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姉妹差別を受けたので出て行くと最愛と出会い困難を乗り越えて行く。あんな人たちに心のストレージを割きたくないから死んだことにしておいたけど数年後には名前も思い出さなくなっていた

作者: リーシャ
掲載日:2025/09/19

 一人だけポツンと取り残され透明人間になったかのような孤独感が押し寄せた。


「お姉様」


 呼ばれて見遣る。


「ルナミア」


 異世界に転生したディアナシエは、双子の妹ルナミアと両親から露骨な差をつけられて、育った。


 ルナミアは愛らしく、両親の愛情を独り占めをして、一方、ディアナシエは地味で存在感が薄く、両親の関心は皆無に等しい。前世の記憶が蘇った時、ディアナシエの中で何かが弾けると心の中にあったものが流れ出る。


「もう、こんな歪んだ愛情に付き合うのは終わりにする」


 前世では普通の家庭で育ち、それなりに大切にされていたディアナシエにとって、今の扱いは理解しがたく特に、妹ルナミアへの盲目的な愛情を見るにつけ、孤独と不満が募っていく。度し難い、罪であろう。


 ある夜ディアナシエはひっそりと家を出た……死んだことにして。


 両親はルナミアにかかりきりで、ディアナシエの行動など気にも留めていなかったのでわずかな金品を手に故郷を後にして新しい土地で、ディアナシエは名前を変えて別人として生きていくことにした。


 前世の知識は役に立ち、読み書きや計算は難なくこなせ、愛想の良い振る舞いと頭の回転の速さで、少しずつ生活の基盤を築いていく中、やはり家族を捨てたことへの罪悪感は、ディアナシエにはほとんどない。


 あってたまるか。前世の記憶が戻った時点で、彼女の中で家族との繋がりは希薄になって、もうそれはそれは長年の不遇から解放された清々しさの方が大きい。


 なにが楽しくて、あの人たちに心のストレージを割かなくてはいけないのだ?


 自分の性格が良くないことは自覚しているので目的のためには手段を選ばないけれど、それはあくまで、自分に対してであって他人には基本的に親切にしていき、困っている人を見れば手を差し伸べるし、頼まれごとはできる限り引き受けるようにしている。


 周囲からの好意を得るための計算かもしれないし、単にそうすることが彼女にとって自然なことなのかもしれないというのは自分でもわからないまま動くと、新しい生活の中で、ディアナシエは魅力的な男性と出会う。


 初めての経験にドキドキする。優しい騎士の彼の誠実さを利用しようと考えていたディアナシエだったが純粋な優しさに触れるうちに次第に心惹かれていくとは計算外。


 騎士の名前はフィルシリアン。


 ディアナシエの聡明さと、時折見せる憂いを帯びた表情に惹かれていたそれは、片思い。


 二人は互いに惹かれ合い、やがて恋人同士になるとディアナシエの心に安らぎをもたらした。


 信じられないような幸福の中、ディアナシエは故郷の噂を耳にするが、裕福だった彼女の両親の家が、事業の失敗で没落したというし、妹のルナミアも相当苦労しているらしい。


「ふ。やっと?」


 話を聞いた時、ディアナシエの心に一瞬、冷たい喜びが湧き上がり、ざまぁみろとまでは思わないが長年不当な扱いを受けてきた彼女にとって、それは溜飲が下がるような出来事に感情はすぐに薄れていった。


 両親が落ちぶれたとしても、それは彼女の今の幸せには何の影響もない上、過去の出来事に心を囚われていること自体が、今の自分にとって無意味だと感じた。


 フィルシリアンとの関係は深まり、ディアナシエは過去の全てを打ち明けることに決め、両親のこと、妹のこと家を出た理由の告白を静かに聞き、優しく抱きしめる。


「君は悪くない。辛い思いをしたんだね」


 フィルシリアンの言葉に、ディアナシエは初めて心の底から救われたような気がした。誰かに、自分の過去を受け止めてもらえることの温かさを知る。


「ありがとう」


 数年後、ディアナシエはフィルシリアンと結婚し、穏やかな家庭を築いており過去の出来事は遠い記憶となり、今の彼女を苦しめることはない。


 時折、故郷のことを思い出すこともあるが、それはもう恨みや憎しみといった感情ではなくただの、過ぎ去った風景として心の中に存在していた。


 相変わらず、計算高く立ち回ることもあるが、生活をより良くするため、フィルシリアンとの愛によって心には以前よりもずっと温かい感情が宿っている。


(幸せすぎて怖いくらい)


 他人に優しくするのは単なる偽善ではなく、心からの思いやりへと変わりつつあるのは驚きの変化だろうか。

 両親が落ちぶれたという知らせを聞いた時、一瞬だけ湧き上がった冷たい喜びは、長年の恨みの残滓だったのかもしれないけれどディアナシエにとって、過去の不幸はもう過去のもの。


 愛する夫と共に、新しい幸せな未来を歩んでいき過去の影を乗り越えていった先で、ようやく本当の意味で自由になったのだろう。

 穏やかな日々が続いていたディアナシエとフィルシリアンの元に、ある日予期せぬ知らせが届く。


「大変だっ」


 フィルシリアンの故郷のハウブスモの村が、原因不明の病に襲われているという手紙には、長老たちの焦りや日に日に弱っていく村人たちの様子が痛々しく、綴られている。


 フィルシリアンは、手紙を握りしめ、顔色を変えていくのは、普段は穏やかな彼から、強い焦燥感が滲み出ていたので、余程の緊急事態なのだなとわかった。


 ディアナシエに向き合い、苦渋の表情で言う。


「行かなければならない。僕の故郷で、人々が苦しんでいるんだ。だから」


 もちろん、迷いはなくディアナシエはフィルシリアンの手を取った。


「私も一緒に行く。どんな困難があっても、二人なら乗り越えられるよ」


 力強く答え家を後にした二人は、長い旅路の末、フィルシリアンの故郷へと辿り着くそこで目にした光景は、想像を遥かに超えるもので活気に溢れていたはずの村は静まり返り、多くの家には病に臥せった村人たちの顔色は悪く、生気を感じない。


 フィルシリアンはすぐに村の長老たちに話を聞き、病の原因を探ろうと奔走し長老たちも原因は全く見当がつかず、村の薬師に見てもらったものの効果的な治療法は、見つかっていないとのこと。


 村を覆う重苦しい空気に焦燥感を募らせるフィルシリアンにディアナシエは村を注意深く観察するうちに、ある奇妙なことに気づく。

 病に倒れた人々の家の近くには、必ずと言っていいほどに独特の香りを放つ、見慣れない苔が生えているということ。


「フィルシリアン、ちょっと来て」


 呼び、奇妙な苔を指さす。


「この苔、何か特別なものじゃない?病が流行するようになってから増えたような気がする」


 フィルシリアンは訝しげな表情で苔を見つめ、彼は植物に詳しいわけではなかったがハウブスモに自生する植物についてはある程度の知識があった。

 しかし、このような苔は見たことがないようだとのディアナシエの言葉にかすかな希望を感じ始めた。


 二人は協力し、村の周辺に生えている他の植物や土壌を調べ始めると病に倒れた人々の家の周りに特有の、微量の毒素を含んだ胞子が、放出する苔であることを突き止める。

 風に乗って胞子が広がり、それを吸い込んだ人々が、病に侵されたと考えられるものの全てが解決したわけでない。

 なぜこの苔が突然異常繁殖し始めたのか?


 毒素を取り除くにはどうすればいいのか?との新たな疑問が、 湧く。胞子を出す奇妙な苔が原因だと突き止めたものの、フィルシリアンとディアナシエの顔に安堵の色はなく、どうすればこの苔の繁殖を止められるのか。


 村人たちを毒素から守れるのか、具体的な方法がまだ見つからないから村の古老たちに話を聞いて回りハウブスモに古くから伝わる言い伝えの中に、この苔に関する記述がないかを探した。


 ディアナシエは、村の薬師の元を訪れ、解毒や症状を和らげる方法がないかを尋ねるがどちらも手がかりは見つからない。


 古老たちはこの苔を見たことがなく、薬師もこのような症状を引き起こす毒については知識が全くないからだと、最終的に途方に暮れる二人。


 ディアナシエは諦めずに村の周囲を探索していき苔が異常繁殖している場所に何か共通点はないか注意深く観察すると、あることに気づいた。


 苔が特に多く生えているのは、村の北側にある古い炭焼き小屋の、跡地周辺なのだとディアナシエはフィルシリアンにそのことを伝え、二人で炭焼き小屋の跡地に向かう。

 そこは、長年手入れもされておらず荒れ果てた場所で足を踏み入れると、他の場所よりも明らかに苔の密度が高いことに気づく。

 地面には、古くなった木炭の破片が散らばっていたそれを数秒見つめてから。


「もしかして」


 ディアナシエは地面の木炭を拾い上げ、匂いを嗅いだみたらかすかに、独特の酸っぱい臭いが。


「この木炭が、何か関係しているのかも」


 フィルシリアンも木炭を手に取り、注意深く観察していくと炭焼きの過程で出るある種の成分が、土壌の性質を変化させ、特定の条件下でこの苔の異常繁殖を促すのではないか、という仮説を立てた。

 二人は急いで村に戻り長老たちに、炭焼き小屋の跡地について尋ねたことによると、数十年前まではそこで盛んに炭焼きが行われていたその後、使われなくなり放置されていたという話を聞き出しフィルシリアンは確信。


「恐らく、長年の炭焼きによって土壌に含まれた成分が、最近の気候の変化などの影響で、苔の性質を変えてしまったんだ」


 原因が分かったとしても、解決策は見つからないし炭焼きの成分を取り除くことは、容易ではないからすぐに苔を完全に除去する方法も不明。


「どうしよう」


 そんな中、ディアナシエは村の子供たちが、炭焼き小屋の近くの湧き水でよく遊んでいるという話を聞きもしかしたら、湧き水が何か手がかりになるかもしれないと考え、湧き水へと向かう。

 そこで二人が目にしたものは苔が異常繁殖している場所とは対照的に、清らかで微かに甘い香りのする湧き水で、周辺には毒性の苔は全く生えていなかったことで直感した。


「この水が、何かを中和する力を持っているのかもしれない」


 湧水を採取してみると驚くべきことに、苔の色が徐々に薄くなり始めたのでこの水こそが、ハウブスモの村を救う鍵となるのかもしれないけれど、湧き水の量は限られているというネック。


 湧き水が苔の毒性を中和する可能性を見出したディアナシエとフィルシリアンは、すぐに村人たちにこの発見を伝えた最初は半信半疑だった村人たちも、実際に苔にかけてみることで変化が起こるのを見てから、希望を持ち始める面々。


 問題は湧き水の量、限られた水源からでは村全体に水を供給するには到底足らず何か他の方法で苔の毒性を抑えるか、あるいは湧き水と同じような効果を持つものを探す必要がある。

 フィルシリアンは、湧き水の成分を詳しく調べるために、ハウブスモに残る古い文献を改めて調べ始めるとディアナシエは、湧き水の周辺に生えている他の植物に注目。


 もしかしたら、この湧き水と同じように、毒性を中和する成分を持つ植物があるかもしれないと考えた数日後、ディアナシエは湧き水の近くに生えている、鮮やかな青い花をつけた小さな草に目が留まる。


 何気なく葉を摘んで匂いを嗅いでみると、湧き水と似た、ほのかな甘い香りが、ディアナシエは直感的にこの草にも何か秘密が隠されていると感じ、村に戻り薬師にその草を見せると薬師は驚いた表情で言う。


「これはルアブルーという珍しい薬草です。微量ながら解毒作用があると古書に記されていますが、非常に希少で、このあたりではほとんど見かけなくなっていました」


 ディアナシエは興奮してフィルシリアンにこのことを伝え、文献で調べている湧き水の成分と、ルアブルーに含まれる成分に共通点が見つかれば毒性中和のメカニズムが、解明できるかもしれないから二人は再び協力し、湧き水の水質分析とルアブルーの成分分析を試みていく。


 幸い、村には古い薬学の道具が残っており、簡単な実験を行うことができた。

 その結果湧き水とルアブルーの両方に、特定のミネラル成分が豊富に含まれていることが、分かって、ミネラルが苔の出す毒素と結合し無害な物質へと変化させる働きを持つ可能性が高い、という結論に至る。


「ルアブルーを増やし、それを何らかの方法で村全体に広げることができれば」


 ディアナシエは希望に満ちた表情で言うとフィルシリアンも頷く。


「そうだ。ルアブルーの栽培方法を探し、増やしていくことが、この村を救うための道になるかもしれない」


 ルアブルーは希少な植物、ゆえに栽培方法も確立されてないので二人は、手探りの状態でルアブルーの栽培を始めることにして、村人たちも希望を胸に、ルアブルーの種を探したり栽培に適した土地を探したりと、積極的に協力してくれた。


 試行錯誤の日々が続き、土の質、水やり、日当たりなど、様々な条件を試すのちに少しずつ、ルアブルーを増やすことに成功し増やしたルアブルーを乾燥させ、粉末状にしたものを湧き水に溶かして、村の井戸水に少しずつ混ぜていくという方法を試みる。


 時間はかかったが、徐々に村人たちの体調は回復していき、咳や倦怠感を訴える人が減ると顔色も明るくなっていく。

 苔の異常繁殖も、ルアブルーの成分が混ざった水が土壌に染み込むことで、少しずつ勢いを弱めていったハウブスモの村には、再び穏やかな日常が戻り始めた。


 病の危機を、乗り越えた村人たちはディアナシエとフィルシリアンを村の英雄として、感謝することになる。


 夕暮れ時、ルアブルーが群生する丘の上に立つ眼下には、家々の灯りが温かく揺れ。


「本当に、大変だったね」


 ディアナシエは感慨深げに唱えるとフィルシリアンは優しくディアナシエの手を取り、微笑んだ。


「でも、二人で力を合わせれば、どんな困難も乗り越えられると、改めて感じたよ」


 ふわりと、風が二人を包む中、目を伏せて風を感じ取った。

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― 新着の感想 ―
文章がブツ切れになっているかのような句点の使い方は、確かに読みにくくて気になりますね。 ご自身が読みやすいと思う作品を参考に改稿すると良いと思います。 アルファポリスで似たような文章を書く作家さんが…
ポエムっぽい? 変なところに句点が多すぎて読みにくいです。 彼は、炭焼きの過程で出る。 とか日本語の文章になってないのは流石にどうかと。
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