25話
12月。
朝の空気が、肌を刺すようになってきた。
登校路の街路樹も葉を落としはじめていて、
年末の足音がすぐそこまで来ている。
──なんとなく、
“さよなら”が近づいている気がした。
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校舎の廊下を歩いていると、
前から南雲が小走りにやってきた。
「先輩、おはようございます!」
「あ、おはよう。元気そうだね」
「冬って好きなんです。空気が澄んでて、背筋が伸びる感じ」
「……たしかに、冬の朝って、ちょっとだけ気持ちいいよね」
そう言うと、彼女は少しだけうれしそうに笑った。
「先輩は……もう進路、決めたんですか?」
「うん。一応ね」
それだけ答えると、彼女は“それ以上は聞かない”というように小さくうなずいた。
「そっか。……がんばってください」
そう言って、少し頭を下げて、
彼女はすぐに階段を下りていった。
あたたかい言葉だったのに、
なぜか少しだけ胸が寒くなった。
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その日の帰り道。
昇降口で靴を履いていたとき、
ふと視界の端に、詩乃ちゃんと隼の姿が映った。
笑いながら、並んで歩いていく後ろ姿。
もう、すっかり自然になったその距離感に、
僕はもう入る余地なんてないことを、改めて思い知らされた。
手を振ることも、名前を呼ぶこともせずに、
ただ、背中を見送ることしかできなかった。




