鬼ごっこの確約
この世界には世界樹と呼ばれるこの世界を支える木がある。
その木の幹から取れた枝から作りあげた杖は一級品の杖となる。
けれどこの世界を支える『世界樹の守人』が、その幹周辺に住まい、守っているが為に普通ではその世界樹本体に近づく事も出来ない。
「世界樹の守人? そんなのもいるんだ」
「んー、それも知らないんだ。……因みに世界樹の張った根が時折海から顔を出していて、そこが今私達が住んでいる場所なんだよ」
「へー、そうなんだ」
「そうそう、そして一般に売られている杖は、その根から伸びた新しい木の枝から作られているの」
この世界ってそうなっているんだ、と私が思っているとそこでシンシアが笑って、
「やっぱりベルネット、貴方は異常だわ」
「え、いえ、あの……」
「貴方は色々と知らなすぎる。そして、この青い石がどれくらい重要なものなのかも、何もわかっていない」
「……私に教えてはもらえないのですか?」
ここまでこうやって話を引っ張り意味深なことを言われてしまえば私だって気になってしまう。
そしてこうやって話しているということは彼女自身誰かに聞いてもらいたい部分もあるのだろう。
更に付け加えるなら、私自身を値踏みしているのかもだが。
そこまで考えた私はそもそも、と思う。
「折角ケーキをごちそうしたのに、こんな意味深に言われるだけなのはちょっと酷いと思います!」
「……そういえばそうね」
「そうなんです」
シンシアがどこか面白そうに笑うけれど、私としてはそう思うのだ。
と、そこでシンシアが握った手を見えるように上に掲げて、ぱっと開く。
五本の指の間に、青い石が四個ほど挟まっている。
それを私達に見せつけてから、
「ちょっとしたゲームをしないかな? 私、いつもマリアに勝利しているくらい強いんだ~♪」
「それは貴方が逃げるのが上手いからよ! 攻撃さえ当たれば……」
シンシアの言葉にマリアが反論するが、そこでほほにシンシアが指を当てて、
「じゃあ、マリアは攻撃されたらそれをすべて受け止めるのかな?」
「……」
「マリアちゃん、負け惜しみはよくないよう~」
「……私はまだ全力を出し切っていないだけ。私が本気を出せば貴方なんてひとたまりもないわ」
「本気を出せない時点で負けだとおもうの♪」
マリアが悔しそうにシンシアを睨むが、すぐにふっと笑い、
「だったらそのゲーム、私も参加させてもらうわ!」
「……なんで?」
心底意外なように、シンシアが首を傾げる。
それにマリアはむっとしたようだけれど、
「そもそもそこのベルネットが関わっているのなら、それに対抗できる私が邪魔するためにゲームに参加するのは当然だわ」
「……マリアは変なものが見えて変なものに操られているけれど、多分、これを持っていても役に立たないと思うよ?」
「それを決めるのは私よ」
「……まあいっか、私が負けるはず無いし。それと私に勝利しても、もらえるのは一人一回までね。一応マリアが入ってきたから保険としてそう入れとくわ。本当は私が負けた場合、ベルネットに全部あげようと思ったのだけれど、残念ね……」
私はなんてことをしてくれたんですかと責めるようにマリアを見る。
マリアは私の抗議の視線を顔を背けて受け流した。
余計面倒くさい状況にされた私は、どうしようかな~と思っているとそこでシンシアが、
「あ、でも、それだと条件がきついわね。じゃあ、ベルネットが私を直接捕まえられたら、手持ちの残りを全部あげてもいいよ?」
追加で私にとてもいい条件がついた。
よし、気が変わらない内にと思って私は、
「それでどんなゲームをするの?」
「単純に鬼ごっこのようなものをするだけ。私が鬼で、後は皆さん。私に触れられたら勝利」
つまり私のほうが、レオンがやる気なさそうなのは置いておくとして、少なくともランディとウィルが私側につく。
一方マリアは、おそらく一人。
ミカエルは様子を見てニマニマしているだけな気がするからだ。
ならば、私の場合3対1で戦える。
「わかったわ、その提案に私は乗るわ。それともうひとつ条件をつけていいかしら」
「なに?」
「意味深に言った話の幾つかを、私に教えて欲しいの」
「それは、んー、まあ、努力はするわ。貴方の実力で話せない場合だってあるし」
「よし、約束ね。というわけで、ランディ、ウィル……そしてレオン、手伝って!」
私がそう叫ぶと同時に全員が動いて、シンシアはもうちょっとゆっくりしていたかったな~と小さくつぶやき、窓から飛び出していったのだった。




