ep.0-0 なんという疲れる現代
20XX年冬
「次の方どうぞ」
とある市役所の窓口で業務を淡々と感情の機微もなくこなしていく
この季節になると増える相談
この季節じゃなくても次から次へと続く相談
お金、生活、保障、手続等々・・・
休日を除き
朝から晩まで働き続け
心と体力が擦り減る毎日
地方公務員に限らずブラックな職業職場で働く人に共通すること
「心をリセットできないとやっていけない・・・」
今日定年を迎えた上司が一人職場を去っていく
その空いた上司の席に新しい上司が座り
首のすげ替えをするだけで
「どうせやる事は変わらない・・・」
「この仕事を定年退職するまで続けて生きていくのは辛いなぁ」
「この現実で夢を求めることはもうできないだろうなぁ」
人によって想うことは違うだろうがネガティブな事しか思いつかない
心が荒んでいく人生に嫌気が差していく
定年になるとき私もあの席に座ることになるのか・・・
その時私に何か誇れるものはあるのか
明るい未来の光や希望が薄れていく
将来の不安が次第に大きくなる
さらにそのペースが速くなり日々拍車が掛かっていく
今日は普段外回りという名の時間潰しを上手に行っている
同じ部署に在籍している同僚の
家族旅行で申請された有給休暇の代わりに
急遽高齢の相談者が住む家に民生委員の人と共に伺うことになっていた
地方都市ということもあり元気なお年寄りが多い地区からの
季節柄珍しい相談の電話が来ていた
「お久しぶりです民生委員の○○さん。何かあったのですか?」
「お久しぶりです××さん。実は△△さんの家の屋根裏に季節外れなんですがハチの巣が出来ているそうなのです。巣の駆除の方をお願いできますでしょうか。」
「わかりました。駆除業者の方に連絡を取りますので今日稼働できるかを確認して折り返し連絡を差し上げます。」
「よろしくお願いします。高齢者の方なので早めの対応ができると助かります。」
すぐに駆除業者に連絡すると
時期的なこともあって
「すぐに対応できます。」
と、返事が来た
業者さんに住所と名前を伝え現地で合流することになった
「○○さん。先程業者の方がすぐに対応できるとのことなので、宜しければ合流して△△さんの家に伺いませんか?」
「勿論問題ありませんのでよろしくお願いします。」
すぐに準備をして市役所の軽自動車に乗り○○さんと合流して現地確認に向かった
向かった先の築60年程の古民家の軒先に
直径30㎝ほどの大きさに成長したスズメバチの巣があった
先に到着していた駆除業者さんと打ち合わせをすると
「季節的にもう活動期は過ぎているはずだけど、暖冬の影響でまだ働き蜂が巣から出入りして活動しているのが確認できるからとってしまうのが安全かな。」
「そうですか。いつも通り活動が鈍る夕方以降に駆除しますか?」
「そうですね。それまで被害が出ないように近隣の住民の方も含めて一緒にあいさつ回りでもしましょうか?」
「そうしましょう。一緒に回った方が住民の方達の受けがいいでしょう。」
近隣のお宅に挨拶回りをしていくと
ピンポーン
「こんにちは。市役所の生活環境課の××と申します。あちらの△△さんのお宅の軒下にあるハチの巣についてご連絡に参りました。」
スズメバチの生態が記されている資料をお渡ししながらお宅を回って説明をしていく
「夕方から巣の駆除を開始しますので、駆除後はハチが怒って攻撃的になりますので、外出されているご家族の方がいる場合は、帰宅の際は注意していただくようにご連絡をお願い致します。」
挨拶回りを終えて少し時間があったので小休憩を挟んでいるときに
「○○さん宜しければ後は私達だけでも大丈夫なのでお宅までお送りしますか?」
「分かりました。後の事はお願いします。」
民生委員の○○さんを送って現場に帰ってきた私は
業者の人たちと一緒に防護服に身を包んで準備をはじめた・・・
初めまして。
一期と申します。
作者の職業の関係上
更新頻度及び間隔は褒められたものになりません。
超が付くほどの長い目で見ていただければ幸いです。
これからよろしくお願い致します。