表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/34

5話

その日、帰り道はふたりきりだった。


隼は委員会か何かで残っていて、

気づけば僕と詩乃ちゃんだけが並んで歩いていた。


「……風、強いね」


そう言って詩乃ちゃんが髪を押さえる。

その仕草がやけに綺麗で、僕は一瞬、言葉に詰まった。


「……うん」


ただそれだけしか返せなかった。

本当は、もっと他のことを言いたかったのに。


「ねえ、葉琉ってさ」


不意に詩乃ちゃんが立ち止まった。

少し前を向いたまま、小さな声で続ける。


「……最近、変わった?」


「え?」


「なんか……わかんないけど。少しだけ、よそよそしいというか……」


「そんなこと、ないよ」


即答してから、少しだけ後悔した。

ほんとは、自分が一番その“よそよそしさ”に気づいていたから。


「……そっか。なら、いいけど」


詩乃ちゃんはそれ以上何も言わなかった。

でも、その横顔はどこか寂しそうで、

僕はその空気をうまくつかめないまま、何も言えなかった。


風が、ふたりの間を吹き抜ける。


──本当は聞きたかった。


「隼のこと、どう思ってるの?」


でも、そんなことを聞いたら、

今の関係すら壊れてしまう気がして、何も言えなかった。


僕はただ、笑ってごまかすことしかできないままだった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ