ただいま、魔法の練習中
レオンに連れられて私は魔法の練習にいやいや向かう。
寮の近くにあるお花畑を通りすぎて、森のような場所を更に歩いて行くと突然視界が開ける。
綺麗に長方形に区切られたような、踏み固められた剥き出しの地面が広がるグラウンドがそこにはあった。
そのグラウンドと森との境目には棒のような石の柵が並べて埋めてある。
近づいてみると、その石には一筋の切れ目のようなものが有り、そこから見えない壁のようなものが生じているらしい。
ここで魔法の練習をした時に外に飛び火しないように、だろうか。
そう思いながら私は周りを見回すと、人っ子一人いない。
上級生は授業中で、一年生は寮にいるか、あるいはマリアを捕らえに走り回っているのかもしれない。
未だに時折、爆音が聞こえるのだから。
それについては深く考えるのをやめて私はレオンとともにこのグラウンドの中央辺りににやってくる。
理由は、私を中心として放射状に発動する魔法も、今回練習として使うからだそうだ。
「まず初めに、このダンス魔法について簡単に説明する。正確には俺もそこまで詳しく知らない、というのが実態だ」
「そうなの? じゃあ何で私のサポート役をレオンはしているの?」
「……色々と事情があるんだよ。そもそも俺の管轄じゃないし。それでまず、魔法陣を起動させる『我思うが故に我あり』だが、これはまず自己を定義することでその人物を起点として魔法を起こしますよ、という意味で唱えるわけだ」
「あれ? でもこの前は魔法を使う時最後にもう一度それを唱えたよな……」
「それは、始りと終わりが“同じ物”、つまり始りと終わりをベル自身の定義した起点に繋げるためだ。それを唱えた後に、浮かび上がった文字が円状になって、ベルの周りを回り始めただろう?」
レオンに割れて私はそういえばそんな感じだったと思い出す。
その後の必殺技があまりにも恐ろしすぎて、すっかり忘れていた。
そんな私に更にレオンが説明していく。
「そうやって始まりと終わりを繋げて円を作ることで、そこに通された魔力が一回で出て行かずに繰り返し円の中で廻ることで加速されて、“魔法”を形作るんだ。そしてベルの場合魔力が強いから、短時間で魔法が具現化して発動する」
「そうなんだ、そして確か私の固有能力は魔法発動時に周囲の時間が遅くなる、だっけ」
「そうだな、それに素早さも桁違いに大きいから、魔法さえ発動してしまえば相手に遅れを取ることはあまりないだろうな」
今の話を聞いていて、魔法に関しては相手よりも先手が取れて有利らしいと知る。
その点に関してはこの魔法がいいなと思いつつ、そこれレオンのカードの魔法を思い出して、
「でもレオンのカードの魔法のほうが速いんじゃない? だって私よりも呪文が少ないし手間がかからない」
「あー、このカードの魔法は、この世界でも特殊な魔法に近いから、ベルは使えない」
「そうなの?」
「正確にはカードを作れないから、諦めた方がいいぞ。これは珍しい魔法なんだ」
とレオンが説明するので、そっちが楽そうなのになと私は小さく心の中で毒づく。
けれど、ここで愚痴っていても仕方がないので、
「それでその魔法の威力ってどうやって制限するの?」
「意識的、無意識的な魔力の制御によるな。例えばこの前の必殺技だが、本当はあの程度の威力じゃないはずなんだよな。あんなに“弱い”はずの魔法じゃない。ベルの魔力の大きさを考えない場合でも」
「……つまり私は無意識に手加減していたってこと?」
「そうだろうな、誰かをボコボコにしたくないというベル自身の無意識下の感情や、初めて魔法を使う戸惑いがあったんだろうな。そしてそういった部分も含めて、マリアはそれを敏感に感じ取って引いたし、好敵手認定したんだろうな」
「……嬉しくない」
確かに人は傷つけたくないというか、いきなり目の前の人を殴れと言われても思いっきり殴れるような性格ではないと、私は自分を認識している。
だが、それ故に手加減されていると思って別な意味で気に入られて戦闘を仕掛けられるのは、はっきり言って、お断りだ。
かと言ってこれからもあのヒロインにある意味気に入られてしまった私は戦闘を仕掛けられるのかもしれないので魔法は必須になる。
あの時引かせるように戦っても、意味なかったじゃんと私は心の中で涙した。
けれどここでそう過去を嘆いていてもしかたがないので私は、
「レオン、それで魔法を教えて」
「そうだな、じゃあこの前と同じ炎系の魔法をまた試してみるか」
そう私は言われたので、この前と同じように、
「我思うが故に我あり 祖を起点として扉を開け! “虹の欠片たる炎”」
同時に地面に光り輝く魔法の円陣が浮かび上がったのだった。




