弱みについて一言!
綺麗な年上のお兄さんにお願いされたら断れない、これ、豆知識な。
という事で、私は促されてお兄さんの反対側の席に座る。
ちらりとそのお兄さんを見上げると、お兄さんは優しげに微笑む。
ど、どうしよう、私、どうすればいいのかな?
そう緊張してしまう私にお兄さんは、
「君は……ああそうだ、先に僕が名乗った方が良いよね。僕の名前は……ユグドラシル。ユーグと呼ばれる事が多いかな」
「そうなんですか。ユーグさん」
「ユーグで良いよ。さんづけで呼ばれると、何だか変な感じがしてしまうんだ」
お兄さん--ユーグは、どうしてだろうねと笑う。
何だかこの人を見ていると自然と笑顔になるな、と私が思っていると、
「それで、君の名前を聞いてもいいかな?」
「あ、は、はい、ベルネット・マクシミリアンといいます。皆からはベルと呼ばれています」
ついユーグに見とれていた私は、焦りながらそう答えると、
「ベル……何かを知らせる、そんな意味があるように見えるね。君は、僕にとっても何か大きな変化をもたらす、そんな存在なのかな?」
「え、えっと……良く分かりません」
突然不思議な事を言いだしたユーグに私はどう答えればいいのか分からず、素直にそう答える。
それにユーグは頷き、
「そうなんだ。それで、何か僕に聞きたい事ってあるかな?」
「そうですね、名前がユグドラシルというのが“不思議”かな」
「ああ、この世界を作る、この世界の中心の大樹と同じ名前だからね」
「はい、そのユグドラシルの根の上に、大陸が、島々が、海が広がっている……そんな世界でしたよね」
ついそう答えてしまった私に、ユーグは目を瞬かせて、
「まるで違う世界から来たような言い方だね」
「え、ええ、そうですか?」
「冗談だよ、ただ連想された言葉だろうとは分かるよ。でも、そのまま聞いているとそういう風に聞こえるなっと思って、面白いなと」
「そ、そうですね……」
そう私は答えながらもぎくりとする。
だって私はこの世界の人間ではないのだから。
そしてこの人は何でこんなに鋭いんだろうと警戒しているとそこで、
「ごめんごめん、そんな風に警戒させるつもりはなかったんだ。……やっぱり僕の冗談は面白くないのかな? 感覚がズレているとよく言われるんだ」
「そうなんですか」
「うん。えっと、僕はこう見えても歴史には詳しいんだ。もしよかったらそちらの方の話をしようか」
「ぜひ、お願いします」
「ではこの世界の成り立ちについて、お話をしようか。確か今はそのあたりの伝承の様な物は、授業で全部カットされてしまっているんだよね。……ちょっと寂しいかな」
そう笑ってユーグは話しだした。
☆★☆---------------------------------☆★☆
この世界には、初め、二人の神様がいたという。
その神様は初め間違えて、とても広く世界を作ってしまった。
これではとても管理できないという話になり、まず初めに一本の木を植える事にした。
その木はすくすくと育ち、やがて大きな木になりました。
この木の大きさならば、管理できるだろうと神々は言います。
なのでこの木が張った根っこの部分の広がりを“世界”にして、それ以上先は何もない場所にしました。
次にこの木を中心に、海を、川を、山を、植物を、動物を作っていきます。
島々の中には、希に世界樹の根から木が生えてくる事もありましたが、概ねそんな世界が広がっていました。
こうして世界を作った神々は二人で今度は自分に似た存在を、そして自分達の対になる存在をつくりあげたのです。
☆★☆---------------------------------☆★☆
そこまで話して、ユーグは唐突に語りを止める。
歌を聞く様な夢心地で聞いていた私は、何でだろうと思っていると、そこでユーグの視線が私以外の方に向いていると気付く。
それは私の後ろを見ているようだったので、私は振り返ると、
「! レオン、何時の間に!」
「俺は王子だから免除になったんだ。それで……お前は何だ?」
レオンは私が見た事のない様な真剣な、そして深刻そうな表情で、射抜くようにユーグを睨みつけながら、そう告げる。
ちょっと失礼だよと私は言おうとした所で、ユーグが更に笑みを深くして、
「貴方が何なのか、ベルに教えてもいいですか?」
「……」
沈黙するレオン。苦虫を噛み潰したかのような顔だ。
というか、このユーグは一体レオンのどんな秘密を知っているのだろうと思う。
弱みがあるなら、ぜひぜひ私に教えて欲しい。
あの厳しい魔法教育はもう関わり合いたくないのだ!
そこでレオンが私の手を掴み、
「帰るぞ、明日の予定も含めて皆に話しておきたい事があるし」
「で、でも私ユーグと……」
「あ、僕は気にしていませんから。もしまた何か聞きたい事があったら来て下さいね。大抵ここにいますから」
「ありがとうございます」
私はレオンに引っ張られながら、そうユーグにお礼を言ったのだった。




