6話
放課後、いつもより少し遅くなった帰り道。
昇降口に向かう途中、靴箱の前で隼と鉢合わせた。
「お、葉琉。……ひとり?」
「うん。ちょっと手伝いしてて、今終わったとこ」
「……そっか」
そのままなんとなく並んで歩き出す。
ふたりだけの帰り道なんて、珍しい。
でも、昔はこうやってふたりで帰ることだって、よくあったんだ。
「最近さ、詩乃と、よく話す?」
思い切って、聞いてみた。
「……まあ、普通に。なんで?」
「なんとなく。……なんか、前より距離近くね?」
隼はちょっとだけ笑った。
その笑い方が、からかうでもなく、茶化すでもなくて──
まっすぐな笑顔だったことに、僕は驚いた。
「そっか。……まあ、そーかもな」
その“肯定”が、ぐさりと胸に刺さった。
「お前って、さ。昔からそういうの、気づくの早ぇよな」
隼がぽつりとそう言った。
「別に。……ただの勘、外れることだってあるし」
「でも、今回は当たってる」
僕は何も言えなかった。
目の前にあったものが、
はっきりと“変わってしまった”と知らされるのは、
想像以上に痛かった。
「……そっか」
それしか言えなかった。
歩く足音だけが、しばらくふたりの間に続いていた。