私が甘かった
さて、グルングルン腕を回し始めた石の人形、ゴーレム。
これを玩具って言い切ったレオンも含めてあのユーグも含めて、感覚がおかしい。
何この殺人兵器、と私は思っているとそこで、回していた腕を私に向かって振り下ろした。
「我思うが故に我あり 祖を起点として扉を開け! “虹の欠片たる炎”」
唱えるとともに周囲の時間の流れが遅くなる。
だからそれを複数回唱えて、時間の流れをほんの少し送らせて攻撃を避ける。
どんと鈍い音がして、地面に打ちつけられる。
降ろした地面には石の周りに放射線状の亀裂が入る。
ほんの数m先のその光景に、うわぁああ、と私は小さく呟いてから、更に移動する。
ギギギと鈍い音がするが、それはおそらく石を持ち上げている音だろうと思いながらどうしようかと私は考える。
何かの漫画家小説で読んだが、ゴーレムの場合文字に傷をつけて別の意味に~と見た気がする。
でもそんな文字ってこれにはあるのかと私は迷ってから、
「あ、そういえばあの青い石をはめたら動き出したんだっけ。じゃああの石を取り出せば動かなくなる?」
玩具から電池が外れれば動かなくなるように?
そう思って振り返る私。
少なくとも表面にはその石はない。となると、
「背後か、頭の上か、足の裏か……足の裏だけは嫌だなっと」
また私に狙いを定めているので、魔法陣の起動を始める。
それでよけながらそのまま私は迂回するようにそのゴーレムの背後に回る。
そこには青い石は見当たらない。となると、
「頭の上か、足の裏……先に転ばしてしまったほうが良さそうね」
そう思いながら呟く。
次に良さそうな魔法を見つけて、
「我思うが故に我あり 祖を起点として扉を開け! “虹の欠片たる大地”」
言葉とともに、緑色に輝く魔法陣が足元に浮かぶ。
大丈夫、振り返るまでには時間がある。
そう私は思っていたのだけれど……そこでこのゴーレムの頭が、180度回転した。
私は吹き出しそうになりながら、え、どうしようと思いつつ踏んでいくが、
「ま、間に合わな……きっ」
悲鳴を上げかける私にそのゴーレムの腕が伸びてくる。
目を瞑る私。
けれどそこで、ごん、ぽよん、と何か柔らかいものにあたって跳ね返される音が聞こえる。
恐る恐る目を開けると、レオンのカードがそこにはあった。
どうやらその御蔭で私は助かったらしい。と、
「ベル、サポートは一日三回までだからな」
「もうちょっとサービスしてよ!」
「だめだ!」
「けちっ! まあいいわ、これで魔法が完成できる! こうしてっと……我思うが故に我あり、“隆起する大地”」
同時に大地がせせり上がり、それにつまずいたゴーレムが倒れる。
大きな振動を感じるが、上手く倒れたようだ。
だが立ち上がろうとブルブル震えているのを見て、
「我思うが故に我あり 祖を起点として扉を開け! “虹の欠片たる炎”」
もう一度魔法陣を展開する。
それも連続で行っていき、まずは足からだ。
後ろに倒れるように転んだのですぐに見える。
次に頭を見るために魔法陣を展開して時間を緩やかにしていく。
もしなかったならこの体内に内蔵されているとしか思えないので私は焦る。
だがそれは杞憂に終わった。
「あった、頭の上があの魔法陣になっていたんだね」
私は急いで近づきそれを一つ引き剥がした。
ころんと転がる青い石。
ひとつ取ればとりあえず動かなくなるだろう、そう私が考えたのは甘かったのかもしれない。
私の目の前でゴーレムの顔がゆっくりと上がり、
「サブモードニキリカエマス。コウゲキソクドカソク」
そう、ゴーレムが告げたのだった。




