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転生魔王は巡り合う  作者: くま太郎
オーク編
21/99

魔王様はまた巻き込まれる

休みの時間って、なんであんなに早く過ぎるんだろう。スマホのアラームが起床時間を告げる。

 キマイラの事件から一週間が経った。幸いな事に、あれから魔物と会ってない……つでに桜達とも会ってないけど。


「さて、今日も頑張りますか」

 スーツに着替えて、玄関を出る。渋滞もなんのその、一路会社へ……平凡な日常の始まりだ。

 目に映るのは平和な日本の風景。魔物のまの字も感じられない。

(ゴブリンやコボルトを日本に送った目的は何なんだ?)

 漫画やラノベで異世界から魔物が来るって話は昔からあった。その主な目的は侵略。でも、あれって現実味が薄いんだよな。

 まず拠点づくりが難しい。そして食糧の確保も困難。オークなんて、アホみたいに食うんだぞ。オーク部隊のエンゲル係数は魔王の頭を悩ませました。

ゴブリンは雑食だし、コボルトは今回みたいに匿って飼う事が出来る。でも、国の制圧は不可能だ。良いとこ嫌がらせしか出来ない。

 国を制圧するなら軍隊レベルの数と質が必須になる。

(情報が少なすぎるな……今は校外指導員を頑張って信頼を得る。そして情報収集だ)

 駐車場に着いたので、魔王モードからリーマンモードに変更。

今日もお仕事頑張ります。


「毎度お世話になっております。文武事務機です。コピー用紙持ってきました」


前世まおうじだいの部下が見たら、驚くと思う。俺が人間に頭を下げているのだから。

俺が来ているのは、大手養豚場の事務所。昔からのお得意様なのです。例のブリーダーは、ここの紹介だった。

ちなみに、あのブリーダーは数日後に遺体で発見されたらしい。怖い事に、死亡した日が弄られていたのだ。

改めてお上に逆らってはいけないと思いました。


「ご苦労様。しかし岩倉さんは力があるよね。うちの養豚場で働かないか?今人手不足なんだよ」

 そりゃ、前世は魔王ですから力には自信があります。


「今の会社を首になったら、直ぐにお願いしにいきますよ……それでは失礼いたします」

 誘ってくれるのは、嬉しいけどまた一からのスタートになるんだよね。

 事務所を出ると、スマホが振動し始めた。客先ではきちんとで電源をオフにする魔王様なのです。

.

「はい、岩倉です……なんだ、大村か。どうした?」

 桜とは連絡先を交換したけど、後の二人とも連絡先交換しなきゃいけないんだろうか?ライソグループに入っても空気になる自信しかないんですが。


「仕事、お疲れさん……お前、今度猿森に行くんだろ?客の要望に応えるのも大変だな」

 いや、先生様には負けます。先生って何十人も同時に相手しなきゃいけないんだろ。しかも上司やPTAにも配慮が必要らしい。


「吉田先生覚えているか?あの人今猿森で校長先生しているんだよ。定期メンテナンスを早めてくれって頼まれてんだ。だから週末は、校外指導員は無理だぞ」

 本業があっての、校外指導員だ。


「吉田先生か。懐かしいな。同じ教職として聞いてみたい話が沢山あるよ」

 同業者って、謎の連帯感あるんだよね。ましてや吉田先生は、大村にとっても恩師だ。話したい事は沢山あるだろう。


「仕事に行ったら、お前の事を伝えて、時間をとれるか聞いてみるよ。ところで猿森に何の用があるんだ?」

 いまだに餓鬼扱いされるけど、先生と話していると凄く落ち着く。


「上から指令が来たんだよ……猿森の山に魔物が出たから、退治しに行け”ってさ。お前、自家用車で行くんだろ?俺達も乗せていってくれ」

 えっ……俺前乗りして、ビジホで一人宴会する予定なんですけど。


「随分急な話だな……何かあったのか?」

 俺が猿森に行く事を知っているのは、桜と夏空さんだけ。俺の情報を集めさせているのか?

ユニフォームガーディアンとの会話も気を付けた方が良さそうだ。


「猿森山は、昔猿守もしく大猿山って呼ばれていたんだ。名前の由来は山童やまわろ伝説らしい。山童って知っているか?」

 名前は聞いた事あるけど、見た事はない。日本の魔物の強さ知りたいんだけどな。


「山に棲んでる猿の化け物だろ。ネットの影響で活性化でもしたのか?」

 前に行った時は、そんな気配は感じなかった。ヒサルキとかがネットで騒がれたから、力を取り戻したんだろうか?

 その前にユニフォームガーディアンって、妖怪退治までしなきゃいけないのか?


「原因は確定していないけど、数か月前から山で巨大な猿が目撃される様になったそうだ。地元の猟友会が様子を見に向かったら、全員そいつに襲われたらしい。次の日木の幹に“供物を捧げろ。さもなくば、村人を襲う”って書いていたそうだ」

 要求してきた供物はハンバーガーとジュース、それにスナック菓子だったらしい。随分と人間臭い妖怪だな。


「他には被害は出ていないのか?」

 食べ物で大人しくなるんなら、供物捧げれば良いじゃん。即退治なんて乱暴過ぎやしないか?


「猿森でホテルが建築中なんだけど、そこの作業員が襲われている。それと村に住んでいる少女を生贄として差し出せって、言ってきたそうだ」

 そいつ山童に化けた不審者じゃないのか?


「それもう警察や自衛隊の出番だろ?なんでユニフォームガーディアンに依頼が来るんだよ」

 どう考えても女子高生を出す案件じゃねえぞ。泥棒に追い銭になりかねない。


「目撃証言から、魔物はホブゴブリンの可能性が高いと判断されたんだ。うちのチームはジェネラルゴブリンを倒した事になっているだろ?それで依頼がきたのさ」

 手柄を譲った弊害が、こんなに早く出るとは。

(ホブゴブリンが日本語を書いたって言うのか?どう考えても人間の仕業だろ)


「それにしても、早過ぎないか?ゴブリンを倒して一ヶ月も経っていないんだぞ。断った方が良いと思うぞ」

 戦うのは桜達だ。指揮官の大村はもっと強気になって良いと思う。


「猿森山にホテルを建ている竜崎開発は、ユニフォームガーディアンのスポンサーでもあるんだ。それに雪守の母親が、猿森の生まれでな。生贄に指名された女の子とも知り合いらしい」

 大村の所に話が来た時には、既に話が決まっていたらしい。

雪守さんの実家も、竜崎開発と同規模の会社だ。その力を使えば、断れると思う。

 でも肝心の雪守さんが“わたくしが守ります”って息巻いているそうだ。


「分かったよ。俺は近くのビジネスホテルに泊まる予定だけど、お前達はどうするんだ?」

 校外指導員って規則厳しいんだよね。引率中は酒飲んじゃいけないとか、公序良俗に反しては駄目とか。


「お前も護衛を兼ねて、女の子の家に泊まるんだぞ」

 生贄を差し出す期限は今週の土曜日との事。正確にはユニフォームガーディアンが土曜日に行くと話したら、山童にその日に差し出すと伝えたそうだ。

 お前等、はめられてないか?


 上級国民って凄いよね。同行を了承したら、即猿森近辺で新規の仕事が入った。しかも俺を名指ししてきたらしい。


「岩倉さん、お隣よろしいでしょうか?」

 何があったんだ?待ち合わせ場所に着くと、雪守さんが助手席に乗って来た。


「ええ、どうぞ」

 これはモテ期到来ってやつだろうか?……流石にそれはないけど、今までの活躍で好感度は上がっている筈。


「……岩倉さん、お願いがあります。なずなちゃんを助ける為に、お力を貸して下さい」

 そのパターンね。うん、予想はしていた。薺さんは雪守さんの幼馴染みで、生贄候補者との事。ただここ数年は事情があって疎遠になっているそうだ。


「私がやれる事はやらせてもらいますよ」

 亜空間に触媒代わりになる物をいくつか仕込んでおいた。敵の正体が確定してから、仕入れに行っても良い。

 安心した雪守さんは後部座席に移動。そして俺の隣は今回も大村先生です。

 そして君達、運転手へのマナーって知っているかい?大村は泊りに行く為に、徹夜で仕事をしたらしく爆睡中。

 後部座席は俺のついていけない流行りの話で大盛り上がり、今日もカーラジオがドライブのお友達です。


「もう少しで猿森山に……この気配は……そう来たか」

 今回は、気配察知の魔法を強めにしている。猿森に近づいた途端、俺のアンテナに妙な気配が引っ掛かった。

 確かに、これは俺の出番だ。


「しげちゃんは、向こうに着いたらどうするの?」

 ようやく話し掛けてきたと思ったら、それですか……安心しろ、若者の間に混じる気はないから。


「とりあえず吉田先生のところに顔を出しに行く。社長からお土産も預かっているしな」

 吉田先生は、地元の歴史にも詳しかった筈。何か手掛かりが掴めると思う。

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