ep.1-1 2人の日常
こっちの世界に来て1年
新しい体で
密林の最奥で田畑を耕し
食物を育てながら
生活を送り
この世界というものに段々慣れてきた
初めてここに来た時に
何も考えず
喉の渇きを癒すために
たまたま見つけた湧水を飲んだところ
非常に爽やかな飲み心地だったが
盛大にお腹を下してしまい
もう生水のまま飲まないと誓った
まさかの1週間お腹がピーピーだった
原因は水がミネラル豊富な硬水だったことと
生水特有の空気を多く含むことによる
硬水の成分であるマグネシウムと
効果が相乗してしまったためである
日本の大半のエリアでは
軟水がほとんどなので
何も気にせずがぶ飲みしたことを
今でも後悔している
こっちの世界に来る際の最初の条件・・・
「おーい。カリア。
収穫した野菜洗ってくれー。」
「はーい。
こっちは肉の血抜き終わったよー。」
「ありがとう。
野菜が洗い終わったらいつものように切っておいてくれー。」
「はーい。」
それは
前の世界の食材
特に野菜類と香辛料
料理技術
可能であれば
調理器具の持ち込み
人間に限らず
生物にとってストレスの捌け口が無いのは
正直しんどい
「マティアさん。
新しい身体には慣れましたか?」
「慣れるのは慣れたが
たまに感情の起伏で
魔力が暴走しそうになってしまうのが危ないかな。」
「仕方ないですよ。
人間の身体の限界を高めているとはいえ
可能な限り人間に近づけることも条件にされましたから。」
「神様特製の身体でも
そうでもしておかないと
同じ人間から見れば恐怖の存在になってしまうだろう。
人間は欠陥が有るぐらいがちょうどいい。
もし完全な存在を造るのならば
神という存在以外どの生物でもやめた方がいい。」
提示した2つ目と3つ目の条件
自分の身体
ただのおじさんだった人間を
見た目や運動能力を若返りさせて
必要に応じて魔力等で強化できること
さらに身体を慣らすために
1年以上世界から隔絶すること
それによって他種族に
瞬殺されないようにしておくこと
でも死んでしまえばそれで終わり
可能な限り普通と変わらないように見せること
それは徹底しておかないと
神様扱いされてしまう可能性もある
そして誰とも会わずに済む為に
カリアがこの家の周辺に結界を張って
魔獣の侵入を防ぐのと同時に
魔力や科学現象等色々な現象やエネルギーを
探知できないようにしている
「それよりマティアさん。
今日の夜ご飯は何ですか?」
「はははっ。
俺と一緒に過ごすようになってから
段々食べることが好きになってるみたいだな。
今日の夜ご飯は
一昨日作ったコンソメスープを使った
ポトフだよ。」
「やったー。
この世界の料理は塩味がメインで味気ないから
コンソメの料理とか
たまらないくらい美味しいんだよなぁ。」
「といってもワイルドボアから作った
ベーコンと
その腸から作ったから
フランクフルトみたいに
極太のソーセージになっちゃったから
ちょっと食べにくいんだけどねー。」
「そんなことないよ。
1番大事なのは美味しく食べれることだから。」
「そっか。
じゃあ残ってる仕事を
さっさと片付けてご飯にしよう。」
二人で作業を分担して
食材の加工と
農作業の片付けを
テキパキこなして
疲れてフラフラで空腹状態になった俺たちは
事前に作っておいたパンと
さっき作ったポトフを
テーブルに並べて
椅子に座った
「「いただきまーす。」」
がっついて食べるカリアを横目に
普段通りの速度で食べていると
食事が終わる間際に
ほぼ可能性ゼロの事象が起きた
コンコン
この家の玄関扉をノックする音がした
カリアと目を合わせた私は
少し警戒して扉を開いた




