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ある科学者の夢

作者: 朝野りょう

なんちゃってSFです。

SF好きの人、読むのはやめておきましょう。

 

 海と陸をもち様々な生命が存在する惑星。

 そこには科学文明を発達させた二足歩行生物である人類が繁栄を誇っていた。


 ある時、惑星へ小惑星が接近していることが判明する。

 小惑星が衝突すれば、惑星の環境は劇変するだろう。その後、生命が生き残ることができるのかすら危ぶまれる。

 小惑星の軌道を変える試みが何度もなされた。

 しかし、それはことごとく失敗した。

 各国では極秘裏に核戦争用シェルター設備を強化し、持てる科学の叡智を注ぎ込み地下施設建設を進めた。

 最期の一ヶ月、各国は小惑星の軌道変更に成功したことを大々的に発表した。

 小惑星の接近を認めつつも衝突はないとしていたが、不安を煽る報道は後をたたなかったためだ。

 そして小惑星が接近する日を発表すらした。大きな大きな流れ星が空を横切るだろうと。


 その日、人々は空を見上げ、惨劇が星を襲った。


 その日から惑星は雲に覆われた。

 小惑星衝突は核爆弾など比較にならない程の威力を示した。

 地表はおそらく地獄のようであっただろう。

 衝突の衝撃で命を断たれたものは幸運だ。厚い雲による闇が世界を覆い尽くし、活発化した火山が噴火し降り注ぐ灰がすべてを地中へと消し去る。マントルが跳ね、海は狂気と化した。


 救うことのできない人々の叫びに耳を塞ぎ目を閉じ、地下施設の人々はただ沈黙した。

 他に何ができただろう。


 それから惑星には長い冬が訪れた。

 世界中に造られていた地下施設との連絡はひとつ、またひとつと途切れていった。

 そんな中、この施設は永く人類を繋いだ。施設の規模が大きかったこと、直撃をまぬがれたこと、様々な要因があったのだろう。

 新しい世代を産み、人類が未来へと繋がるかに思えた。


 しかし、数千人を抱えていた施設も、今では数十人を数えるのみである。遠からずこの施設は無人となるだろう。

 数千人が生きていけるだけの設備が正常に稼働しているというのに。


 ここに残った人々は、遺伝子に手を加えられていた。

 そのため、強く逞しい肉体と素晴らしく機能する頭脳を持つ。そして、生物の持つ繁殖能力は低下していた。

 遺伝子的になんら問題がないはずであるというのに、人の力の及ばぬ何かが人類を絶滅させようとしているかのようだった。


 我々はクローンによって人を増やすことを試みることにした。

 まだ氷に覆われた地表に種子をばらまき、クローンで育てた家畜動物を地表に放つ。それらがいつか命として芽吹くことを願い。

 残された時間が少ない我々は、地表に人が暮らせる環境となる未来を予測し、未来にクローンの人類を誕生させるよう環境を整えた。

 細く永く永く続くようにと施設を改造して。


 どれ程の時が過ぎたのか。

 地表に日差しが戻り、緑が繁殖し、生命が育まれる環境が整った。そうして、ゆっくりと稼働を再開した施設の一部が数千人というクローン人類を生み出した。

 食物や家畜も同様に。

 

 一部の人々は施設の中で生活することを選び、一部の人は地表へ出ることを選んだ。

 施設の中では数世代しか続くことができず、施設は完全に人の姿がなくなってしまった。

 機械の一部となり存在する自分以外には。

 人類存続を見届けるため、自らを機械と化した自分の存在を知る者はいない。

 永く永く稼働し続けた施設も、あちこちの障害をなおすこともできずいづれは停止することになるだろう。

 人ですらなくなったというのに、誰一人いない空間でただ生きている人々の情報を収集することに固執し続ける。

 己の成したことの結末を見たいと思うのは業というものなのだろう。

 

 地表に出た人々は、徐々に人口を増やしていった。

 再び、過去の人類が手に入れていた文明を花開かせていく。

 手の届かないそれを、誇らしい思いで見つめる。

 これで人はこの星で生きていける、と。自分は成功したのだと。


 しかし、人が増えれば争いもまた発生する。

 国が起こり、小競り合いが繰り返された。

 大きな戦争が各地で起こり、急激に人口が減少した。

 繁殖能力はまだ低く、戦争による死者の数に到底追いつけるはずもなかったのだ。

 戦争をおこせば勝っても国が消えることを学んだ人々は、戦争をすることに慎重にはなった。

 だが、地表から争いがなくなることはなく。

 地表の人々もゆっくりと衰退への道をたどり始めていた。


 何がいけなかったのか。

 どこが間違っていたのか。

 なぜ繁殖能力は本来の機能を回復できないのか。

 それが遺伝子を操ろうとした人への罰だと言うのか。

 地表に生命があふれ活気を取り戻しているというのに、人は滅びの道しか選べないのか。

 まだ、あきらめきれないでいる。


 そんなある日、黒髪の女性を地表に発見した。

 紫外線も弱く地球の軌道周期すら長くなって久しいというのに、黒髪に黄色い肌を持つ人の存在に驚く。

 どこか他所のシェルターの生き残りがいたというのだろうか。

 だが、黒髪はただ一人であった。

 なんとか虫型を送り込みその女性の遺伝子を採取する。

 その調査で判明したのは、彼女が古代人であるということだった。遺伝子操作された形跡が全くない。

 多少、頭の悪そうな遺伝子ではあるが、その原始的遺伝子に一縷の希望がわき起こる。

 我々が手を尽くしても叶わなかったものが、そこにある。

 自分の手の届かない何かが起こした奇跡。

 時空を超えたのかその一人の女性の遺伝子は、衰退することなくこの世界の人々の血の中に溶け、その裾野を広げていった。たった一人の遺伝子がゆるやかに世界を変えていく。


 国家間の争いは絶えない。

 だが、人類は再び繁栄への道をたどり始めた。

 それが神の思惑であるのか。


 いつしか自分を人を越えた存在と思っていたが、所詮は一介の人のなれ果てにすぎない。

 自分勝手な思いを抱き、それを実現したいと望む。

 ようやく施設は稼働を止めようとしていた。

 自分の行いが正しいことだったのか、誤ったことであったのか。

 だが、その判断が何になるだろう。

 私が消えても世界は続いていく。

 人々が営みを続けていく未来を思い描きながら消えていくことは望外の喜びだ。

 遠い記憶の彼方にある同志達も喜んでいるだろう。

 己に人としての感情が残っていることに驚く。

 人は最後まで人でしかなく、そして最後まで人でいられるのだ。


 施設は静かに停止した。




自分の小説の世界背景を書いています。

作者の自分用メモって感じなので、多少おかしな箇所があってもスルーしてくださると嬉しいです。

m(_ _)m

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― 新着の感想 ―
[一言] 竹宮惠子先生の名作『地球(テラ)へ』、あるいは星新一先生風? いろいろな作品のオマージュ、パクリwみたいな気がします 逆に既成概念に捕われない自由な発想も大事ですね ラストは『南極物語…
[一言] スルー! これだけを書きこんだら、 (一言には必ずひらがなを入力してください) と、言われた。
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