異世界召喚は待ち時間三分より
インスタントラーメンのカップにお湯を入れて三分。
三分間が測れる水色の砂時計をひっくり返して、砂が落ちるのをそれはもう、恋焦がれるように私は待っていた。
この短い時間だが、待っていると意外に長く感じてしまうのは何故だろう。
そんな事を考えていた私は、突如目の前が暗転する。
ふっと暗くなったかと思えば、私は真っ白い空間に一人放り出される。
「……何が起こった。あれ、私、確かインスタントラーメンを食べようとしていたはず……」
「その認識で間違いないだろうね」
そんな何処か笑うような男の声が聞こえた。
私は即座に周りを見回す。
けれど人影は何処にも見当たらない。
次に上を見上げる。
何処までも真っ白だった。
そして私は自分の立っている地面を見るが、白い地面が連なっているだけでそこから顔がでてきたりしゃべりだすわけではない。と、
「ははは、そんな風に探しても僕は見つからないだろうね」
「性格が悪そう」
「よく言われるよ。それで君にお願いがあるんだ」
「嫌だ」
「即答する事はないと思うけれどね。どの道、強制召喚なんだし」
「ええ! 私、インスタントラーメン作りかけだよ!」
「のびる前には帰してあげるよ。それでお願いだけれど、聞いてくれるかな」
「……強制召喚なんでしょう? 面倒だから短めでお願い」
長い話しを延々と聞かされても眠くなるだけなので、私はそうお願いする。
それにその声の人物は小さく笑って、
「では、まず僕は君達にとっての異世界“スフィアクロス”の神だよ」
その世界の名前は何処かで聞いた事がある気がした。
なんだっけと思っている間に、その神だか何だかの話は続いていく。
「そして君にはその世界で、悪役令嬢ベルナデットとなって“世界の秘密”を探って欲しい」
「何で悪役令嬢? 普通に貴族令嬢とかそういうので良いんじゃないの?」
「いや……失敗しちゃって」
「? 失敗?」
けれどその謎の声はそれ以上特に何も言わなくなる。
少しくらいはこちらの質問にも答えろよと心の中で毒づく私にその声は、
「それに悪役令嬢だと、正義だけをしなくていいという面もあるから動きやすいんだ。もうあまり時間が無くて、手段が選べないんだ」
「ふーん、その“世界の秘密”が分からないとどうなるの? まさか世界が消滅するとか?」
「うん。大正解」
「ちょ、ちょっと待って、それが正解だとしたら……私はもし巻き込まれたらどうなるの?」
「あ、自動的に元の世界に戻れるよ。その点は大丈夫」
「それは信じていいの?」
「うん、これで安心してもらえたかな」
「あともう一つ聞きたい事があるわ。その悪役令嬢になるとして、その人物の赤ん坊の頃からするの?」
それはそれで面倒だ。
けれどそんな私の不安はすぐに解消された。
「他の人たち全員の記憶を操作して、君という存在を作りあげてあるから今の君と同じくらいの年齢からはじめられるよ」
「そうなんだ、それはまあ良かったかな」
「という感じで良いかな。後はサポート役が説明してくれるはずだよ」
「? そうなの?」
「そうそう、そんなわけでよろしくね、冴月実紅ちゃん」
何で私のフルネームを知っているんだろうという疑問が私の脳裏によぎった。
けれどすでにその時には、私は全く別の場所に立っていた。
「……何処、ここ」
見覚えのない、お姫様が住んでいそうなその部屋に一人残された私はそう呟いたのだった。




