ep.1-7 招かれざる客
眠りについてから
どれぐらい経っただろうか
隣で寝ているカリアは
暑苦しくなっていたのだろうか
布団が床に落ちて
寝間着も若干はだけた状態で
よだれを垂らしながら
寝ている
その時
魔道具のペンダントが
振動して
私は飛び起きた
音が出ていないから
何かの動物かと思い
また眠ろうとしたが
木々の向こうから
複数の殺意がこちら側に向いているのが
ひしひしと伝わってくる
窓から悟られないように
外を見ると
離れにいるワルターさん達は
気付いていないようだった
私は隣で寝ているカリアを
静かに起こした
「カリア。
起きろ。」
「ううん・・・
どうしたの?」
「侵入者だ。
静かに準備をするんだ。」
「わかった。
装備を持ってくる。」
「北側の森の中にいるのは分かるけど
どれぐらいいるかわかるか?」
「うーん。
多分10人前後だよ。
全員人間だと思う。」
「ワルターさん達が気づいてないかもしれない。
ペンダントを身につけていないようだ。
あいつらが動き出したら
ワルターさんに渡したペンダントの
音を全力で鳴らしてくれ。」
「わかった。
いつも通り床下から状況を探るね。
何かあったらいつも通り
念話で話しかけるね。」
「頼んだぞ。
俺は可能な限り奴らを引き付ける。
何があっても俺のことは気にするなよ。」
「大丈夫でしょ?
少しだけ気にはしてあげるけど。」
「まったく。
じゃあ動くぞ。」
カリアは床板を外して
床下へ
私は裏の扉を開けて
静かに家の外に出た
弓に矢を番えて
忍び足で相手との距離を保ちながら
様子を窺う
人間でも流れ者のような一般人ぐらいなら
ペンダントから音が鳴るはずなのに
何故反応しない?
カリアに念話で話しかけた
「カリア。
相手は暗殺者か何かか?」
「素性は分からないけど
魔法か魔道具を使って
探知されないようにしているみたい。」
「そうか。
それなら
こっちが
あいつらの裏を取ろう。
それから罠を作動してくれ。」
「どれを作動させる?」
「そうだな。
今回は
落とし穴と
かすみ網と
トラバサミでいいかな。」
「オッケー。
地雷はいいの?」
「相手が人間なら
そこまでしなくていいだろう。
俺が位置について
合図したら
ペンダントを最大で鳴らしてくれ。」
魔法で気配を殺して
物陰に隠れながら侵入者の背後にまわった
確認しただけでも
木の上に
弓に矢を番えた
奴が3人いるな
「カリア。
木の上の奴は
最初に俺が弓矢でやる。
相手が気づいたら
下の連中を
魔法で時間稼ぎしてくれ。」
「はーい。
炎の壁で
相手とマティアの間に
炎の壁を作っちゃうね。」
「じゃあいくぞ。
5、4、3、2、1、0」
その瞬間
ペンダントが爆音を出す
私は木の上の
3人を順番に死なない程度の場所に
矢を射って撃ち落とした
「ぐわっ・・」
木から落ちた3人は
かすみ網に引っかかって
宙ぶらりんになっている
残りのメンツが
後方の爆音が鳴った場所に
ナイフを抜いて
殺到する
だがそこには
灼熱の壁がそびえており
ほんの僅かに一瞬躊躇する
その隙を見逃すことなく
私は剣を抜き
魔法で体力強化をして
侵入者に斬りかかった
戦闘継続できないように
移動するための脚と
武器を使うための腕に
狙いを定め
次々と斬り伏せていく
3人斬った所で
相手も
状況が悪化していると判断して
長剣を抜いて抵抗してくるが
所持している武器の能力差で
相手の剣ごとぶった切っていく
トラバサミに脚を捕られたり
落とし穴に落ちて
這い上がれなくなってしまった者も含めて
全部で8人斬って
最後の1人に斬りかかったが
斬撃を受け止められてしまった
最後の1人が
鍔迫り合いのなか
「おいおい
なんて奴だよ。
うちの隠密部隊を丸々
一方的に斬り伏せちまうなんて。
何者だお前?」
「ただの人間だよ。
降伏するなら
縄をかけて尋問だけで
終わらせてあげるけど
抵抗するなら
拷問するよ?」
「なんてガキだ。
平然と拷問って言いやがった。
お前
ワルターの部下ではないだろう。
何故あいつらの手助けをする?」
「簡単だよ。
この村の大事なお客様だからな。
それに
不必要な人殺しが嫌いなんだよ。
人様の土地に土足で上がり込んだんだ。
それぐらいは覚悟できてるだろ?」
「お前本当に子供か?
どんだけ場慣れしてるんだよ。」
「うーん。
これぐらいなら大したことないけど。」
「やめだやめだ。
うちの部下を
一瞬で生かさず殺さずの
絶妙なところに落とし込むなんて
こんなに実力差があったら死ぬだけなのは明白だ。
降伏する。」
襲撃者は剣を鞘に収めて
その場に座り込んで
無抵抗になった




