とりあえず二人ほど捕縛中
捕縛系の魔法、水属性。
そんなに強い魔法ではないけれど、この魔法は術者の魔力に依存する。
更に一人しか捕縛出来ない欠点はある物の、その代わりとても都合のいい効果があるのである。
それは私が捕縛したい対象へと自動的に追尾する効果がある点である。
但しそれには、その人物の名前が必要であるらしいのだけれど、
「ターゲットは、“シンシア”」
名前を小さく呟いて、最後の一文字の魔法陣に付属された文字を踏みつける。
ふわりとその場所から上った青白い光を放つ文字。
それが円状となり、文字のリボンがくるくると回りながら地面に潜る。
そうしてすぐに私の足元か青い光の魔法陣が滑るように、地面を飛んでいきシンシアの周囲に三つほど並び、その魔法陣を中心に三角形の檻を作る。
輝く光が立ち上り、光の壁を作りあげる。
「よーし、捕縛成功っ!」
「貴方の経験値はそこまで大きくない事は知っているわ。なので、この程度簡単に壊せる……はず?」
シンシアが余裕めいて何かを仕掛けたらしいがその光のベールは壊れない。
ちょっと真剣な表情になっているシンシア。
経験値がどうのと言っていたので私の能力が低いと思ったのだろうけれど、私の体力魔力も含めて、桁違いに大きいそれらを彼女は認識していない。
だからこそ捕縛は成功している。
彼女はその場から逃げられない。
「よし、後はこのままシンシアに触れるだけね。あれ、待てよ?」
そこで私はある事に気がついた。
つまりこの光の壁の様な物でシンシアを閉じ込めたはいいが、この壁をどうやって私は超えればいいのだろう。
多分この上の方まで行くとこの壁は飛び越えられるけれど、
「私、高い所って苦手なのよね」
高所恐怖症という、アレである。
となるとこの壁を壊すと同時にシンシアに触れないといけない。
つまり攻撃と同時にシンシアと触れないといけないような状態でそうなると、
「ここに来て一番初めに使った必殺技を使わないといけないって事に」
自分の腕から炎が出るのも怖いが、そのまま体が操られたかのように突っ込んで行くのも更に嫌だ。
他に何か安全な方法はないのか。
例えば壁の一部を無効化して手を伸ばせる、みたいな?
試しに私はそういった魔法がないのか思い出そうとするが、出てこない。
まるっと消してしまう物ばかりである。
全部消したら、そのまま逃げられるのは確実。
「ど、どうしよう……」
「うーん、動けないからお茶にしよう」
私が悩んでいる傍で、シンシアが地面に座っている。
よく見るとハンカチが敷いてあったがそのあたりはどうでもいい。
そのまま何処からともなく小さな水筒と、クッキーを取り出して、
「いっただっきまーす。わー、さくさくで美味しいわ―」
「……」
私は挑発されてしまった。
こんな風にどうやってシンシアに触れようか必死で考えているのに、捕縛された本人は目の前でその余裕を見せつけるかのようにクッキーを食べている。
完全に私は舐められている。なので、
「レオン、部分的に解除する魔法を教えてよ」
「あー、そうやってすぐに力に頼るのは良くないぞ? どうやって工夫して既存の魔法で対応していくのかが大事で……」
「うぐ、レオンの意地悪ー、きちくー……ユーグさん?」
そこで私はにこやかな笑顔で手招きするユーグに気付く。
レオンが何となく不機嫌になるが、とりあえず呼ばれているので私が近づいていくとユーグが、
「ああいった結界を部分的に解除する魔法を教えて欲しいのかな?」
「はい、是非!」
「じゃあ教えてあげるよ。あの系統は水の系統であり、光の属性にも属しているから……」
そこまでユーグが説明した所で、ごおっと大きな音がして炎の塊が飛んでくる。
それはシンシアを捕まえている結界に当たり爆散する。
だがそれでも結界は壊れなかったけれど、
「一回ですまないなら、もう一回! いっけぇえええ」
「ちょ、マリア、もう目覚めてるの!」
「私もあれから鍛えたからね。今日こそは一矢報いてやるわぁあああ」
そう言って、再び杖を構えるマリアを見ながら私は、
「我思うが故に我あり 祖を起点として扉を開け! “水に眠る悪夢”……ターゲットは“マリア”」
そう魔法を使い、この混沌とした状況で、かつ、むちゃくちゃしやがるのと私の邪魔だったので、マリアの捕縛を私は行ったのでした。




