プロローグ
最初は短くざっくり内容を書いています。
由梨乃目線で語る主人公、香織の話です。
幼少期から同じ屋根の下で生活してきた私達は、血縁こそ無いものの、時には姉妹のように、時には一番の親友として、多くの時間を共に過ごしてきました。
これは、悲しい過去を持つ彼女が、その真実を突き止める日までの、長くて短い日々の出来事です。
『香織、早く逃げて!逃げなさい!』
『お父さん、お母さん…!』
夢にうなされていた香織は、両親を呼ぶ自分の声で目が覚めた。
「夢か…。」
そう呟くと、香織はベッドから降り、制服に着替えた。
部屋を出てリビングへ向かうと、朝食の準備をしていた眞梨子と、新聞を読んでいる京一がいた。
「小父様、小母様、おはようございます。」
「おはよう、香織君。」
「おはよう、香織さん。いつも早いわね。ところで由梨乃はまだかしら?」
「昨日夜遅くまで宿題をやっていたようなので、まだ寝ているのかも。見てきますね。」
香織は由梨乃の部屋へと向かった。
部屋へ入ると、まだベッドの中でぐっすり寝ている由梨乃の姿があった。
「由梨乃、起きて。遅刻するよ。」
「うーん…。」
彼女は眠そうにあくびをしながらベッドから起き上がった。
「もうこんな時間だったのね。」
「また遅くまでファッション誌でも読んでいたんでしょ。」
「今月号の特集が面白くって、つい…。」
「小母さん達には宿題と言っておいたよ。」
「ありがとう。」
「さ、早く着替えて行くよ。」
「はーい。」
ここは、櫻井家。国内有数の四名家に数えられる歴史ある名家の一つで、茶道の家元を生業にしています。
母はこの家の当主で茶道家の眞梨子、父は一代でグループ企業を創設した京一、娘の私、由梨乃。そこに居候しているのが、日生香織。
彼女の両親は十三年前、彼女の目の前で殺されました。それ以来、事件以前の記憶がほとんど無いのです。
私と香織の両親は、学生時代からの親友でした。死期を悟っていた彼女の両親は、自分達に万が一のことがあった場合、香織をこの家で引き取ってほしいと生前私の両親に伝えており、両親を亡くした香織は我が家に来たのでした。
一人娘だった私は、同い年の香織が来たことは姉妹が出来たように思い、とても嬉しかったことを覚えています。
ただ、両親を目の前で亡くした香織は当初、とても暗く無表情でした。共に生活をしていくうちに少しずつ打ち解け、いつの間にか香織はしっかり者で姉のような存在になったのでした。