エピローグ
搭乗時間が近づいて、ゲート前のベンチ。
僕の前に、詩乃ちゃんと隼が並んで立っていた。
「わざわざ見送りなんて、ふたりして仲良いね〜」
僕は笑いながら、ふたりの顔を交互に見る。
「……そっちこそ、無事に行けよ」
隼が目をそらしながら呟いた。
「当たり前でしょ。てか、ふたりの方こそさ〜、どう見ても付き合ってますよね? え、ねぇ詩乃ちゃん、もしかして隼から告白されたの? されたんでしょ? 」
調子に乗ってからかうと、
詩乃ちゃんは少しだけ頬を染めて、隼は「……うるせえ」ってぼそっと返した。
そんなふたりの様子を見てたら、
ちょっとだけ胸の奥がきゅっとしたけど、笑った。
「……ま、いっか」
僕はふっと息をついて、詩乃ちゃんの方を向く。
「詩乃ちゃん」
彼女はきょとんとして、目を瞬かせた。
そのまま僕は、そっとその体を抱きしめた。
詩乃ちゃんは、少しだけ目を伏せて、何も言わずにその場にいてくれた。
それだけで、もう十分だった。
「おめでとう。ほんとに、ちゃんと幸せになってね」
そっと離れて、隼の肩をぽん、と叩く。
「頼んだよ? 詩乃ちゃん泣かせたら、ほんとに帰ってくるから。で、まず先に殴るからね?」
「……わかってる」
隼は静かに、でもはっきりとそう言った。
それを聞いて、僕は最後に笑った。
「じゃ、行ってきます」
明るく言って、手を振った。
ふたりは驚いたような顔をしたあと、小さく手を振り返してくれた。
僕は振り返らずに、ゲートの方へと歩き出す。
ほんとは、もっと言いたいことなんて山ほどあった。
でも、詩乃ちゃんが何も言わずにいてくれたから、
僕もそれ以上は何も言わないままでいた。
ずっと好きだった。
気づかれなくてもよかった。
でも、ちゃんと好きだった。
いつか、君たちよりも好きになれる人に出会って、
僕もちゃんと、誰かに「おめでとう」って言ってもらえるように。
そう思えたから、もう大丈夫。




