証拠

「ね」

「ん？」

「私のこと、好き？」

「……好きだよ」

「嬉しい。もっと言って？」

「…………好きだ」

「声小さいよ……」

「だから…………好きだ」

「なんで間が空くかな」

「何度も言わせんな……恥ずかしい、だろ」

「何度聞けたって足りないくらいなのに」

「なんでだよ。俺、そんなに足りてないか？」

「いつでも愛されてるって思いたいの」

「言うだけでものすごく気力消耗するんだけどな」

「面倒くさいって言葉が出ないのが嬉しいよ」

「うるせーな、お前に手間惜しむ気はないけど、恥ずかしいのは勘弁しろよ」

「じゃあ、もっと。ぎゅってして」

「こんだけがっちりつかまえてて、まだ足んねえの？　痛くないか？」

「平気。声とか鼓動とか、直接伝わってくるの好き。近ければ近いほどいいし、愛されてるなってすごい感じるから」

「いいよ。そうしていいって言われるのは……俺も、嬉しいし」

「くる、し……けど、しあわせぇ……」

「お前さ、前半分は口に出すなよ。緩めろってことならそうするけど」

「ダメ」

「……いつまで締め上げてりゃいいんだ？」

「ん……ずっと？」

「無理」

「いつでも愛されてるって思いたいって言ったのに。イジワルだなあ」

「……さすがに文字通りずっとは一緒にいられないんだけど」

「愛されてる証拠をいつでもほしいんだけどな」

「そりゃもう分かってる」

「お腹が大きくなったら、黙るかもね」

「オイ」

「イヤ？」

「イヤなわけないだろ」

「じゃあさっそく」

「待て待てちょっと待て」

「どうしたの？」

「どうしたのって、まずは心の準備ってやつをだな……」

「可愛い、照れてる」

「うるさい。勢いで好きな子を傷つけないか心配なんだよ。俺色々と雑だし……って、どうした、固まって」

「今、すっごく、きゅんってした……」

「は？」

「自分から好きって言ってくれたの、初めてじゃない？」

「そうか？」

「やっぱり大好きー！」

「うわ！　当たってる当たってる！」

「当ててるからその気になればいいよ！」

「くそ、主導権よこせよな！　徹頭徹尾振り回しやがって！」