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10話
夕暮れが、教室の窓をオレンジに染めていた。
夏の空気は、昼間の熱をまだ残していて、
開け放たれた窓から、遠くの蝉の声が途切れ途切れに聞こえる。
僕はひとり、教室に残っていた。
プリントをまとめるふりをしながら、
ふたりが先に帰っていく姿を、なんとなく見送ってしまった。
──また、ひとりだ。
理由なんてない。
でも、今日の僕は、その輪に入る気になれなかった。
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「夏って、なんか、苦手かも」
数日前の放課後、詩乃ちゃんがぽつりとそう言ったのを思い出す。
「暑いの嫌い?」
「……ううん、そうじゃなくて。なんか、切ない感じがする」
そのときは笑って流したけれど、
今になって、なんとなくわかる気がした。
光は強いのに、どこか不安定で、
景色が全部、まぼろしみたいに揺れて見える。
ふたりが並んで歩く姿を、
僕は、遠くから見ているだけで精一杯だった。




