の魔法(物理)”って何? 私はそんな物、知らないけれど」
ゲーム内ではそんな物はでてきていない。
ただゲームの場合ある一定の情景を切り取っているので、たまたま出てこなかったという事なのかもしれないが。
そこでサポート役が、
「その名の通り、杖に魔力を込めて敵を叩く攻撃だ。魔法攻撃だと、普通は遠距離から撃つから避けられやすい。けれどこの魔法の場合、接近しないといけないというリスクはあるが、逃げられない位置で強力な技が使えるから、確実に仕留めたい場合には有効というか、この世界の人間の多くが取得している普遍的な魔法だ。ちなみに、マリアはそっちも得意で好んで使っているからな」
「……私も使えるの?」
「杖を装備すればだが……使いたいのか? ダンス魔法の方が、ベルの体はそれ用に作られているから強力で使いやすいと思うぞ?」
「あのダンス魔法、使うの難しそうだし」
「でもこれから杖の魔法を覚えるとなると、労力が今以上にかかるぞ?」
どうやら杖の魔法を覚えるのは大変らしい。
大変なのは嫌だなと私が考えているとそこでサポート役が、
「そういえば俺はまだ名乗ってなかったな。俺の名前はレオンハルト、レオンと呼んでくれ。この国の王子をやっている」
「レオンね、覚えたわ。でも私名前よりももっと聞きたい事が一杯あるんだけれど」
そう告げると、レオンは場所を移動してもう少し落ち着いた所で話そうという話しになり、そこで先ほどから映されていたステータス可視化魔法をレオンが消す。
ちなみにこれは私達やヒロインにしか見えない特別な魔法であるらしい。
そんなこんなで私達は修復された部屋に戻ったのだった。




