5.determination/insanity
あらすじ
助けた青年が重要情報撒き散らしながら火の車輪を取り出した。
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嫌な予感はしていたが、、、、、まさか姉と兄が俺に秘密で秘密組織を創立していたとは、、、、こんなアホみたいな体験をしたのはきっと世界で俺だけだろう。
「弟であるあなたが知らないとは思っていませんでしたが。」
「知らないから焦ってたんだけどね。」
いやあ、、よく隠せたな、、俺があまりにも鈍感だったのか兄達が隠すのがうますぎたのか。
そんなふうに考えていると怪が火の車輪を、、彼が言うには『輪入道』だったか?を消し、
「しかし、それをあの人達が隠し続けたのは、ある意味当然だったのでしょう。だって、この力は、人殺しさえ簡単にできてしまう。あの人達は、あまりにも優しく、強かった。そして、この霊子の世界はあの人達の力で秩序を守っていたのですから。」
「秩序?」
「えぇ、そうです。彼らが率いていたパレット、、、霊子管理・研究機構パレットはこの世界で彼らが霊子の存在を知った事に呼応するように霊子を知った、人を、組織を、時に保護し、時に吸収し、時に壊滅させ、時に監視する、そんな組織だったのです。」
「ある意味ラスボス的な?」
「ラスボス、、、、、えぇ、組織的な意味でも、個人としても、あの二人はラスボスに近いのでしょう。最も、あの二人に限れば、どちらかというと最強の前作主人公、といった風情でしたが。」
思わず頭を抱える。何やってんだ姉さん、、、
「あの二人があんなクズどもにやられたとは全くもって思いませんし、多人数に袋叩きにされたとて全員ボコボコにしてボロ雑巾にするのがあの二人なので、たぶんヤツらは実行犯ではなく共犯でしょう。」
そして彼が兄たちの死に言及する。急速に思考が氷点下まで冷え切り、心臓が熱を帯びて拍動を重ねる。なんでだ?ああ、わかってる。だって俺はあんなもので満足できてなどいないのだから。
「そして、私は奴らが属する組織を知っています。」
「その名は『罪』。罪悪の化身が率いているその組織は、パレットが彼らが亡くなっていなければ壊滅させる予定だった組織であり、霊子を使い犯罪をする犯罪組織です。」
思考が巡る。なんのため?
「そこであなたの力を見込んでお願いがあります。」
「私とともに、この『罪』という組織を壊滅させませんか?」
犯罪組織だ。なんなら超能力、、『コマンド』なんてものなんてものまで使ってくる。勝ち目なんてものはありはしない。特につい先日までただの学生だった存在なんかには。だが、それでも、この脳に駆け巡る衝動のままに。あぁ、迷いなく。 応えようか。
「任せてくれ」
一切の逡巡もなく答えた俺に驚いたような顔をする怪。
当然だろう。姉さんたちを殺した奴らを殺すのに、一切の迷いも、躊躇いも抱く必要性などないのだから。
「わかり、、ました。招いた私が言うのもなんですが、きっと人殺しさえ厭わない血濡れた道行きとなります。それでもよいのですか?」
「あぁ。構わない。」
それを実行するためなら、この力、、、姉さんと兄さんから受け継いだ力だって、使ってやろう。
例えそれが、姉さんと兄さんの願いではなかったとしても。
何にだって、人殺しにだって、復讐者にだってなってやる。
「ならば、一週間後にまたこの家に。協力者と接触します。」
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あれから少し情報共有をして(情報共有といっても、連絡先交換だとかそれ位だけれど。)
怪と別れた。
(情報量が多かった、、、、、、)
そう思い、一度ため息をつく。
(どうせだから良く行くカフェにでも行くかな。)
そう思い、帰路を少し捻じ曲げ、親しんだ、、そう。姉と兄と共に良く行ったカフェへと行く。
慣れた扉を開け、店内を見渡す。少し寂れていて、常連客がそこそこいて、無口な主人がコーヒーを注いでいる。ステレオタイプなカフェだなとは思いつつも、慣れているので
いつも座っていたあのテーブルは一人で座るには広すぎるので、店主に注文を告げてからカウンター席に移動する。
そうすると、隣にいる妙な格好をしているが、馴染んでいる、ひと仕事終えたといった風情の人が目を見開いて俺を見ていた。
「君は、、、、、」
(? 会ったことはないはずだけれど。」
「はい?」
「いや、なんでもない。」
と、明らかになんでもないわけがないといった顔をしているのに、なんでもないと言うその人をよく見つめると、あまりにもおかしな見た目をしている。
まず、目につくのは特異な装飾品だろう。
様々な時代や場所、質の装飾品を身に着けていて、ともすればチグハグな印象を抱くのだが、妙にまとまっていて、違和感を感じさせない。
そして、最もそれを象徴するように目に付く装飾品は首にかけている銀の四本針の時計だ。あまりにも違和を撒き散らしているのに、それを異常であると感じさせない。それが高価なものであると感じるものの、売っているわけがないとも思う。世界に存在するどんなブランドにも属せず、時計なのかすら怪しいとすら思うのに、観察するのに恐怖を感じる。
まるでこの世界の全てが支配されているような、それともそれがなんの変哲もない時計であるのか。
少なくとも分かるのは、俺にはあれを観察する資格がないという事だけだ。
なんだ?俺は今何を考えていた?
そう思い、その奇妙な人の顔を視る。
なんでだ?なんでなにもみえない?
それでもその顔は冒涜的な笑みを浮かべていることがわかって、真意を読み取る事はできず、俺の中の恐怖と狂気が湧き上がる。
「少し、話そうか。」
そう、その奇怪な人は話しかけてきた。
脳が必死に警鐘を鳴らす。断るべきだ。しかし、それを断る勇気なんてものを持ち合わせていなかった。
「君、彼らの弟だろう?」
「知ってるよ。僕は彼らの友人だからね。」
(なんで知っている?少なくとも俺はこんな人なんて知らないのに。
いや知っている?なんだこの感覚は?)
「まだ今はまともに話して良い情報がある段階にないみたいだけれども、、、、、、、」
「気が変わった。この偶然に免じて3つだけ質問に答えてあげよう。」
この人は誰だ?なんなんだ?
俺はまるで上位存在に出会った下位存在のように思考を空回りさせていて、何を言えば良いのかなんてわからず、ただ
「あなたは、、、誰なんですか?」
と、震える声でつぶやいた。
「さっきも言った通り、彼らの友達、、、、」
「という答えを期待していたのではないのだろう?ならば、、ま、自己紹介でいいか。」
「僕の名前は旧灰亜久」
この人は、一体。
「パレットの元幹部にして最大戦力、とでも言っておこうか。」
と、あっけらかんと告げた。あんまりにも自然体で、それが当然でありなんの疑問もないとでも言わんばかりの姿で。
「ま、自分で自分の事を最大戦力というのは気恥ずかしいがね。」
と、コーヒーを飲んだ後続けるその姿に言い表しようもない恐怖を感じながら、それでも俺は確信を得る。
『この人は俺が知りたい情報を全て持っているのだ』
と。