まず二個ゲット
窓からシンシアを追いかけるように走り出す私。
こちらから宣言して、先手を打とうと計算した私だけれど逃げられてしまった。
なのでレオンにも手伝ってとお願いした私だけれど、
「あー、俺は様子見ているだけだから」
「一日三回までのお約束!」
「……手助けして欲しい時に行ってくれ。善処するから」
「よろしく~」
そうレオンに私は話をしてから、私はとんと教室の床を蹴る。
私が先に開始を合図したというのに、マリアが私の先を行っている。
流石はヒロインと思いながら私も床を蹴って窓の外に。
二階から軽く飛び降りて地面に着地すると同時に、私は魔法陣を展開……しようとした。
私が地面に舞い降りるその瞬間、びゅうっと私のすぐ横を目にもとまらぬ速さで無表情にメイド姿で走っていくランディと、
「いやぁあああああ」
そんな彼女に担がれるように、ウィルが正面を向かされて涙目で叫んでいた。
恐らくは身体強化の魔法を使い、走っているのだろう。
素晴らしい加速度である。
「レオン、私もあんな風に走りたいわ。きっと風が気持ちが良いでしょうね」
「……ベル、瞳がとろんとしているぞ」
「……でも、何でウィルを連れていったのかな?」
そんな風に私が駆けながら疑問を呟いている間に、目の前のマリアのすぐ横をランディが駆け抜ける。
その風圧で、マリアが氷の上でスピンをするかのようにくるくる悲鳴を上げながら回っていたが、それも好機ととらえて私はマリアを追い越すように駆け抜けていく。
ただそろそろシンシアとランディ達を見失いそうな距離にまで離れている。
「仕方がないわね、我思うが故に我あり 祖を起点として扉を開け! “虹の欠片たる炎”」
魔法陣が足元に展開されると同時に周囲の時間が遅くなる。
それでもランディ達の速度はそこまで遅くはならない。
その様子を見ながら、サポート役でもあるレオンに、
「あの二人が対して遅くなっていないのはどうして?」
「俺みたいにベルの使う魔法をキャンセルしているんじゃないのか? シンシアの方は」
「ランディは?」
「あれは人間……としては、規格外だからな」
「素敵な仲間兼メイドちゃんをゲットできたのかな?」
「そうなるな」
「でもシンシアがレオンと同じ能力を持っているの?」
「事象及び概念の消去(弱)って、さっきステータス画面で見ただろう? ベルの方が魔力も威力も高いから、まだいくらかは聞いているんだけれどな」
「その割に速すぎる気がする」
シンシアのあの逃走速度は早すぎる。
そんな疑問に答えたのはレオンだった。それも嘆息しながら。
「ベルのレベルが低いからだ」
「さ、もう一度魔法を使ってみるぞ☆」
このままいくと何だか怖そうな戦闘に連れて行かれてしまいそうな気がするのだ。
なので私は頬笑み、再び高らかな叫び魔法陣を展開する。
丁度その時、ランディ達がシンシアに届いたようだ。
「! 速すぎだわ、貴方一体……」
「ベルの友達でありメイドと執事です。ていっ!」
そこでランディは目を回しているウィルの手を掴み触れさせ、またランディはそれとは別の手でシンシアに触れる。
ただ勢い余って押し倒しているが。
それでも計二人分。
「いたたっ……あー、もうっ、しかたがないわね……はい二つ。残りは二つ、でも貴方達は手伝っちゃ駄目だからね、約束破ったら無しなんだら、ぷんぷん」
怒ったようにシンシアが、上半身を起こして二つの石を渡す。
それを見ながらこれで引き止められている状態だから上手く行けば追いつける、そう私がほくそ笑んでいると、
「残念ね、悪役令嬢ベルネット、私が先にいただくわ」
「! マリア!」
気づけば私の横を越えていくマリアの姿が。
そして後もうすこしというところでマリアがシンシアに襲いかかる。
けれどそんなマリアの拳をシンシアは軽々と避けてから、
「マリアは力不足だから駄目なの。ごめんね~」
「へぇ、それはこれ……きゅう」
そこで変身用の装置を取り出したマリアは、、シンシアに即座に気絶させられた。
つ、強すぎる。
私がそう思っているとそこでシンシアが微笑み、
「じゃあ、今度は貴方一人……だと思うけれど頑張ってね、ベルネット」
凍りついて足を止めてしまった私にシンシアは微笑んで手を振り、再び走りだして……。
余裕の有り過ぎる彼女に、私は不安を覚えながらも魔法を発動させ、そして、
「レオン、一つお願いがあるんだけれど」
そう言ったのだった。




