危険そうなボス退治
待ち合わせは寮の前だったのだけれど。
「僕の部屋に来て下さい。転送します」
とメアが嫌そういに言うので、彼の部屋に向かう。
すでにその“世界樹の守人”達と連絡はとって話はついているらしい。
というわけで、男のこの部屋に行くというちょっとドキドキな体験を私はしたわけですが、
「綺麗にかたずいた普通の部屋……」
「それの何が悪いんだ」
「いえ、まったく悪くないです」
何となく私のイメージでは、水着っぽい女の子やら二次元キャラのポスターが張ってある気がしたがそんな事はなかった。
そして部屋の中ではすでに移動する為の装置が完成していた。
地面に置かれた白い紙の上で水色と黄色、緑色、ピンク色の光が躍っている。
その紙を抑える四つの角の部分には、文鎮の様な細長い物が置かれている。
あれがもしかしたら装置の一部なのかもしれない。
それを綺麗だなー、と思って見ていた私は、
「さっさと行け」
「ふぎゃああああ」
背中を押されて地面に頭をぶつけ……る事もなく、ぼとっと草むらにほおり出された。
どうにか受け身は取れたけれど、
「いたたたた。うぎゃああ」
更に次々と私の上に人影が現れて私は急いでその場を後にする。
皆が現れて、踏みつぶされないように私はその場を逃走した。
そしてどうにか私は逃げきったわけだけれど、
「ベル、光系の魔法で威力が強い物をイメージしておくように」
レオンに言われて、私は慌ててそれを検索する。
その間にシンシアも含めて何やら全員準備を始めている。
あの青い石の装置の玩具を使うと、少し離れた場所からその怪物を倒す事も出来るそうだ。
離れていれば安全なのとそして、
「そこにある石板の様な物に入れると、起動する。起動させた本人の魔力の影響を受けるから、強い人間がした方が良い」
との事だった。
だから私がそれらを設置する事になる。
すでに魔法の検索は終わっているので、周りも準備している事もあって私も少しでも、と思ってぱしぱし石を嵌めこんで行く。
そして最後の石を嵌めこんだ時にそれは起こった。
「気付かれた」
世界樹その物であるユーグがそう呟く。
遠くで唸るような何かが聞こえる。
見るともこもことした黒い塊がこちらに向かってきている。
私はまだ準備はできていない。
けれどまず初めに動いたのは戦闘慣れしていそうなマリアだった。
その次に動いたのはウィル、ランディ。
シンシアやメアも動き出して、ユーグも少しお手伝いしてくると行って、後にはミカエルとレオンと私が残される。
「レオン、手伝って」
「すでに俺は足止めの魔法は使っている」
「消すための魔法は?」
「まだ様子見なんだ。何かがおかしい気がする」
「ミカエルは?」
「僕もレオンと一緒に足止めをすでにしているよ」
つまり何もやっていないのは私一人らしい。
そういったわけにもいかないか、と思って私が魔法を使おうとしようとした所で、ポンと何かが破裂する音がした。
見ると皆が皆一斉攻撃して、その力もいつもよりも大きかったように見えて、つまり、
「あ、あれ、私の出番がなかった? ……でも」
これで終わりにしては、何だか変な感じがすると私が思っていると、徐々に消えていったその場所で新たに黒い物が膨れ上がる。
どうやら動かなかったのではなく、地面に入りこむようにして力を蓄えていったらしい。
それを見て私は自分の出番があると理解した。
次に、私がやった行動はといえば、
「我思うが故に我あり 祖を起点として扉を開け! “悠然と揺蕩う輝き”」
何色にも染まらない純白の光が足元に広がる。
それをひとずつ踏みつけていった私は、そこで気づく。
「“必殺技”」
嫌なイメージしか無い。
けれど迷っている暇はなく、それを選択する。
「“天空を繋ぐ雷”」
恐る恐るといってみると同時に魔法陣が輝き出す。
キラキラと白い光が、文字がリボン上に重なりくるくると回り出し、私の体がふわっと宙に浮かぶ。
嫌な予感がした。
とてもとても嫌な予感がした。
大事なことなので二回繰り返してみたわけですが、予想は正しく、空高くに私は舞い上がる。
私は悲鳴すら出せない。
だって私は、高所恐怖症だから。
皆がいる場所がだんだん小さく見えてくる辺りで意識を失いそうだった。
というか、これってラスボスが攻撃してくる時に宙に浮かんでいるような感じ何じゃないだろうかと思って、そういえば私は“悪役”だったと思いだした。
その影響なのだろうかと思っていると私の目の前の空間に大きな円が浮かぶ。
それはキラキラと輝き鏡のように見えた次の瞬間、目も眩む程の白い光と空気を裂くような音が響いた。
私は目を開けていられずにその光景を最後まで見届けられはしなかったけれど、その轟音と瞼を通した光が消え失せて薄っすらと瞳を開けると……巨大な穴ができていた。
そこでユーグさんが、
「ベル、ちょっと痛かったよ~」
「ごめんなさ~い」
そう返す私。
こうして一番危険そうな怪物を倒すには成功したのだった。




