18話
放課後、教室の窓際で、僕と詩乃ちゃん、隼の3人で話していた。
特別な話題があるわけじゃなくて、
ただ、提出物を出した帰り道みたいな空気のまま、
なんとなくその場に残っていた。
「進路調査って、めんどいよな」
隼がふと、そんなことをこぼした。
「自分で決めろって言われても、どうせ親とか先生が何か言ってくるし」
「……そういうとこで逆らうタイプじゃないじゃん、隼」
「それはそっちもだろ、詩乃」
ふたりの軽いやりとりを聞きながら、
僕は黙ってプリントを眺めていた。
そのとき、詩乃ちゃんがふとこっちを見た。
「葉琉は? ……おじさんのところ、行くの?」
その言葉に、僕は一瞬だけ手を止めた。
「……ん、まあ、まだわかんないけど。選択肢のひとつではあるかな」
「そっか。……でも、遠いんでしょ?」
「うん、まあ、ちょっとだけね」
そう答えながら、
本当は“どれくらい遠いか”なんて、まだ言うつもりはなかった。
まだ、自分の中でも整理がついていなかったから。
「詩乃ちゃんは?」
今度は僕が聞き返すと、彼女は少しだけ笑った。
「わたしは……近くの大学かな。遠く行くの、なんか苦手」
「似合ってるな、それ」
隼がそう言って笑うと、詩乃ちゃんもふっと笑った。
何でもないやりとり。
でも、その笑顔の中に、どこか“もう少しで届かなくなる”ような距離がある気がした。




