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嘘つき魔王  作者: 氷純
魔王と世界 魔王は世界 魔王の世界

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五十四話 追っ手

「どうだ神様! 素晴らしい見せ物でしょ!? あんたが用意した私の頼れる味方はみんな裏ぎったよ!!」


 私は何を当てにしてたんだ。

 この世の者はすべからく、今敵か、これから敵か、自分だけ。

 とっくの昔に解ってたはず。

 一人で生きて、一人で為して、そして死ぬ。その覚悟は死ぬ前に誇りにしたはずだ。


「見てるだけならいなくて良いよ。けど、お前が手を出したらこの様だ!」


 呪ってやる。祟ってやる!

 この身が朽ちて果てようが地の底から怨嗟の声を届けてやるから!!

 全智無能の神様め。お綺麗なモノしか写さないその瞳に泥水差してよく見てろ!



ーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 魔力を押し退けて迫る物を察知して私は即座に岩の壁を生み出した。

 何かが岩壁にぶつかる硬い音がする。


「お邪魔虫、ぬりかべ」


 球形魔法陣を展開して生み出した水晶の壁を岩壁と入れ替える。

 地面に落ちていたのは何本かの矢だった。長さや大きさが揃っていない。


「傭兵団、もしくは山賊ね」


 呟きつつ周囲を見渡す。木の陰にでも隠れているのか敵の姿は見えない。


「牛頭は動かないでね。手元が狂うといけないから」


 臨戦態勢に入った私の命令に牛頭の反応はない。


「ハイとか了解って言いなさい」


 そこまで厳密に動かないでほしい訳ではないの。

 漫才みたいなやり取りをしつつも私は魔力を掌握し全方位を警戒する。

 経験上、こういった状況は長丁場になることが多い。


「面倒だから景気良く、四方八方燃やしちゃえ!」


 火の魔力を選択的に集めて私達を囲む火の輪を作り、それを一気に広げる。

 次々と落ち葉が乾き燃えていく。

 煙が辺りに漂い始めたのを見計らい、私は水の魔力で円形魔法陣を描く。

 すぐさま発動すれば濃霧が立ち込めた。

 視界が完全に隠されたので敵も私達を視認できないだろう。


「……牛頭、今の内に逃げるよ」


 囁くと樹木とは思えない速度で牛頭が動き出す。

 何度体験しても信じがたい速さで森を駆け抜け、事態に気付いた襲撃者が対応する前に振り切った。

 しばらくしてようやく元のスピードに戻った時には小さな山を一つ越えていた。


「最近、多い」


 牛頭がぼやいたのに私は頷いた。

 村長といる間は騎士団に襲撃を受けていたけど、別れてからは傭兵団に付け狙われている。

 どうやら私の似顔絵に金額の書いた紙が出回っているらしい。美人画というやつだろう。

 その金額は一家族が一生遊んで暮らせる程だから、一目本物を見たいと男達が血眼になって私を追いかけている。


「モテすぎるのも困りものよね」

「自分、モテる。魔王、付録」

「言うねぇ、このイケメンが」


 正直善し悪しが分からないけどね。木だし。

 とはいえ、夜討ち朝駆け奇襲に強襲と手段を選ばない賞金稼ぎにウンザリしているのは牛頭も同じだろう。

 狙われているのは私だけだから置いて行かれても文句が言えない。


「少なくとも魔物なら私を傷付けないのにね」


 人間の方がよっぽど危ない。

 あの傭兵達を雇えれば何かと使い道もあるけど、村長に旅費としてお金をかなり渡したため金欠だった。

 戦っても圧勝できる実力差があるものの、下手にそれをすると賞金額が上がって強いのがやって来そうだから自粛している。

 もう手遅れかもしれないけど。


「魔王、『暁の鷹』、潰した。原因」


 やっぱり、そうだよね。私もあれは残党だと思ってたのよ。

 でも、水浴びしている所にぞろぞろと現れたあいつ等が悪い。

 私も恥ずかしかったから大魔法連発して地形が変わったけど、不可抗力よ。

 最初から私を狙っていたようだから結果オーライというやつだ。


「ヴェベストロー平原には明日に着くのよね?」


 牛頭の非難に無視を決め込んで私は話を変えた。

 平原という遮蔽物のない場所だと不利になりそう。

 敵をすぐに発見できるから奇襲は受けにくくなるだろうけど、囲まれたら戦わざる得なくなる。


「いざとなったら飛んで逃げようか」


 すっかり慣れてしまっているから飛ぶのは難しくはない。

 どうせズボンだ。少し大きめだけど心配する程じゃない。


「問題は騎士団と出くわした場合だね」


 空を飛んだ所を一度見られている以上、対策は立てられているだろう。

 ベリンダまで加わっているから私と牛頭では勝ち目がない。

 私も策をいくつか準備してはいる。

 それでも騎士団を相手にしながらでは策を使う前に押さえ込まれるだろう。


「平原に入り次第、可能な限り早く天魔と接触を図るべきね」


 天魔の庇護下に入れば騎士団も迂闊には手出し出来ないはず。

 天魔自体が強い上に知性体の魔物が多く集まっているから尚更、かなりの戦力になる。

 私は騎士達と遭遇した時の作戦を考えることにした。


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