6.Encountering the Outer God
永くんはかなりブラコンです。
兄さんと姉さんを殺された瞬間にあらゆるリミッターがぶっちぎられたぐらいには。
不気味に笑う旧灰という人を見つめる。
なんの理由もなく確信を抱くのは愚行に分類されるのだろうが、今この時だけはきっと誰も責められぬ思考だろう。だってそれはあまりにも異常なのだから。今この時の俺は、理由を持って確信を得るのではなく、確信を得たから理由を得るのだ。
「さて、1つ目を答えた訳だが、、、、、君は次は何を聞くのかな?」
この人が全て知っているのだとして、質問したい事はいくつもあった。
『罪』や『パレット』という組織についてだとか、
『コマンド』や、『機構』、そして『SI』とは何なのかだとか。
ただ、彼の言った事が真実であるならば、慎重に挑まねばならない。
きっと、こんな機会は二度と訪れないだろうから。
そして、乾ききった喉を潤すために、先刻届けられたコーヒーを一口飲み、
一度心の中で確認をして、決める。
「私の力の正体はなんですか?」
これだ。少し自己中心的かもしれないが、さっき例に挙げた2つと違い、きっとこれは誰も知らないから。
ともすれば目の前にいる人も。そうすれば、底が見えて恐怖が薄れるかもしれないし、答えられるのならばそれはそれでこの先知りようがない事実を知れるので良いのだし、どちらに転んでも益がある質問は、きっとこれなのではないだろうか。
と、そう必死に思考する僕を横目に、その人は『なんだそんな事か』と言わんばかりに軽く答えた。
「その力の名は『十二の色彩』。『絆』と『死』に彩られた、『コマンド』や『機構』、『SI』に属さない神の力。君の旅路によってこの力の真価は変わるし、そもそもこの力の本質を推し量れなどしない。」
「だから、今はただ、奇跡を起こし得る力であるとだけ。」
さっきの怪との接触といい今日は情報量が多くて押しつぶされそうだ、、、、
ただ、これで、この人が殆どの事を知っているということは証明されたのだろう。
だって、力の持ち主でさえ知らない事を語ったのだから。
あまりにも抽象的で、嘘とすら思えるが、しかしそうではないのだろう。
この情報は、今はただ受け止めて、後で精査しよう。
だから、今は。
「さあ、2つ目の質問が終わったよ?最後の質問だ。君はどうする?」
そう、最後の質問を考えるべきだろう。
ただ、もう実は最後の質問は決まっているのだ。
きっとそれは衝動。神にすがる信者のような願い。
そんな思いに突き動かされて俺は口を開く。
「姉さんと兄さんの死について、教えてください。」
よく顔が見えないのに、何故か目を見開き、少し笑い、寂しそうな表情を浮かべた後、真摯に答えようと質問への姿勢を正し直したのが分かる。
「そうだね。
まず、直接の死因は君の知る通り『罪』、という組織だ。
こいつらが死因であり、君が復讐を遂げるべきなのはこいつらなのは間違いない。」
と、憎しみと恐悦に満ちた表情で彼は語る。
しかし、その表情は徐々に変わり、
不甲斐なさと、哀しみを纏い始める。
「しかし、それが起こってしまった原因は、僕でもあり、君でもあり、ともすればこの世界全体にある。」
俺は困惑の表情を隠しきれぬまま、話に聞き入る。
「ある意味ではこの世界の全てが原因であり、しかしてそこに責任は発生しない。」
「それでもその死を嘆き、その死に怒るのならば。
その責任は『罪』を率いるものと
『神核』を持つものこそが受け入れるべきなのだろう。」
「そして、それに従い君が復讐を遂げるならば。死体の山を築きそれを墓標とせんとするならば。」
「君はいつしか■■の力を持つものに出会い、剣を突きつけるのだろう。」
なんだ、今の言葉は。聞き取れたのに、脳がそれを記憶することを拒んで、一瞬にして消えていった。
話疲れたと言い、すこし息を吐いて、コーヒーを飲み干したその人は、読み取れぬ表情で僕に告げた。
「これで、3つの質問は終わりだ。」
「君の旅には僕が同伴することは叶わないが、少しでも助けになったならば、幸いだ。」
そう言い、立ち上がって、外へと続く扉へと行く。
しかし、俺の喉はまだ満足できていなかったらしく、震える。
「亜久さん!あなたは、私の兄さんと姉さんの友であるあなたにも復讐の権利はあるはずだ!なぜ、それをしないのですか!?」
その言葉を耳に入れたらしく、こちらへ向き直し、亜久さんは口を開く。
「質問は3つまでと言ったはずだけれど、その『亜久さん』って呼び方を気に入ったからそれに免じて答えてあげよう。」
「僕は、君の物語に強く関わる事ができない。そう頼まれてしまったからね。そして僕は何よりも君のように復讐を遂げる側ではなく、復讐される側だからさ。」
もう一度息を吐き、亜久さんは今度こそ扉へと向き直り、俺に
「じゃあね」
と言い、扉を開き外へと行った。
会話中ずっと震えていた足を動かし、その扉を開くと、そこには既に影も形も、まるで夢の中の国のように消え去っていた。
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「いやぁ驚いた。まさかあんな所で会うとは。」
そう独り言のように言うと、どこからか現れた本が現れ、それに返答した。
『しかし小僧、あやつの行きつけの店であったのは知っておったのだろう?』
「まあね。でもまさか今日の同じ時間に、隣りに座ってくるとは思わないだろ?」
『お前ならばその時計で未来ごとき見通しておるだろうに』
「基本的に見ないようにしてるのさ。ずっと見えていても楽しくないだけだろ?」
『酔狂じゃの。だから儂のようなSIを生み出せたのじゃろうが。」
「ま、そうだね。」
それは軽く背伸びして、
「じゃ、溜まった仕事があるから、片付けよっか。」
「どうせ君が出てきてくれたなら、君で転移しようか。」
『了解』
「SI起動。 万能の知を以て呪え、『■■■■■■■』」
瞬きの後、それは先程いたカフェから程遠いつい数秒前まであった敵対組織があった異国の地からも消え、後には壊滅したあとの灰すら残さず消えた殺風景な広場のみが残った。
〜〜その後の旧灰〜〜
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「宜しいのですか?会いに行きたいのでしょう?」
「ああ、今下手に会ってしまったら彼らに申し訳が立たないし、、、
魔王が最序盤に軽々しく出ていいものでもないだろ?」
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「これを言ったのは誰でしょう?」
「It's me!」
「そうですねあなたの発言は薄っぺらいですね」
「This is 偶然!」
「やめたほうが良いと思ったらいくらでもあなたなら戻れたでしょう。」
「。。。。。。。」
「仕事3倍」
「Nooooooooooooooooooooooooooo!!!」
「化身、分身、SI、コマンド、機構の一切の使用を禁じます。」
「Oh my God,,,,」
『お前がそれを使うのは流石に駄目なのでは?』
「あっそうか。なら『Oh my gosh,,,,』だね。」
「まぁ、言い方を変えたとてあなたに降りかかる仕事の量は変わりませんが。」
「止まるんじゃねえぞ、、、」
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