お茶会には、招かれざる客?
あれから、頑張って授業を受ける事、二日。
すでに私は挫折しつつある。
「魔法のお勉強……覚えること多いようぅ」
呻いて私は机の上で溶けた。
すでにここに入るまでの知識は脳内に“インストール”されているらしい。けれど、
「ベルネットさん、シーズニング湖に埋まっていた杖を回収した英雄の名前は?」
「……」
「ベルネットさん、聞いていますか?」
「……ミドリア・カールヘルツ様です」
「よろしい、正解です」
先生に問題を当てられて、私はそう答える。
聞いているのですかと怒った様に歴史の先生には言われてしまったが、それは仕方がないのだ。
“インストール”された知識をひきだすのには、初回の場合時間がかかる。
しかも繰り返し繰り返しその単語を思い出したりするだけで、その度にそれは早くなり私の知識としてようやく定着するようなのだ。
ただそういったものをひきだすたびに体内の栄養が減っていくような気がする。
試しにHPを調べると、1、減っていた。
だがそれも一瞬で回復してしまう。
でも奇妙な空腹感はそのままだ。
これは一体何なんだろう、そう思っていると午後の授業が一つ終わる。
確か今日は珍しくこれ一つだけだったな、と思って私が腕を伸ばしていると、周囲に白い布が舞う。
何事かと思っていると、ランディが私の目の前にやってきて、手を伸ばすと、
「“変換”」
一言呟き、金色の花模様の枠にはめこまれた青い石を空に掲げる。
補助魔法道具のようだ。
補助魔法道具というのは、事前に魔力や呪文などの魔法を石などに込めておける物で、他にも炎を生み出す魔剣などがそういったものに分類される。
ちなみにレオンが使えるカード魔法のカード関係はそれに分類されないらしい。
特殊な魔法で、ああいいったものは個人の資質が影響してしまうので、広くそこそこ一般的なものでなければならない、という定義上、そちらに分類されないらしい。
微妙にややこしい気がするが、それを含めるとマリアのあの変身装備は補助魔法道具とも言える。
そこでランディの足元から白い光の輪が現れてふわりと上に向かって飛んで行く。
同時にランディの服装がメイド服になった。
黒を基調とした短めのスカートにフリルの付いたエプロン。
頭には白いメイドな感じのカチューシャをつけている。
無表情ながら、素材のいい美少女なのでそれはそれで可愛い。
そう思っていると、ウィルが今度は石を掲げ、執事服に変身した。
こちらも黒を貴重とした服で、ベストのポケットの部分に赤い石の飾りがついている。
二人揃って何事か、と思うよりも前に私はランディに、
「ランディ、私もメイド服が着たい!」
「ダメです」
即答でした。
あのふわふわニーソなメイド服が着れるチャンスだと思ったのにそう言われてしまった。
何で、と私がランディに聞くと無表情のまま首を傾げ、
「貴族の令嬢が着るものではありません。これは作業着です」
「く……正論だし。でも着たい。だめ?」
「ダメです」
再びダメと言われてしまった私はショボーンとしていると、そこでランディが銀色の筒のようなものを次々と取り出して立てていき、最後に明らかにランディの体よりも大きい銀色の板を取り出して乗せた。
あっという間に簡易テーブルができてしまう。
そうこうしている内に白いテーブルクロスが舞う。
そういえばさっきそこらじゅうで白い布がフワフワしていたが、今は紅茶やら何やらを楽しんでいる。
私のところが遅いようだ。と、
「今日は3時のお茶会が行われる日だからな」
「レオン……お茶会?」
「そう、執事やメイドにケーキとお茶を出してもらうイベントの日だ」
「そうなんだ……それで何でレオンは私の隣りに座るの?」
「いや、ごちそうになろうと思って」
意外にちゃっかりしているレオンに何だかなと私は思う。
そう思っている内に、私の目の前で焼いたケーキをウィルが取り出した。
「ハーブとフルーツのケーキです。よろしければどうぞ」
「わー、美味しそう」
「妹も、そしてランディも僕も好物なんですよ」
「そうなんだ、じゃあ皆で一緒に食べようよ」
その私の言葉にランディとウィルは沈黙したが、
「一緒に食べよう。でないとメイドと執事を解雇しちゃうぞ★」
「「……わかりました」」
といった理由で私とレオン、ウィルとランディの四人でお茶会……かと思ったら、
「悪役令嬢ベルネット、今日という今日は……」
「あ、マリア。一緒に御茶していかない? 今日はウィルがケーキを焼いてきてくれたんだよ。今は、ランディが紅茶を入れてくれているし、どう?」
「……いただくわ」
マリアを誘うと大人しく椅子に座る。
そういえばこの椅子は何処からかというと、ランディちゃんが何処からともなく量産しております。
そして、もう一人。
「僕もいいかな?」
「どうぞどうぞ」
マリアのサポート役のミカエルが現れた。
なので彼も一緒にお茶会ということに。
そして並べられるカップが、1、2、3、4、5、6、7……あれ?
「一つ多い?」
でも全員がカップを手に持っていて……そこで私は気付いた。
マリアの隣に見知らぬ少女が一人座っている。
彼女はそこで私に微笑み、
「こんにちは」
そう、挨拶をしたのだった。




