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29話

年が明けて、久しぶりに学校へ行く日。

冷たい空気が教室に流れ込んでいて、

窓際の席には、薄く日が差していた。


「うわー、だる」

「冬休み短すぎじゃない?」

「宿題やってねぇ!」


そんな声が飛び交ってて、

教室はまるで、なにも変わってないみたいだった。


でも、僕の中では、何かがすこしだけ変わっていた。



席に着いたあと、斜め前の方から声がした。


「おはよー」


詩乃ちゃんだった。

その横には隼がいて、ふたりでふつうに笑っていた。


「……おはよう」


「うわ、葉琉! めっちゃ久しぶりじゃん」


「冬眠でもしてた?」


「……言い方」


「年明けてから会ってなかったっけ?」


「課題提出のとき、すれ違ったくらい?」


「そうだっけ? てか、葉琉ほんとに髪伸びたよな。冬眠説濃厚」


「ほっとけよ」


そう言いながら、僕も笑ってた。


3人で冗談を言い合って、

他愛のないことで笑えて、

その一瞬はたしかに、何も変わってないように見えた。


でも、わかっていた。

もう、少しずつ何かが変わってしまったってことも。


詩乃ちゃんがふと、隼の方を見たときの視線の柔らかさとか、

隼が何も言わずに詩乃ちゃんの分までプリントを取ってたこととか。

そういうささやかな違いが、僕にはちゃんと見えていた。


昼休み。

廊下の窓際でひとりぼんやりしていたら、

向こうから南雲が手を振ってきた。


「先輩!」


「おー、おはよう。……久しぶり?」


「ちょっとだけ。学校、来るかなって思ってました」


その言葉に、ふっと笑う。


「なんか、顔見たら安心したかも。……あ、変な意味じゃなくて」


「……うん。わかってるよ」


そんな何気ないやりとりが、

今の僕にはちょうどよかった。


──


季節はまだ、冷たいままだけど。

心の奥に、少しだけ陽が差したような気がした。

たぶんそれで、今日という日も、ちゃんと前を向ける。

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