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第9話 木之本家

香織(かおり)はある週刊誌に目が止まった。

木之本(きのもと)財閥」と書かれた記事に、スーツ姿の男性が写る写真だ。

画像は荒く、顔にはモザイクがかけられているが、壮年の男性のように見える。


木之本財閥は、国内随一の名家。政財界にも影響をもたらしていると言われ、それ故黒い繋がりの噂も絶えない。

表に出るのは、当主であり会長でもある一臣(かずおみ)氏と、その次男で副社長である三哉(みつなり)氏だけ。長男で社長の二亮(ふみあき)氏も名前は聞くが、十年以上表舞台には現わしていないという。

一臣氏はすでに米寿を過ぎていると言うが、今なお家だけでなく業界をも牛耳っているとか。

記事に写る写真は、年齢からして副社長の三哉氏だろうか…?

謎に包まれた名家は、世間からは良くも悪くも見られる。






香織は週刊誌を購入し家に帰って部屋で記事を読んでいると、ドアをノックする音が聞こえた。


「香織、あのさー。」


由梨乃(ゆりの)がドアを開けながら部屋に入ると、香織が読んでいた週刊誌に目をやる。


「香織、珍しいわね。週刊誌なんて…。」


由梨乃は雑誌の「木之本財閥」の文字が目に入った。


「何か書かれていたの?」

「ううん。何か書かれているかと思って見ていたけど、特に何も無かった。また、空振りね。」


不安そうに言う由梨乃に、香織は首を横に振った。


「香織、一人で抱え込まないで。私も、お父さんもお母さんも、皆いつも側にいるから。」


由梨乃は香織を後ろから抱き締めた。


「大丈夫。別に何も無いから。」


香織は心配する由梨乃をなだめた。


香織は時々テレビや雑誌等で「木之本」と聞くと、何か有益な情報が無いかと目を通すようにしていた。謎に包まれた家の内情が少しでもわかれば、という希望を持って。しかし大体は空振りに終わる。謎多き名家だからこそ、ゴシップネタも多いのだ。


「いつか、真実がわかる時が来るわよ。」


由梨乃は香織の表情を読み取ろうとしていた。

香織は「そうだね」と呟く。


「香織はいつか『この家』の人に会ったり、行ってみたりしたい?」


由梨乃は恐る恐る聞いた。

香織は少し考え込んで質問で返した。


「お母さんの実家に…?」






香織の母は、木之本家の一人娘だった。

元来人見知りで引っ込み思案な性格、更に家の名前もあって、周囲からは近寄りがたい存在となっていた。その為、友人と呼べる存在がいなかったそうだ。


名家御用達の羽岡学園(はねおかがくえん)に在籍していても、「木之本」の名は特別だった。

そんな中、高等部で一般生として入学した父と出逢う。家の名のせいで誰も近づけなかった母に、父はそのことを知ってか知らずか、気にせず接した。端から見れば命知らずで無鉄砲な行動だが、母には新鮮で嬉しかったようだ。

そのうち互いに惹かれるが、身分差の為二人の関係は認められるはずもない。そこで父の紹介で親しくなった櫻井(さくらい)夫妻の援助により、秘密裏に付き合っていたという。


しかし大学在学中、母は家の命令で婚約する。拒否することなどできるはずもないが、父と離れることが嫌だった母は、櫻井夫妻の援助で駆け落ちすることにした。

そうして家を出た母は、父と共にどこかへ逃げたという。


香織は両親殺害事件の唯一の目撃者として、警護対象になっている。彼女が犯人を見ている可能性も十分にあり、香織の記憶が戻ることが事件解決の鍵となっているのだ。

事件が事件なだけに、この事件が香織の両親であることは公にされておらず、知っているのは櫻井家だけだ。表向きには香織の両親は「事故死」と伝えている。


世間では「木之本」の名前を言うのも恐れ多いと、「あの家」「この家」などと名前を伏せて言ったりする。四名家の筆頭、櫻井家でさえ、あまり名前を言いたがらない。


自由な身の香織は、そのやんごとなき家の血を引いているのだ。

「やんごとなき」という言葉が書きたかっただけです(笑)

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