4.nice to meet you!
鳥の鳴き声が聞こえる。
どうやら朝になったらしい。
「あぁ。。」
さっき見たのは何だったのだろう。
夢なのか。夢ならばあんなものを自らに見せようとする自分に吐き気がするが、多分違う。
きっと、あれは、兄姉から送られた、ボイスレターのようなものなのだと思う。
きっと、兄達は俺に何かを託して去っていったのだろう。
昨日伝えられた場所に行くための準備をしている途中、
復讐をした、あのときの感覚を思い出す。
そうすると、黒いインクと白いインクが目の前に現れた。
(きっと、これが、託された力。)
『エレボス』
そう唱えると黒いインクが剣となり、目の前に浮いて待機している。
非現実的で、あり得ないもの。
昨日殺した相手のいかにも超能力といわんばかりの能力や、自らの未来視、黒い剣。
あのとき助けた彼がどこまで知っているのかも知らないが、少なくとも、今の自分よりかは知っているだろう。
というわけで、
「いってきます」
といってみる。まあなにも帰っては、、
『『いってらっしゃい』』
そう聞こえた気がする。思わず振り返ってしまう。
きっと幻聴だろうが、それでも、旅の始まりの一歩を踏み出すには十分な元気付けだった。
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「たぶんここ、、かな?」
家から二駅ほど離れた場所にある、日本の古い屋敷っぽい家が渡された紙に指し示されていた。
インターホンを鳴らしてみる。
「どうも、、、、、あのとき助けた人です。」
インターホンから声が返る。
『こんにちは。先程助けてもらった鶴です』
ドアが勢いよく開けられる。
「って何言わせてるんですか!」
ナイスノリツッコミ。見習いたいね。
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その流れのまま招かれ、家の中へと入る。
「まったく、、、あなたがあなたの兄と同じ血を継いでることに疑う余地が完全になくなったじゃ無いですか、、、」
どうやら彼は自分の兄を知っているらしい。
「あの人のツッコミのさせかたはまさに一流というか、、ちょうど45度で突っ込めるような感じというか、、、」
訂正。どうやらかなり兄は彼に迷惑をかけていたらしい。
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そのまま客間らしき場所へと行き、話し始める。
「まずは、自己紹介を。」
「名前が紫想怪と言いまして、あなたの兄と姉の組織ではあなたの兄姉と先輩と後輩のような関係を築かせてもらっていました。」
「あなたのお話は兄と姉から同年代ということで多く伺っていました、、、、すごく自慢されました。正直ダル絡みレベルですよあれ。」
oh,,,兄が自分の知らないところで迷惑をかけていた。しかも自分の自慢で。とても恥ずかしい、、、、、、、、、、
じゃない!聞かなければならないことがある!!あぶない!懇談会がはじまるところだった!
「ありがとう、、、多分知っていると思うけど、俺の名前は夢創永で、あなたにさんざん迷惑をかけたらしいヒトの弟です、、、お願いします」
「はい。お願いします」
出鼻が挫かれてしまったし怪の出鼻もくじいてしまった気もする、、、まあだが、自己紹介は済ませたし、組織ってなんだ?という疑問も生まれたが、まず聞かなければならない質問をしようと思う。
顔を引き締め、自らに淀む疑問をぶつける。
「あの非現実的な力について教えてください、怪さん」
そう、核心に迫る質問を投げかける。
その質問を受けると怪は、顔を引き締め、口を開く。
「ええ、それは私とあなたが出会った以上は、話さなければならないことなのでしょう。」
少し思い出すような顔をして、声を彼は出す。
「あなたは、幽霊を、、、魂を信じますか?」
今でなければ笑い飛ばすような質問を彼は投げかけた。
思わず、「は?」と言ってしまったのを許してほしい。
いくら超能力然とした力だろうとも、突然オカルトから始まるなんて思わなかった。
「信じては、、、いないけれども、、、」
そう言って、思い出す。
あの電車の中にいた姉と兄の姿を。
あれは、、夢でないとしたら、、俺の姉と兄の魂なのか?
そういえば、あそこは俺の魂の中であるみたいな話も、、、、こんがらがってきたな、、、
いや、まだわからないが、、、しかし、ああ、腑に落ちてしまう。
「あのー! まだ説明の途中です!」
「あ!すまん、、」
急に考え込んでしまい、随分困らせてしまったらしい。
「まあ、話の続きをします。
まず、この世界には魂があります。
ちなみに、第一発見者は少なくともこの時代でこの惑星で人類という枠組みではあなたの兄と姉です。
幽霊研究部に所属していたから、、とかぬかしてやがりましたけどね。
そして、この魂は研究していくうちに霊子というもので構成されていることがわかりました。
さらに、霊子には大きく分けて2つの使い方があることが明かされ、そのうちの一つがあなたが見た、超能力の正体です。これをコマンドと彼らが名付けていました。あとコマンドは超能力というよりゲームなんかのスキルと同じと考えるのが楽だと思いますね。
・・・ほえー
情報量多くね?
やっぱ入っちゃいけない領域に入った予感がする。
まぁ、姉と兄の復讐という大義名分を得て復讐者になった時点で普通に戻るのには無理があったけれども。
と、そう考えているうちに、俺があまり理解していない事に気づいたらしく、
「まあ、わかりやすくまとめるなら、
・あなたの兄と姉が魂を見つけた。
・それが霊子というもので構成されている事がわかった。
・霊子を使えば超能力を使うことができる。それをコマンドと彼らは名付けた。
といったところです。」
おっとまだ理解できる程度に知能レベルが下がった。だけれども、、、
「あの俺が殺した奴らは『コマンド』じゃなくて『SI』だとか『機構』っていってたぜ?」
そう言うと、怪は頭をひねり、
「ふーむ。
『機構』はさっき言い損ねたもう1つの使い道ですが、専門じゃ無いので語る口を持ちませんし、
『SI』というのは、、少なくとも私は知りませんね。奴らが持ってたものは「コマンド」でしょうし。」
なら仕方ないか。
じゃあ、次に聞きたいことを。
そう思い、
「これの正体について、怪は知っているか?」
と云い。
『エレボス』
と唱え。
黒い剣が出で。
自らの手に収まる。
そして彼が目を一瞬見開き、その後口を開く。
「いいえ。知りません。しかし、類似するものなら。」
類似するもの?
「あなたの兄のコマンドですよ。あなたの兄は、
エレボスという名前の剣を持って戦っていた。」
「黒い剣ではないですし、使い方も貴方とは違う。
だけれど、あなたのエレボスも『感情に比例して霊子を増幅させる』能力をもっているのでしょう?」
兄の力、か。
「じゃあやっぱりあの夢は、、、」
(本物の、、)
自らの中であの風景が想い起こされる。
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『『これから君は、永い旅をすることになる』』
『『それに、僕はついていけないから』』
『『せめて、力だけでも』』
『黒の力は剣のちから、想いのちから』
『白の力は眼のちから、意思のちから』
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「黒の力は剣のちから、想いのちから」
兄が言った言葉を反芻する。
「?」
怪が何を言ってんだこいつ・・・みたいな目で見てきている。
「あぁ、悪い。」
また自分の中の世界に入ってしまった。悪い癖だな。
「まぁ、とりあえず、私が知っている情報の大体は話しました。」
そう、、だな。情報量が多くて整理しにくいが。あぁでも。
「一つだけ、、聞きたいんだが。」
「なんですか?」
「お前は何でこんな事を知ってるんだ?」
そう聞くと、彼は目を細め、あのとき俺が殺した奴らが奪おうとしていたものから一枚の紙を取り出し、
『輪入道』
と、唱えると炎の車輪を取り出した。
「私はあなたの兄と姉が作り出した組織であるパレットという組織に保護されたコマンド使いです」
と、言った。