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嘘つき魔王  作者: 氷純
カーリンとクルトの生死
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四十三話 開発

「つまり、カーリンが使った魔法陣は術者の命を代償に他者を蘇らせる物なのね?」

「あぁ。一日につき一歳成長する。記憶も同様だ」


 私が書き写した蘇りの魔法陣を片手に村長が言う。


「ただし、術者の記憶は古い物から一日づつ消えていくようだ」


 村長が言うのにはこの魔法陣はどこにも存在しないオリジナル。

 鮮血の子が忌み嫌われる理由は命を扱う魔法を生まれながらに知っているからだそうな。


「カーリンが扱える魔法陣は恐らくこれだけだ」

「彼女、魔力を掌握する詠唱をしたけど?」


 あのずるい魔法。


「儂が以前、魔物相手に使った詠唱だな。いつの間に……。」


 あんたの仕業か!

 胸ぐら掴んで怒鳴りつけてやりたい。子供になんて危ない物を教えるのよ。

 言ったら私が教えてもらえなくなるから言葉を飲み込む。味は最悪。胸がムカムカ。


「クルトは何歳なの?」

「今年で十五だ」


 今日で既に二歳だから記憶を完全に取り戻すまで残り十三日になる計算ね。

 カーリンの余命も二週間切ってるのか。


「となると十日くらいで魔法を教えてくれるの?」

「基礎中の基礎だけなら何とかなるだろう」


 私を伺うように村長が見る。

 心配しなくても契約破棄にはならないよ。

 私も基礎が精々だろうと思っていたから問題ない。


「なら早めに始めましょ」


 私は村長を促して家の外に出た。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 交渉成立から十一日が経った。


「これが魔力隠蔽」


 私は本に書いてあった図を思い浮かべて魔力で作った魔法陣に描く。

 それを発動してみると魔力が感知できなくなった。

 ……術者の私ですら魔力が感知できなくない。


「隠蔽の術式が大きすぎたようだな」


 村長が腰に手を当てて原因を言う。

 言われなくても分かる。失敗したのは私だから文句も言えない。


「難しいね」


 だから素直に落ち込んでみた。

 しかし頭の中では術式の大きさを計算し直す。

 諦めが悪いのは美徳なのよ。

 そんな私に対して村長は首の裏を掻いて呆れ顔を見せる。


「天才と呼ばれる魔法使いが一生かけてするもんだ。新たな魔法陣の開発なんてのは、な」


 私は五日間で既存の魔法陣を全て扱えるようになった。

 魔法使いが数年かけて覚え、正常に作動させるのにさらに数年かかるらしいので驚異的なスピードとのこと。

 魔法陣を構成する隠蔽などの効果図は私にとっては複雑な漢字を覚えるのと大差がなかった。

 けど、魔法陣や効果図の位置と大小で範囲や威力が変わるのが問題になった。

 おかげで開発が進まない。


「無理に魔法陣を開発せんでも、既存の魔法陣を使えばよかろう?」

「駄目ね」


 どの魔法陣も構成が単純なのよ。

 技術として広める内に簡略化が進んだのだろう、それは良い。

 でも戦闘に使えば攻撃の範囲や効果、威力までも相手に悟られてしまう。

 軌道が読めない分、今まで使っていた単純な魔法より避けにくいし複雑な効果を出せるけど手の内を晒す欠陥品。

 私は相手に対策を取らせない攻撃方法が欲しいのよ。

 再び隠蔽の効果図を組み込んだ魔法陣を水の魔力で描く。

 足下に広がる青い魔法陣、これを隠蔽できればいいけど理論上どうしても無理なので諦めている。


「明日が本番だ。ほとほどにしておくように」

「村長こそ、ちゃんと寝ておきなさいよ」


 村長が家に入ったのを見て、私は描きかけた魔法陣を消去する。


「実は新魔法陣は幾つか完成しているのでした」


 効果を悟られない魔法陣として私が考えたのは二通り。

 村長の前で練習していた、本命の魔法陣を別の魔法陣で隠蔽する平行発動。

 二つの魔法陣を維持するのにかなりの集中力がいるので使いこなすのは至難の業、戦闘時には激痛で神経が削られる私には到底扱えないだろう。

 周りに誰もいないのを確認して、私は魔法陣を展開する。

 私を囲むのは円ではなく球の魔法陣。

 見ても理解できない魔法陣を作ろうと思ったらこうなった。


「それにしても、調子に乗りすぎたなぁ」


 魔法陣の平行発動は両手で別の絵を描いているようなものだから、どうしても細部が甘くなり誤作動する。

 けれど球形魔法陣は構造が複雑なだけで慣れるのは早かった。

 私は展開した魔法陣をバレーボール程度の大きさに縮める。

 平面から立体になったことで魔法陣を構成している術式の相互作用が強まるまではよかった。

 困っているのはその威力。

 試しに風の魔力をそそぎ込む。単純な魔法で使えばそよ風が起きる程度の可愛い量だ。

 発動すると春一番が吹き荒れた。

 それなりに太い枝をしならせた木々が抗議の葉擦れを起こす。

 ざわざわとうるさい事この上ない。


「やっぱり、変換効率がおかしい」


 原因は分かっている。

 魔法陣を描いている魔力まで発動エネルギーになっているからだ。

 おかげで円形の倍近い威力になっている。

 この複雑な魔法陣の構築をミスしたらと思うとぞっとする。

 私が間違えずに構築しても相手が魔力を奪いにきて魔法陣が崩れたら……。


「あぁ、やだやだ」


 制御技術には自信があるけど、球形魔法陣は奥の手にしておこう。

 私は一通り球形魔法陣を試してから村長宅に足を向けた。


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