勝利した私は、暇になってしまった
再び薄くなった魔法陣が上書きされてまばゆい光を放つ。
緑色の光の中、私は動き出す。
彼女は……エリスはまだ気づいていない。
好都合なのだ、この魔法は。
透明と言ってもダイアモンドの輝きに目を奪われて、その反射で視界が覆われる。
そしてこのダイアモンドの剣を抑えるために、水晶の剣をエリスは連続して出すしか無い。
ならばあの場所から更に動きにくいだろう。
だから、動かない的に狙いを定めるなら……攻撃が当てやすい。
そう笑いながら、以前、レオンに向かって使った魔法を使っていく。
あの時はレオンに避けられて反撃を食らってしまったが、あれはレオンの動きが素早すぎるのだ。
何だあの反則的な能力は。
その能力を私にも寄越せと。
「ベルにはまだ早い」
その一言で私は切り捨てられた。
絶対に許さない、そのうち仕返ししてやると思いながら丁度文字を踏み終える。なので、
「我思うが故に我あり、眠りの水」
対象はああそこにいる彼女!
私がそう念じると、彼女の頭上に光の魔法陣が現れて、さらさらの木の葉のようなものが水のように降り注ぎ……消えた。
同時に、エリスの攻撃も止む。
どうやら上手くいったらしい。
そう思っていると私の攻撃のダイヤモンドの剣も消え失せ、その先には倒れているエリスの姿がある。
10、9、8……審判が数字を数えていく。
起きませんようにというお願いが通じたのか、彼女は目覚めない。
「勝者! ベルネット・マクシミリアン!」
審判らしいおじさんが、そう叫んだのだった。
その後、やってきた執事らしきお兄さんに、エリスは連れて行かれた。
後ほど私にご挨拶に来るらしい。そして、
「あー、ベルネットは、この時間の単位はクリアだからこれからは好きにしていいぞ。次の挑戦者は誰だ!」
と先生に言われてしまった私。
今日の授業は、この挑戦を受ける、受けないというものがあるらしい。
ちなみに勝利すると成績の点数が高くなるらしい。
やったね。
そしてランディは、挑戦を受けていないのでその場に居残りだ。
私もぼんやり様子を見ていようかと思ったけれどランディに、
「ここの図書館には、色々な面白い本があるみたいですよ?」
と言われてつい、図書館に来てしまったのだ。
中学の図書室とは比べ物にならないというか、建物が別にあった。
いろいろな本に出会える図書館は、何だかわくわくするなと思って中に入る。
司書の人以外は、人があまりというかほとんどいない。
いる人も何か調べ物をしているようだった。
授業中だから当然なのかも、今ここにいる人達は課題の資料を探しているのかなと思って歩いて行く。
奥の方に向かって行くと、やがて、人気がほとんど無くなる。
うーん、人のいない場所はちょっと怖いかなと思いつつ、窓が見えて外の光が見える。
だからあそこまでいってみようと私は歩き出す。
まるで、何かに引き寄せられるように。
その窓の側には四人が座れるテーブルと椅子が幾つも置かれていて。
その内の一つに、その人は座っていた。
人の気配がしなかったから私は気づかなくて、
「やったー、窓の側までつい……ええっと、すみません」
「いえ、大丈夫ですよ」
つい謝ってしまったのは私が恥ずかしかったからだ。
まさかそこに人がいるなんて思わなかったから。
その人は私よりもお兄さんらしい人で、私よりも白い銀髪に緑色の瞳をしている、何処か不思議な雰囲気のある優しそうな人で。
「今は授業中ですよ? サボっていいのですか?」
「えっと、私は挑戦に勝利したので……」
「なるほど。もしかして新入生かな? 今まで見かけたことはなかったし」
「は、はい」
何だかこのお兄さんを見ていると緊張してしまう。
そう私が思っていると、彼がくするとおかしそうに笑い、
「そんなに緊張しないで。あ、もしいま暇なら……話し相手になってもらえるかな?」
そう、不思議なお兄さんは微笑みながら私に告げたのだった。




