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嘘つき魔王  作者: 氷純
オイゲンと白い池
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二十四話 白い池

 オイゲンが新しい目的地が近くにあると言い出した。


「護衛を頼まれてくれないか?」


 私は喉まで上がってきた拒絶の言葉をなんとか飲み込む。

 神が差別したのだから彼は神に愛されているのだろう。その頼みを断れば何をされるか想像に難くない。


「……分かった」

「本当か!?」


 オイゲンが目を丸くする。

 ダメもとで頼んだのか。どこまでも失礼な奴。

 私の気が変わらない内に歩き出さないと目的地どころか終着点に向かうことになるよ。人生の、さ。


「な、なんだか寒気がするな」


 私の前を歩くオイゲンが肩を震わせた。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 張り切って空回りする頭ポカポカ太陽が空高く昇りきった頃にオイゲンの言う目的地に着いた。

 白い樹皮の広葉樹に囲まれた、水たまりのような浅く小さな池だ。

 樹皮に触れると手が白く汚れた。どうやら白い粉状の物質が樹皮を覆っているらしい。

 かぶれたりすると嫌なので水魔法で手を洗う。

 地面に視線を落とすと暗緑色の草の合間に灰白色の土が見えた。

 足の爪先で軽く払うと見慣れた茶色の土が顔を出したので、木から落ちた粉だろう。

 地面に直接座るのはやめておいた方がよさそうだ。

 池を覗くと此処にも白い物質が自己主張していた。飲み水にも出来ないとは役立たずな。


「この場所はある魔法がかかっているのさ。俺はそれが発動するのを待つつもりだ」


 オイゲンが岩に腰を落ち着けた。

 勿論、岩にも白い物質が付着していたけど気にしていないようだ。


「どんな魔法?」

「大したものではないさ。俺の自己満足を満たす程度が精一杯のつまらん魔法だよ」


 答える気はない、か。

 神殿で見たような魔法陣も鏡と同じ魔法具も見あたらない。

 周囲を覆う白がこの世界に来る直前の白い空間を思い出させる。


「おい、また顔色が悪いぞ」


 オイゲンが心配そうに言うのに私はさも具合が悪い風を装って弱々しく微笑んだ。

 お前のせいだという当てつけだけど、きっと彼には分かるまい。

 私は周囲を見渡してどんな魔法がかかっているのか想像する。

 神殿の地下室はその造りと魔法の関係が理にかなっていた。

 この場所も同じなら鍵になるのは、


「この粉かな」


 白色であることか、粉であることか、樹皮に付いていることか。

 どんな理由かは謎だけどその分、暇が潰せるだろう。魔法の勉強にもなる。


「魔法はいつ発動するの?」


 時間によっても状況は変わるのだ。

 もしかしたら、夜になると白い粉が光るのかもしれない。

 私の問いにオイゲンは困ったように眉を寄せる。


「姫さん、立ち会うつもりか?」

「当たり前でしょう」


 ここまで苦労させられたんだから、見なければ損だもの。

 それに、神の件もある。

 オイゲンの痛みとやらが未だに掴めていないので、離れる訳にはいかない。

 ベリンダの時は街を出るしかなかったから森の中で一週間も激痛に耐える羽目になった。

 あんな経験、二度としたくない。


「済まないが立ち去ってくれ」


 ……はい?

 今、何か判決みたいのを聞いたのですけども。


「立ち去ってくれ」


 オイゲンが私を見てもう一度、はっきりと言った。

 また、森の中で激痛に苛まれて過ごす刑なの?

 勘弁してよ……。

 反論しようとしたら頭に一瞬だけ殴られたような痛みが走った。神の仕業だ。

 抵抗するだけ無駄なのか。

 私は小石を思い切り蹴ってオイゲンの脚に当て、彼の悲鳴に背を向けた。

 どいつもこいつも、痛みにのたうち回る私が見たくて仕方ないらしい。

 目玉くり貫いてあいた空洞に塩を盛ってやろうか。

 みんなドライアイになぁれ、みたいな。


「ばっかみたい」


 空に叫んで、適当な木を力一杯に蹴る。

 余計に痛かった。


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