ep.1-5 搾取される村
ワルターさんは立場上なのか
冷静に話を聞いていたが
従者達の半分は
今にも飛び出して行きそうだな
従者が食い気味に聞いてきた
「じゃあ俺たちでもオリハルコンの武器を作れるのか?」
「結論から言うと
作製する為に必要な
人材と設備が
ともに不足しているので
今この状況では不可能です。
それと
先程見せた私の武器もそうなのですが
この村で作られた武器は
他人が使用できないように
本人の持つ魔力を感知できないと
その能力を発揮できないようになっています。
ワルターさん。
試しに私のその剣で
私を殺すつもりで斬ってみてください。」
ワルターが従者を一瞥して従者に剣を渡した
従者がおもむろに私を
力一杯斬ろうとすると
斬るどころか怪我をさせることもできなかった
従者が問いかける
「どういう仕掛けなんだ?
君の言った通りなら斬る事ができないのは解るが
成人が力一杯振り下ろしても
傷ひとつ付かないのはどういう理屈なんだ?」
「この村の武器は
それぞれが
その持ち主を特定するように作られています。
使用者に責任を持たせ
過剰な暴力を許さない為に
武器を手に取った際に
持ち主を認識できないときは
形状を維持しているだけで
相手に怪我をさせないように
その力を行使した際に発生した過剰なエネルギーを
発散、分散又は蓄積するようになっています。」
「もしその武器の持ち主が死んでしまった場合は?」
「その時はその使用者がどういう事になるか
武器等を初めて所持した時に
各々が決めているので何とも言えません。
私の場合は
所有者がカリアに移譲するようになっています。」
ワルターさんが尋ねてきた
「話を戻していいかな。
さっき資源が見つかったと言っていたが
何があったんだ?」
「端的に言うと
エルフの中枢部が手を出してきたのが原因です。
それまではここに住んでいた
エルフたちのことを
ただの格下の田舎者と思っていただけなので
彼らとしては
奴隷のように扱う事しか
考えていなかったのでしょう。
横取りしてでも
希少な物質は喉から手が出るほど欲しいですから。」
「ということは
政府に対して税金のような形で
献上していたということか?」
「最初はそうだったのですが
あまりにも対価が低かったことから
最初のエルフたちが方針を変更したのです。
搾取されることに嫌気がさして
それまでは
決められた量を決められた期間で
納入していたものを
自分達が必要な分を先に取得して
余った分を差し出すようにしたのです。」
「それをしてしまうと
エルフのお偉いさんたちが
納得しなかったということか。」
「はい。
お互いに納得できなければ
どちらかに悲劇が起きるまで
暴力の応酬が始まり
そして続きますから。
最悪なことに魔物のスタンピードも合わさってしまって
この村が一方的に大打撃を被ったということです。」
「ただ納得がいかないことがある。
魔法や魔力の使用を得意とするエルフが
何故そうも簡単に魔物にやられてしまったんだ?」
「簡単なことです。
エルフの中枢側から
裏切者が出るように
スパイが潜り込んでいたからです。
スタンピードの際に局地的な戦闘も起きて
生き残った者達は
散り散りになってしまって
最終的にここに残っているのは
私とカリアだけです。」
「それでもここに残る理由は資源か?」
「いえ。
資源自体はスタンピードの少し後に枯渇しました。
私がここに残る最大の理由は
あの戦闘の際に
私がカリアに助けられたからです。
私はここに流れ着いただけの人間ですが
カリアは私を最初に助けてくれたエルフの孫にあたる子です。
一族全員で助けてくれたのに
あの子を置いて私はここを離れることはできません。
あの子はこの土地に愛着もあるし
ここで食べていくこともできますから。」
気付けば辺りは日が暮れて
真っ暗になり
雲の隙間から
月明かりが照らしていた




