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15話
あの夏祭りの夜から、少し時間が経った。
日差しは相変わらず強くて、
朝から汗ばむくらいの空気に、夏の真ん中を感じていた。
だけど、僕の中ではまだ、
あの夜のことが、ずっと心に残っていた。
詩乃ちゃんの震えた肩。
静かに抱き寄せたあの瞬間。
あれから、詩乃ちゃんは何事もなかったかのように接してくれる。
それが、優しさなのか、気づかないふりなのかは、わからなかった。
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「隼とは……最近、どうなの?」
ある日、ふと聞いてみた。
詩乃ちゃんは少しだけ考えてから、
静かに答えた。
「普通。……ちゃんと話せてるよ。まだちょっと、ぎこちないけど」
「そっか」
その「普通」の中に、僕の居場所はなかった。




