9話
「はいはい注目〜、今日も3人仲良く登校してまーす!」
朝、校門をくぐるとき、僕はちょっと大げさに言ってみた。
詩乃ちゃんが苦笑して、
隼は面倒くさそうにため息をついた。
──それでも、僕は笑っていた。
明るく、いつも通りを演じることで、
この関係がまだ続いているような気がしたから。
「今日さ、帰りにファミレス寄らない? たまには3人で」
「……うん。いいよ」
詩乃ちゃんが答え、隼もうなずいた。
よかった。
まだ、こうやって一緒にいられる。
放課後、並んで歩く帰り道。
いつものように笑いながら話すけれど、
話の中心にいるのは、だいたい隼と詩乃ちゃんだった。
僕はその横で、相槌を打ったり、笑ったりしてただけだった。
「……ねえ、葉琉ってさ」
ふいに詩乃ちゃんがこっちを見た。
「無理してない?」
「え?」
心臓が跳ねた。
「なんか……ちょっと、無理して明るくしてるような気がして」
「そんなことないよ! 俺、昔からこんな感じじゃん!」
一拍おいて、自分の声がやけに浮いているのに気づいた。
「そっか。……なら、いいけど」
詩乃ちゃんの目は、
それでも何かを見透かしているようで、少しだけ怖かった。
⸻
帰り道、ファミレスから出たとき、
ふと、ふたりが自然に並んで歩いているのを見て思った。
──もう、元には戻れないんだ。
何度も笑って、話しかけて、
「変わらないふり」を続けても。
その歩幅の差は、
僕だけが気づいていて、
僕だけが埋められないものだった。




