表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/34

3話

放課後、昇降口を出ると、少し冷たい風が吹いていた。


春とはいえ、まだ制服のブレザーの内側に、風が入り込んでくるとぞくりとする。


「……行こっか」


隣でそう言ったのは詩乃ちゃんだった。

今日は三人で帰るつもりだったのに、隼は部活の顔出しがあるとかで、先に体育館の方へ行ってしまった。


「……うん」


歩き出すと、校門の近くに咲いていた桜が風に揺れて、

舞い上がった花びらが、ふたりの間をすっと通り過ぎていった。


「ねえ、最近さ、隼と何か話した?」


「え?」


「なんか、ちょっと雰囲気違う気がして……」


僕の問いかけに、詩乃ちゃんは一瞬だけ足を止めた。

でも、すぐにまた歩き出して、小さく首を横に振る。


「別に。変わらないよ、あいつは」


そう言ったけれど、その声には、どこか引っかかるような間があった。

僕はその間に気づいてしまった。


──やっぱり、変わったのは“僕”のほうじゃない。


変わってしまったふたりの距離に、気づいてしまった“僕”だけが、

取り残されていく。


「……そっか」


そう言ったきり、僕はそれ以上何も聞けなかった。

聞いたところで、答えなんて、もうわかってる気がしてた。


それでも隣で歩く詩乃ちゃんの横顔は、

ほんの少しだけ、春の光に滲んで見えた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ