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11話
蝉の声が、本格的になってきた。
終業式を終えて、教室を出るとき、
外の光がまぶしくて、目を細めた。
「やっと夏休みー!」
「補習とかマジだるいんだけど」
廊下にはいつもより賑やかな声があふれていて、
その中心には、僕はいなかった。
──なのに、なぜか寂しかった。
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昇降口で靴を履いていると、詩乃ちゃんがやってきた。
「あ、葉琉。隼と先に帰るね。今日は家寄ってくって言ってたから」
「……あ、うん。気をつけて」
自然なやりとり。
いつも通りの、何でもない会話。
でも、その“ふたりだけ”という響きに、
小さな棘みたいなものが胸に残った。
ふたりが並んで校門を出ていく後ろ姿を、
僕はただ見送ることしかできなかった。
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そのまま家に帰る気にもなれず、
僕はひとりで少し遠回りをした。
コンビニのアイスを片手に、日陰の歩道を歩いていく。
夏のはじまり。
本当なら、もっとワクワクしてるはずだったのに。
なのに、僕の中には、
妙な置き去り感と、うまく言えない不安だけが残っていた。




